第1話 異世界転生
ある8月の陽が降り注ぐ日常。
俺、高木 颯汰(24)は朝の出勤の電車に揺られていた。
平凡な家庭に生まれ、平凡な生活を送り、平凡な学校を出て、平凡な企業に就職した俺は、この"日本"という世界において面白味も何も無い生き方をしていた。
だが、俺にも趣味はある。ツーリングだ。
最近では、SNS等の素晴らしいツールで、簡単に仲間を作ることが出来る時代だ。なんとも便利で仕方がない。
近々、その仲間たちやらと、山でも走ろうと話している。
とても楽しみだ。そんな、楽しみを頭に浮かべながら、今日も会社へと向かうのだ。
今日は仲間とのツーリング日。どうやら空の顔色は悪い様だ。それもまた一興というものだろう。
自分の相棒も楽しそうな音を響かせている。颯爽と駆け抜ける木々と風がいつまで経っても堪らない。
―――――――ここは・・・?―――――――
そうか。私は死んだのか。ついていないとつくづく思う。
「どうしたい。まだ生きたいか?」
誰の声か分からない。だが、何となく分かるような気もする。生きるも何も、もう死んでいるのだから無理な話であろうに。だが、質問には答えるべきだろうか。
「生きたい。」
自分の発言とともに、私はなにかに包み込まれた。
ふと目が覚めるとそこは見知らぬ世界だった。