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俺と猫のおはなし  作者: インリバー
二章
13/15

13、魔王の章 俺の嫉妬、勇者カイ君の視線

しっかし、カイ君、カイ君ね、カイモスだからか。


1人納得する俺の目の前には、さわやかな1人の青年がハンターとバンパイアについて話し合っていた。


ラノベものによくある、しかし異世界では異質らしい黒目、黒髪短髪、そして主人公らしく、ジャッポーネ感が無いキリッとした整ったお顔立ち。身長は170後半といったところだろうか?


ハンターと同じくコイツも鍛えているのか袖から覗く腕はなかなかガッチリとしていた。これはミケじゃなくても女どもは騒ぎそうである。


流石は主人公、その辺の村や草原に立ってても間違いなく周りは背景になってコイツにスポットライトが当たる感じだ。エフェクトがキラッキラしててカッコいいなオイ!


しかし、自分の目の前に好きな物語の主人公がいるっていうのはかなり感動するね!なんだかいきなり街中で始まったショーを見ているみたいだ。


本来の目的からズレるがこれから彼の物語が動いていくのは、是非生で見てみたいわ。主人公が魔王と戦うところなんか特に見たい。実写なのスゲェし最高に嬉しい。



…だけど不思議だ。俺は朝ドラヒロインの様に美しい心は持ち合わせていないので、カッコいい奴、恵まれてそうな奴を見るとまぁまぁ妬むはずなのである。俺、性格かなり悪いんだよね。


だが、今の俺はこの主人公に対してこんな負の感情は僅かしか沸き上がらなかった。

いつもだったら絶対もっと羨んでいるはずである。


物語相手に羨むというのもおかしな話かもしれないが、俺はラノベの異世界転生系を読んでいるときは楽しんで読みつつ同時にいつも嫉妬していた。



…だってさ、ちょっと考えてみてくれよ?

生まれ変わって凄いチートをもらったところで俺は俺、そいつはそいつである。



中身がガラッと変わるわけでも無いのに、新しい環境に、しかも現代の地球、日本よりも不便な所に投げ込まれてそこで大成功を収める?


普通無理だろ。いくら周りが変わって、使える道具や武器、強みが増えたからといえ、結局のところ自分の中身が変わらなければ、環境に適応しなければ、どんな世界だって篩い落とされる様にできている。


まぁ無理を可能にするからこそ物語として面白い

のであって普通無理だろ、なんてツッコミ、本当はいれちゃいけないんだろうけどな。


現代社会で、既に1度篩にかけられているのに、もう1度、異世界で新しい、しかも自分に有利な篩にかけてもらえる。


豪運にも恵まれ、自分に有利にことを進められるて、もう1度、人生をやり直すチャンスを与えてもらえる、なんてご都合主義だ。俺が羨ましがらないわけがない。


ダラダラ長々とやっかみを吐露して恥ずかしいけれども、いつもの俺ならこんな風に嫉妬していたはずなのだ。


それなのに今はちょっと胸がチリチリするぐらいでほぼほぼそんな感情が見当たらない。なんでだろ?


主人公だ!スゲェぜ、本物だよ!の感情が嫉妬を上回っているのだろうか? いや、猫になった弊害か?まさかそれで心まで丸くなったとかか?

それとも単純に主人公の顔面の力に当てられたのだろうか?


美とキャワイイは老若男女、生きとし生けるもの全てを虜にするからな。俺は男だが、先程主人公のイケメン美パワーを浴びたところなので、もしかしたらそのおかげで負の感情が抑えられているのかも知れない。


え?そうすると俺、主人公の顔面で浄化されたことになるの?マジで?


イケメンは全てを浄化すると、仕事先の先輩が言っていたが、まさかコレはそういう事なのか?


しかも、この主人公のカイ君、バンパイアになったときに、もっとイケメン度を上げた様な描写があったはずである。


俺ってばストーリー進んだ後、カイ君にこれ以上浄化されちゃったらどうしよう?


自分で言うのもアレだが、人の不幸は蜜の味を地で行く様な人間、それが俺なので心は薄汚れて真っ黒ドロドロ。もはや何年か使わずほったらかした墨汁並といえる。


更に浄化なんてされたら耐えられず、チリも残らず蒸発するのではないだろうか?


イケメンに浄化されてお陀仏なんざ絶対嫌だ…

俺はどうせ浄化され蒸発すならば、峰不◯子か壇◯か広瀬す◯みたいなJKがいい。




そんな風に自分の感情を見つめ直していた俺だが、今の感情や考えは全て、恥ずかしい事に周囲へダダ漏れなのであった。


それはもちろん勇者カイ君にもである。



後で考えれば、俺の話を聞いていたからこっちをみていたのだろう。此処で俺は初めて主人公な勇者、カイ君と目があう。



おっ目が合うとイケメン度がさらに上がる気がするな!


やはり目と目が合うと始まるストーリーの数々は主人公が煌めいてるからこそなんだろう。そりゃあ俺の上目遣いじゃハンターは篭絡できないわな。



「へぇ、ポールさんを籠絡しようとしたのか。

それは無理だろうな、この人が籠絡されるほど心を割くのはボーリングだけだから。…それで、君は何なんだろう……………魔の気配がするね?それに聞き間違いじゃなければだけど、俺がバンパイアになる、なんて言ってなかったかい?どういう事かな?」



…………………ん? なんでバンパイアになること知って………もしかして、俺の心情整理のせいか?


ここでようやく俺は先程の恥ずかしい嫉妬云々が周りに伝わってしまっていることに気がついたのである。



いやいやいや、さっきから同じミスを何度も何度も俺のバカ!これ無理ゲーだろ、どうやっても頭の中で考えることなんて止められん!心頭滅却ってか?絶対無理だわ!


というか、主人公にバンパイアになります、とか伝えたとして、ストーリーは変わってしまわないのだろうか? それを回避して動く、みたいな変化は起こりそうだけど。



俺は、俺のカケラとやらが回収できれば良いはずなので、ストーリーが変わる分には特に問題ないと思いたいけどどうなんだ?



それに、俺が魔の気配……だと?

なんだその厨二まっしぐらな気配は…いや、まて。俺、魔女に負けて使い魔になってるらしいからそれでだろうか?



「君、魔女の使い魔なのかい?意思疎通ができるって時点でただの猫な訳ないよな。

俺がバンパイアになるだとか、ストーリーが変わるとか、気になる事話しているけど魔のものは他者を翻弄するらしいから気をつけた方がいい。ポールさん、この猫に何かされてないか?」


「そういえば転倒させられたな。フハハ!」


いや、アレは事故だってば!冗談にしてもこのタイミングで言ったら、勇者の俺への心象最悪になるだろうが!



主人公のカイ君は、かなり鋭い視線でおれを観察している。


クソ、自分のカケラとやらを取り戻しに来ただけなのにこんな扱いひどいぜ!


俺は天を仰いだのだった。

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