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俺と猫のおはなし  作者: インリバー
二章
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5、魔王の章 俺の旅の始まりは腹痛

ちょっと汚いです。ご注意下さい。

目が覚めた時、そこは冬の終わりの、"芝生育成中、入るな" という表示がありそうな草原だった。


そんなまばらな草をウサギが喰んでいてとてものどかだ。

時間は夕方だろうか?ちょっと薄暗くて空気は少し冷たくなってきたってところだろう。



満足したのか巣穴に戻っていくうさぎを見ながら俺は考えた。


あれ?俺なんでこんなとこいるんだっけ?あとなんでチリトリなんて持ってるんだ?



俺の手には自身と同じぐらいのチリトリがしっかりと握られていた。

こんな手でも物を握ることはできることに感動する。


ん…? こんな、手…? 


ラノベ買いに来て、それで…そうだ、


次の瞬間俺は怒りで急激に意識が覚醒した。



あのクソババア!説明不足の中俺を何処かにやりやがったな!


おかげでこちとら物語の情報がないままのスタートだ!どうしてくれる!


本当にクソクソウンチッチである。

前にクソババアなんて思ってすみませんなんて言ったが前言撤回、やっぱりあの魔女はクソババアだったのだ。

か弱い猫に物を当てるなんざ動物虐待で訴えてやる。



そう決意し俺は無理矢理怒りを飲み込んだ。


そう、怒ってる場合じゃない。問題は山積みである。

ここはどこで、俺のカケラとやらは何で、どうやってそれを取り戻せば良いのか…



そもそもここは何のラノベの世界なのか?この場所

だけ見ていてもまばらな芝生と木々があるぐらいでよくわからない。


せめてそれだけでも分かれば、本の内容を知っている俺はまあまあ有利になるはずだがどうだろう?


しょうがない。ともかくまずはそれを知るためにもなんでもいいから情報が必要だろう。


もうすぐ夜になりそうだし、ひとまず俺は人がいそうな方へ歩いてみることにした。ここにいても何も始まらなさそうだからな。


所ジョー◯のダー◯の旅でも僻地だと夜になってくるともう全然人いなくなっちゃっていたんじゃなかったっけ?急がなければ!


しかしこのチリトリ、凄い邪魔だな、ここに捨ててっていいものだろうか?ダメか不法投棄だもんな…


そんなことを考えながら、さぁいざ行かんッと最初の一歩を踏み出した時である。俺に更なる重大な問題が発生した。




冷えてきたせいもあるかもしれないが、なんと俺の腹が痛みだし、便意を訴えてきたのである。




緊急事態である。

これは間違なく下痢であった。


今日ストレスリミッターがブレイクしたせいか?

それとも先程クソクソウンチッチなんて酷い罵り言葉を吐いた代償だろうか?



しかしそこで思い出したのだ。

そういえば俺、朝にめっちゃ期限きれた納豆食べてるぅ…


まったくもって納得がいく痛さである。

でも納豆って体にいいもんじゃ無かったっけ?


激しく寄せては返す腹痛の波に耐える。早くこの毒素を体外へ出すべく俺はチリトリを咥えあてもなくトイレを目指した。


焦る俺とは裏腹にどこまでものんびりとしたまばらな芝生の景色が続く。どこまで行っても人の姿は無い。もちろんトイレも無い。そしてチリトリめっちゃ邪魔。



これはマジでやばい…俺が全てを諦めようとしたその時だ。


素敵な美声が俺の後方から響いた。



"何言ってやがる?その辺の砂地でいいだろう。ナワバリの問題もあるが緊急事態ならみんな目を瞑るだろ"



砂地といわれて、俺はようやく再び自分が人間でないことを思い出したのだった。



そうじゃん俺、猫じゃん!



猫であるならば話は別である。人間の尊厳なんてものは投げ飛ばし、微妙な内股猛ダッシュで砂地へ向かう。

木のそばの丁度良い暗がりにてお花を積み、恥ずかしいので丁寧に砂をかけて証拠を隠滅。こうして俺は無事生還を果たしたのである。



思い出さなければ今頃は…考えるのをやめよう。

俺はひとまずお礼を伝えることにした。



助けていただきありがとうございます!



そこで振り返り俺がお礼を言った相手は、素敵な黒いモフ毛をくねらせながら"いいって事よ"と答えた。俺とお揃いのツヤツヤな黒毛だ。



そう、この世界に来て初めての第一村人(そうぐうしゃ)は俺と同じ黒猫なのであった。



あのままでは本当に危なかった…急死に一生とはまさにこの事。教えてくださり本当にありがとうございます!


"いいって事よ、同じ黒が粗相してるとこっちも間違えられるかもしれないしな。

それにしてもお前、新入りだろ?この辺は危ないぞ。しかもさっきマーキングしたんだったら早く逃げたほうがいい"



なんだ何だ?物騒である。全く状況が読めていないけれど、この辺は何か危ない動物かなんかがいるのだろうか?



"知らないでこの辺ブラブラしてたってのか…早く逃げろ、方角は木が生茂った奥の方だ。決して村には近づくなよ"



村にはなにがいるんです?むしろ猫って可愛がってもらえそうなイメージなんだけれども。


猫まあ嫌いな人もいるかもしれないけど、ネズミを取るから基本は喜ばれないだろうか?


それともあれか?猫にチリトリと本を投げるような危険なクソババアでも住んでいるのだろうか?

一緒に訴えます?



"その婆さんよか悪いわな、…住んでいるのはハンターだ。奴は最近肉が足りないのか、ウサギ、モグラ以外にも猫を付け狙う始末だ"



俺は驚いた。猫を狙う、だと?

キュートの代名詞とも言えるであろうこのモフモフをもしや食う、のか?


それは確かに動物虐待どころの騒ぎでは無い。そういう文化圏なのかもしれないが、そうでなければ結構なサイコなのでは?


そして大変な事に、今の俺の姿はまさしく 猫、である。


大問題だ。嘘だろオイ、異世界転生系はモフモフは大事にされるんじゃ無かったのかよ!

俺が知っているモフモフ系の話はこんなサバイバルじみてはいなかったはずだぞ!


ここは本当にラノベの世界なのか?こんなサバイバルなんて聞いてないぞババア!

今のところラノベ要素はゼロだ!


荒れ狂う心の嵐波を任せ、俺はクソババアに悪態をついた。姿がなければ罵り放題である。



それにしてもそんな危ない場所になんでこの猫はいるんだろうか?一緒に逃げません?旅は道連れって言うしな!



すると猫は覚悟を決めた顔をした。



"俺か?誘ってくれてありがとうな、だが…無理だな。俺は発情相手(カノジョ)をハンターに取られてる。なんとかして取り戻したいんだよ。

…その為にわざわざこんなところまで来たってわけだ。てっきりお前もそうなのかと思ったが、違うようだな"


カノジョは取られてないですね。ないものを取れるわけがないからな。


俺の方は完全なる巻き込まれ事故という他ないが、

ここでトイレを教えてもらったのも何かの縁である。俺もその 発情相手(カノジョ)の救出作戦、手伝うぞ!



"…いいのか?捕まれば食われるかもしれない"



1匹だときついだろうが、2匹であれば陽動なんかもできるだろう。さっき助けてもらった恩もあるがそれよりも、俺は発情相手(カノジョ)を助ける為に体を張っているこの猫が死ぬところは見たく無かったのだ。



"だったら遠慮なくこき使ってやるから死ぬなよ?…ありがとうな"



全く受け答えがいちいちカッコイイねこである。

…これで助けられたら相手絶対惚れるんじゃないの?




こうして物語に入って1日目、俺は第一村人(そうぐうしゃ)と共に、ハンターをハントする計画を練る事となるのだった。

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