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俺と猫のおはなし  作者: インリバー
一章
3/15

3、始まりの章 俺のカケラとお約束な展開

負けた…完全敗北だ…誰に負けたのか?察しろよクソババアだよ。


クソババアに対抗するためにも元の姿に戻りたい。一刻も早くだ…


あの後やっと解放され、「塾魔女は素敵です」と唱えさせられた。まあ口から出たのは「にゃー」

という声のままだったけどな!

しかもそれが100回だ。


「にゃー(塾魔女は素敵です)」×100が終了し、解放してもらった時、もう俺には逃げ回る元気は残っていなかった。朝からアクシデント続きで意外と気力削られていた様である。


つまり、かなり疲れた。


こんな猫状態で会話が通じなかったらもっと疲れていただろう。片や猫なのに会話?が通じるなんてまったく便利である。


普通なら心を読まれて怖くなったりするんだろう

が、心を読まれるのはかなりのプライバシー侵害だと思うぐらいで俺はもうそんなに気になんなくなっていた。


偶然会ったババアが心を読んでくる?あるある。人生生きてりゃ色々あるからな。あるよねそんな事も。


それよりもさっき気になる単語があったのだが?



「…にゃー? 」 …熟…魔女?


「やっとかい。そうさ私は魔女なのさ。はじめてみるかい?」



その言葉で俺は再びアゴのピンチにみまわれた。

顎関節症って猫にも引き継がれるのだろうか?

凄く痛い。




猫でなかったら俺は驚きで叫んでいただろう。

ええええ!まじか!!はじめてです!ってな。


実際は目をかっぴらいて口を開けた黒猫がいるだけだったけれども。


俺が猫になってるぐらいだ。自称魔女、なんて痛いやつじゃない。正真正銘の魔女でまちがいなさそうだ。凄くない?


ハリー◯ッター読破済みの俺が興奮しないわけないかった。エクスペクトパトローナムみたいな奴は出せるんだろうか?パルプンテでも良いけれども!



「パルプンテはドラ◯エだろうが。そういうのは無理だよ。それにさっきの魔法で力をかなり使っちまったからね。」


まじかよ

ショックだ。せっかくだから何か見せてもらいたかった。



「何言ってんだ。見てるだろ?私の魔法を妨害した張本人じゃないか?」


ここにきて話が通じなくなったぞ。

見た?何をだ?

そう思いまわりを見渡す。じぶん手が視界に映り込み、そこでふと理解した。



 …あぁ、…俺か。



妨害、が何のことかはわからないけれども、この猫の姿が魔法ということなのだろう。


でもまあこの魔女に姿を変えられたっていうのであれば話は早いな。早くこの魔法の解除プリーズ!



すると魔女はかなり顰めっ面をしてアホが来ちまったよ、と呟いた。アホとはなんだアホとは!


「だからしばらくは無理だって言ってるだろうが!解除だと10年ぐらいは無理だね」


はぁ? …10年? 確かにさっきそんなこと言っていた様な気はしたけれども、帰る頃には30歳…無理!無理です!そんなの扱いが神隠野郎になっちゃうだろ!どうにかならないもんですか?



そんな焦る俺を見て、魔女はニヤニヤしながらゆっくり首を横に振った。


「ならないねぇ」


オーマイゴット…今日はなんてアンハッピーの詰め合わせデイなんだろうか。ラノベを買いに来ただけなのに。


全く幸せと不幸せのジェットコースターの様な日である。落として、上げて、やっぱり落とす、なんて最高に精神にクる。

最高にどんよりした俺がネガティブに拍車をかけていた時だ。魔女が何かに反応した。



「ん?よく聞いてなかった。あんた今何考えてたかい?」



何って自身の不幸を呪っていましたけど?



「それじゃないよ、さっき考えたこともう一度思い返してみな。」



思い返す?

ジーザス、神は我を見放したり。最後にラノベが読みたかった… そんな所だっただろうか?大した事は考えてなかったと思うけど?



悲しくなって頭に読みたかったラノベを思い浮かべていると魔女はあぁ解った、みたいな顔をした。



「ああ、それだ。"ラノベ"だよ"ラノベ"その単語に反応してる。あんたの体、私の力と一緒に散り散りになってラノベに迷い込んでいるみたいだね。」




そう言いながら魔女の視線の方向を見ると、その先にさっきの厨二心くすぐられる棚があった。


そういえば確かそこには太陽光に当たりきらきらと光るラノベが7つ並んでいたんだっけかしら?


しかし、


まぁ、もうなんとなくわかる。


これはまさしくお約束の展開で間違い無いだろう。だって最高に面倒でいやな予感がビンビンするんだもん。



…迷い込むとはつまり?





「本に入って、とってきな」





……ですよねぇ。



いや、そんな気はしていた。それは俺が行かないとなのだろうか?

そうですね俺が行かないとですよね。


魔女は時間が経てばまた魔法が使える様になるらしいから、別に緊急で本に入る必要はないのだろう。


つまり急いで元に戻りたいなら自分でどうにかしろ、とそういうことだ…本に入るなんてめちゃくちゃなことを言われているのにキャパオーバーすぎて逆に笑えてきた。



半笑いな俺に苦笑しながら、更に魔女は言葉を続ける。



「…まあ早く戻れるなら良かったじゃないか。しかし中々に不便だね。いくら隙間に入れると言ったってたかが猫1匹には酷か。」



たかが猫1匹とは言ってくれる。同情するなら金をくれ、いや助けをくれ…そして本に入るってどういうことなのか、何すればいいのかもっと説明をして欲しい。今日ほど助けを求める日がいまだかつてあっただろうか?



魔女は呆れた顔でこちらを見た後本棚に再び目をやって答えた。



「全く説明なんてする義理あるのかい?と言いたいところだが教えてやろう。」



もったいぶって話しはじめた魔女の言ったことをまとめると、完全にお約束の展開であった。


まず、魔法がどうも俺のせいで失敗?して自分にかけようとしたものが俺にかかったらしい。



結果、元の要素つまり人間の俺の姿と魔法の力ひっついたまま暴発。俺が直前まで考えていたラノベに迷い込んでしまった、のだそうだ。



この部屋には俺は引き落とされたらしく元の場所、すなわち古本屋に戻るにも力が必要。



つまり俺を人間に戻し元の場所に戻るためには

本の中の世界にもぐり散り散りになったカケラ全てを回収しなくてはならない。




俺のカケラとひっついた魔女の力両方を全て回収してくれば、俺は元の姿にもどることができて、魔女は力が戻り俺を元の場所に戻すことが可能になる、と。そういうことであった。




なんで魔法が失敗したのか、とか果たしてそれは無事で済むのか、とか具体的に探してくる俺のカケラ?はどんな形なのか、などもっと聞きたい事はあったのだが、大分状況がわかりスッキリはしたかな。



まあいいや。解決方法がわかっているだけマシである。とりあえずは俺のカケラとやらをとってくれば良いのだから。




目標が見えたところで再びネガティブの扉を開きそうになり、俺は深く考える事をやめた。

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