第31話 新領主の決意
国王と私含む数名の護衛は、イズラート国の領主であるアイザス侯爵と面談していた。部屋の空気はとてもじゃないが綺麗とは言えないどんよりとしたものである。
「改めて話し合おうと思ってな。一度足を運んで見たが、どうだ。調子は。まずは近況報告といこうじゃないか。」
バゼル国王は、思いの他友好的な対応をする。対するアイザス侯爵は、暗殺に失敗した事を焦ってるのか汗をかいている。
「あ、あぁ。悪くない。新しい収入源を探しているとこだ。」
王都を嫌っているということは、国王を嫌っている可能性が高いと思うが、思ったよりも攻撃的ではないようだ。まだ相手の出方を伺っているかもしれないが。
「ところで、アイザスよ。単刀直入に話をしようじゃないか。」
「あぁ。そうしてくれ。助かる。」
国王の眼差しが一変したのがハッキリと分かった。アイザス侯爵は勿論、護衛までもが息をゴクリと飲んだ。
「では、少々失礼して。。。ん"ん"。中心都市国家国王・王都シャラベル領主、バゼル・シャラベルより命ずる。王都直属第七都市・イズラート国領主、アイザス侯爵を今、この時を持って爵位を剥奪し、反逆の罪により捕縛する。」
流石は国だ。立派な令文があるみたいだ。正真正銘の罪状のようなものだ。しっかりと書面に残すのは日本と同じだと感じる。
「あぁ。分かっている。なにか仕掛ける気などあるまい。魔獣と盗賊で殺れなかったんだ。もう大人しくするさ。」
こういうものは激情して暴れるものでは無いのだろうか?こんなにもあっさりと罪を認めるとは、なんだか呆気ない気がする。
「では、続きを失礼する。ん"ん"。。。又、今この時を持ってソータ殿に対し"侯爵"の爵位を付与する。並びに現時点を持って、ソータ侯爵を、王都直属第七都市・イズラート国領主に任命する。以上。」
なんだか小っ恥ずかしい文章である。特になにかの式典ていう訳でもないのだが、何故こんなにも大々的に行うのだろうか。それ相応に大事なことであることは確かだが、当の本人は恥ずかしい限りだ。
「なにか言うことはあるか?ソータ侯爵。」
「無茶振りはよしてください。」
こんな大事な時に至っても、国王は相変わらず私をからかってくる。能天気でお気楽な国王なのは良いが、本当に国王なのか心配になる時があるほどだ。
「では、アイザス。お前と話すことは無い。おい!捕縛して牢獄に入れておけ!」
アイザスは悔しむこともなければ、悪びれる様子もない。全くの無感情なのか、表情のない状態であった。
国王の捕縛命令に異彩のいい声で返事をした護衛達は、私の隣から足早に去っていく。
「今日から忙しくなるんだろうなぁ。。。」
私は切なく呟いた。異世界転生の定番と言えば、とにかく強くて、普通じゃできないことを沢山やってのけ、驚かれることで優越感を得るものではないのだろうか。
「国王。この国の領主になったからには、今の現状をもっと詳しく知りたい。時間を貰えないだろうか。」
私は私の悪い性格がまた出てしまった。頼られると断れない性格だけならまだしも、1度引き受けた仕事はとことん完璧にしたいと思ってしまう。そして、その一環でこの国の現状を知りたくなってしまった。
「確かにそうだな。イズラート国に来た理由の大半は今日で事は済んだ。今日一日で街を見てみるといい。」
「ありがとうございます。では早速行ってまいります。」
私は国王から貰ったこの一日を大切にしようと、この街全体をくまなく探ろうと思った。私の一番信頼を置いているメイドさんと共に色々教えて貰いながら見ていこうと思う。
「メイドさん、イズラートが栄えていた時の主要産業ってなんだったんですか?」
「イズラート国は、機械的な部門でとても高度な技術を持っていました。その為、武器の性能は他国に比べてとても優秀な物ばかりです。」
なるほど、つまり工業が盛んな街であったのだろう。確かにこの街の建物には工場のような建物が多いと感じる。王都との戦争も長い期間に及ぶ理由の一つに、イズラート国の技術力も考えられるであろう。
「そうなんですか、では今その技術者達はどちらに?」
「戦争に派遣され大半は戦死したと聞いております。ですが、数人は現在もこのイズラートに残っております。食糧時給のために田畑を耕しているかと。」
なんとも勿体ない事を。これは国王に頼んで金銭的な支援と食糧の支援、それから工業復旧を足早に進める必要があるみたいだ。いつまでも支援金では賄えない。自給自足できるように資金源を作らなければならない。
「そうですか、それは最重要事項ですね。」
この国は技術力がある。その技術力を、つまり技術者を本来の職に戻さなければこの国は一向に復旧しないだろう。魔力測定器も同様だ。王都よりも技術力があったからこそ、強魔力測定器を作成することが出来ている。
この技術力を使って、イズラート国を再建に留まらず、昔よりも栄えた街にしようではないか。私はそう心に強く決意し、一歩一歩街の土を踏み締めた。




