第29話 暴君の暴挙
大粒の涙を牢獄らしい石造りの冷たい床に染み込ませていた体格のいい剣士は、全てを吐ききったことで傷心しきっていた心をどうやら取り戻したようであった。
「じゃぁ次に、そこの魔法使いさん。お話聞かせて下さい。」
メイドさんは"魔導師"であると話していた人だ。それに回復魔法をかける時に詠唱をしていなかったという。なんとも気になる人物だ。
「私も同様に雇われの身です。私はイズラート国国防を担う3つの兵力の内、魔法戦闘を専門としている機関に属しています。その機関の中でも腕の良い部類に入っていました。申し遅れましたが、第三魔導師団・団体長のカイズと申します。」
団体長だと?腕の良い部類だなんて言っているが、相当な腕の持ち主だな。敵に回したら面倒なことになりそうだ。
「国王を襲った経緯については、私は話したくありません。」
「そうか。ではカイズ。一つ聞きたいことがあるんだが、聴いてもいいか?嫌なら別に答える必要はない。」
私はメイドさんが言っていたあのことを確認したくてたまらなかったのだ。やっと聞けるタイミングを見つけたのだ、聞かずには居られない。
「お前、適性者だろう?」
魔導師は顔を下に向けていたが、何故それをと言わんばかりに顔を上げた。
「は、はい。その通りです。」
「ありがとう。悪かった。」
この後も少々この2人とは会話をした。イズラート国の栄えていた時の事や、何故王都を嫌うようになったのかなど。そして、王都からイズラート国までの道中に現れた上級魔獣も、魔導師カイズが根回ししていた事まで。
会話を終えた私は、預かっている牢獄の鍵をかけ地下の牢獄を後にした。
「随分と長くお話して居られましたね。夕飯の支度が済んでおります。どうぞこちらへ。」
地下に続く扉を閉めて前に向き直ったその先には、メイドさんが綺麗な背筋をして待っていた。危うく驚きかけた。
「バレてましたか、いつから居たんですか?ずっと立っていたのならば脚もお疲れでしょう。」
「私はメイドです故、いついかなる時もご要望にお答えできる様、万全の体制を尽くしております。」
本当に相変わらずだ。だが、例えメイドだからといってここまで忠誠心のしっかりした者はいないのでは無いだろうか。上手くだらけて上手くサボる。それが人間というものであり、仕事とはそういう小さなことで成り立ってたりするものではないのだろうか。
「そう言えば、この国には魔力測定器があるんですよね?暇な日があったら連れてって貰ってもいいですか?」
私はふと魔力測定器のことを思い出した。まだイズラート国に到着したばかりだが、一度思い出してしまうとその事で頭がいっぱいになってしまう。
「かしこまりました。時間に余裕ができましたら、お連れ致します。ですが、測定器を使用させてくれない可能性もございますので、その場合はご了承下さい。」
測定器を使わせてくれない?何故だろうか。何か理由があるのだろうが、権限とかが必要なのだろうか。
「使わせてくれない場合があるんですか?」
「イズラート国は王都を好んでおりません。測定器も自らの手で作り出したものです。それを安安と王都の人間に貸すかと言われると、少々悩ましいところです。」
王都にある測定器は一般的な魔力測定器。それを自らの手で改造し、強度と測定範囲を格段に広げた強魔力測定器は、どうやらイズラート国の産物らしい。栄えていた時の栄光というものかもしれないが、その技術力にはたまげたものだ。
「そうですか。であれば、仕方ないですね。王都の測定器では、壊れてしまうのですから。」
メイドさんと話を弾ませ、夕飯を食べ、入浴した後に今日私が泊まる部屋で私はベットに横たわりながら天井を見つめていた。
「にしてもメイドさん。ほんと博識で頼りになるんだが、何故あんなにも堅いのだろうか。綺麗な方だとは思うんだがなぁ。。。」
私は天井に向けてそのようなことを一人話している。
年齢はいくつなのだろうか。20代であることは間違いないだろう。日本なら男が喜びそうなメイド服を着ている。典型的な要素だが、それが心を踊らせるのだ。
「失礼するぞ。」
「ちょ!?ノックぐらいしてくださいよ!!」
私が一人ボーッと色々考えていた時に、突如として扉が開き、野太いが威厳のあるバゼル国王がズカズカと部屋に入ってきた。
「なぁに。やましいことなど無いだろう?なんだ、なんか変なこと想像でもしてたんか?」
「してませんよ!!なんですか!何の用ですか!」
私の心臓は随分と焦っているのが地球の反対にいても分かるのでは無いかというぐらい早くなっている。この暴君の事だ、用件だってどうせくだらいことであろう。
「そうだな。単刀直入に言おうか。颯汰。お主、この国の領主にならんか?」
「・・・・・・・・・・・・今なんと・・・・・・?」
「ん?聞こえなかったか?イズラート国の領主になれと言ったんだ。」
「・・・え。。。ぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえ!?!」




