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第28話 盗賊の嘆き

国王一行は魔獣や盗賊に道を阻まれながらも、イズラート国に到着していた。


「そういえば、国王なのに入国審査を受けなければ行けないんですか?」


私はそうメイドさんに聞く。国王ともある人物に審査など必要ないのではないだろうか。審査をすることが逆に失礼に値すると感じるが。


「ここまで厳重なのはイズラート国だけです。国王様に対しては尚更厳重です。」


メイドさんは相変わらず顔色一つ変えない。

イズラート国だけというのはやはり腹いせなのだろうか。 "ここまで厳重なのは" と言っているが、他国もそれなりに審査を行うのだろうか。


「そうですか。私から見てもイズラート国は少々頑固過ぎますね。」


そう話していると、馬車の扉が開き放たれた。どうやらここから先は徒歩での移動らしい。ずっと座っていたからか腰が痛い。


「確かに言われてみれば、街並みの建築物は所々立派なものもありますね。栄えていた時の名残でしょうか。」


「はい。現在では手入れもされず、耐久性に不安は残ります。」


確かに苔が生え、建物の壁にはヒビが入り、窓ガラスに至っては木の板で覆われていた。ゾンビが今にも出てきそうなほど廃れた街並みである。


「なんか、悲しい気持ちになりました。」


そんな街並みを歩くこと体感で15分程した時、目の前には大きくそれまた立派な建造物があった。恐らくイズラート国の領主が住んでいる建物であろう。手入れがしっかりと施されているようで、とても綺麗な建物だ。


「これはとても綺麗ですね。」


「恐らくこの国に残っている者は全て領主のものにしているのでしょう。国民も相当疲弊しておりました。」


なんと卑劣な領主だ。こんな領主が侯爵などと呼ばれているとは驚きでしかない。


「ですが、ここの領主は侯爵ほどの貴族なのだろう?」


「王都直属国になる国の領主は、問答無用で"伯爵"以上の貴族になります。イズラート国は栄えていたことや戦力もありましたので"侯爵"になったと言うわけです。」


メイドさんが言うには、どんな平民でもそこの領主であるだけで貴族になれるというわけだ。貴族の位は国力も意味したりするのだろう。


「色々難しいですが、決まりがあるのですね。」


メイドさんとの会話には私も楽しく思う時がある。博識なメイドさんは無知な私に嫌がる素振りなく丁寧に教えてくれる。とても良い方だが、感情が読めないのは難点である。


「今日はまだ会談はしない。旅の疲れもあるだろう。」


国王はそう私達に声をかけた。どうやらこの立派な建物に来客用の宿泊場所があるらしい。当たり前なのだろうが、嫌っている国王におもてなしなどあるのだろうかと疑問に思う。


「では、私は捉えた盗賊。元はこの国の騎士たちを連れて来ます。」


私はあの者らと話したいと思っていた。会話する機会を狙っていた。いいチャンスである。国王は部屋に籠り、私とは別の国王に付きっきりの護衛が5人もいるのだから、私1人居なくても問題はないだろう。


「それはありがたい。この建物の地下に牢獄がいくつかあるはずだ、それを使うといい。」


流石は国王だ。イズラート国の事もある程度知っているのだろう。私はそれを聞き、地下ならば長く会話しても特に気に止められないだろうと感じた。


「お前ら行くぞーーー。自国に戻ってきたな。」


入国審査場所近くにいる盗賊の元に戻り、第一声にそう盗賊に言った。


「あぁ。いい気分だ。」


盗賊は皮肉を言っているようだが、私は仲良くしたいがために優しく言ったのだが、どうやら相手には私の言葉も皮肉に聞こえたようだ。


「悪い。皮肉を言ったつもりではなかった。ただ仲良くしたいと思ってるだけだ。悪く思わないでくれ。」


そう盗賊達を連れ歩きながら会話をしているうちに、立派な領主宅の地下にある牢獄前に到着していた。


「男と男の団欒といこうじゃないか。」


連れてきた盗賊は約20人。その内意識を保ち、会話ができるのは2人しか居ない。他は意識を失ったままである。

一人は体格の無駄にいい大剣使いの騎士。もう1人は魔導師である。


「真実を聞こうか。全てを。」


私は意識を保ってる盗賊2人にそう聞いた。盗賊は意外にも素直に全貌を話してくれた。


アイザス(あいつ)は突然俺らが日々訓練してる道場にやって来て言ったんだ。 "国王を殺してこい" ってな。耳を疑ったよ。そりゃ俺だって戦争に参加して、王都の騎士達を散々殺してきた。だが、国王は別物だ。そんなことしたら自分の命は愚か、国ごと全てが無くなる恐れがある。だから俺は拒否したんだ。」


この盗賊はとても傷心していた。自分のやった過ち。国王を襲ったことによる国の存亡の危機を自らの手で引き起こしてしまった罪悪感。様々なものに駆られて傷心しきっていた。


「だが、アイザス(あいつ)は国王暗殺を俺に、俺たちに強制した。大金を積まれたよ。俺としたことが何故それに目が眩んだのか。でも仕方なかったんだ。俺にだって妻子がいる。。。戦争で金がなかったんだよ。。。」


大の大人が。筋肉質で無駄に体格のいい剣士ともおろう奴が、ボロボロと大粒の涙を床に染み込ませていた。

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