第27話 到着
「恐らく彼は "無詠唱魔法適正者" の一人であるかと思われます。回復魔法を施す際、詠唱はしておりませんでした。」
こんなにも早く2人目の無詠唱魔法適正者と出会えるとは思わなかった。世界には私含めて15人。その内一人はバゼル国王だ。だが、そんな大物が何故イズラート国に雇われているのだろうか。
「そうでしたか、少し驚きました。幸い今は敵意を感じられませんし、雇われですから。自分の意思とは違いますからね。」
私はその魔導師とやらを処罰する事が少々辛く感じる。上手く収めることができ、優良な関係を築いて行きたいものである。
「恐らく彼よりも颯汰様の方が何倍もお強いですよ。」
またメイドさんは何か私のことを知っているかのように話している。私はイズラート国の領主が国王を襲った理由よりも、メイドさんの不思議すぎる正体が気になっていた。
「ありがとうございます。メイドさんの言う通りに強くなれるように頑張りますね。彼とも友好を結びたいですし。」
そんな他愛もない会話を、相変わらずのメイドさんと話していると馬車がまた止まった。
「今度はなんだよ。」
私は少々苛立ってきているところであったが、その苛立ちはすぐさま晴れた。
「イズラート国に到着致しました。この先入国審査がありますので少々お待ち下さい。」
そう馬引きは答える。やっとイズラート国に到着した。1日もかけずに到着はしているが、ものすごく長旅に感じた。それもそのはずだ。上級魔獣と山賊の2回も道を阻まれてしまったのだ。その対応には一苦労するものである。
「やっと到着だぁ。スキルのせいか疲労感は全くないがな。」
疲労感無効のスキルが大いに働いているようだ。だが恐らく、体自体は疲弊しているであろう。それ相応に戦闘をしたからである。
「そう言えば、イズラート国についてよく知らないし、国王はイズラート国に何しに来たんだ?」
私はメイドさんにそう問いかける。メイドさん程の博識であれば、恐らくなんでも答えてくれるだろう。
「イズラート国は、王都七都の内の1つである王都直属第七都市です。王都を中心として、周囲に合計7つの都市が王都の傘下として属しております。この7つの都市の中で最も遅く王都の傘下入りしたのが、このイズラート国です。」
王都の凄さをあまり認知していなかったが、王都は王都の一国という訳ではないらしい。王都を中心とした周囲に7つの国。王都含めて計8つの国で構成されているらしいが、その頂点に君臨するのがあの暴君。少々侮りすぎていたようだ。
「ですが、イズラート国は王都に属することを反対する者が多い国です。やはり王都の傘下に入ってからまだ日が浅い国であることや、そもそもイズラート国は王都との戦争に敗退したことによって加入しておりますので、毛嫌いされています。」
メイドさんの説明はとても分りやすい。だが、イズラート国は見た目そんなに大きな国には思えない。何故ならば、都市を囲う防御壁と言うべきであろう塀は、恐く木造。都市という言葉のような大きい建物らしきものや施設もなさそうである。
都市とは似ても似つかない、それほど貧困そうな国に見えるのだ。
「そして、今回国王様がイズラート国に足を運んだ理由は、このイズラード国の領主の捕縛及び変更が理由です。つまり、イズラート国を王都に従順な国へ再建する為に来ました。」
納得だ。国王もイズラート国を対処しなければならないとは考えていたのだろう。だが、まさか国の騎士をも賄賂で雇い、国王を暗殺しようなどという行動に出るとは考えていなかったのではないだろうか。
「イズラート国という言葉を聞いた時はそこまで悪い国のようには聞こえませんでしたが、そこまででしたか。」
「元々は栄えておりました。王都との戦争で衰退して今のこの状況です。王都に張り合う程の強さの国でしたから、戦争は約5年続きました。」
中心国である王都と約5年。日本の暦で表すなら、2年と半年といったところか?十分長い戦争だ。そこまでの力を持っていて何故こうなるまで戦争を続けたのだろうか。
「ですが、ここまで衰退する前に普通であれば降伏するものでは無いですか?国民もいるでしょうし。」
「降伏はしました。だが確かに遅かったかも知れません。王都は各加入国へ支援金を配給します。イズラート国に関しては、他加入国よりも3倍近い支援を提案しましたが、イズラート国は1度たりともそれを受け取ったことはありません。」
支援金か。日本にも似たような制度が存在する。地方交付税交付金だ。国が各都道府県及び市町村に対し、金銭を給付する制度だ。財源の偏差を調整する事が目的であるが、正しく王都とイズラート国、その他加入国の関係性である。
「なるほどつまり、戦争に負けて衰退し収入源を失った状態で且つ、支援金すらも受け取らない。お金がなければ復興も出来ないという事か。」
なんとも頑固な国だなと思う。そんな意地を張る必要はどこにもないのだから。
そうこうしていると、どうやら私達一行が入国審査を受ける順番が来たようだ。
「次!!!進め!!!」




