アンドリュー氏の仕事。
「アンドリュー氏。アンドリュー氏。連絡が届いております」
「おお。どうもありがとう」
細く黄色い腕が伸びてきて、デスクの上に紙が置かれる。
私はそれを持ち上げ、目に通す。
『RA、上昇。RH1、RH2、RH3、動作』
簡潔な指示をもらい受け、私は指示に従い動かしていく。
「アンドリュー氏。アンドリュー氏。連絡が届いております」
「アンドリュー氏。アンドリュー氏。連絡が届いております」
「アンドリュー氏。アンドリュー氏。連絡が届いております」
忙しなく黄色い針金たちが紙を次々と置いていく。
指示通りに動かし、ミスがないよう気を付ける。
これこそ私の仕事だ。
「ア、ア、アンドリュー氏。れれんらら…」
一つの針金が止まってしまった。
これでは私への指示も入ってこないし、何より邪魔である。
その針金に近づき、原因を調べた。
一度止まってしまった針金はほとんど動かない。
ばらばらになって溶けていくだけだ。
ただたまにもう一度正常に動く場合もある。
今回は…そのパターンのようだった。
私は針金を握りしめ、回してやった。
ギュッ、ギュッと音がして締まっていく。
「よし、これで大丈夫だ」
その針金は動き始め、デスクに向かって歩きだした。
「アンドリュー氏。アンドリュー氏。連絡が届いております」
そう言って指示が書かれた紙を置いた。
私は一つ息を吐きだし、指示通り動かすことにした。
今日はとても指示が多い。
やるべきことが多いのか、今までしていなかったのか。
あんまりにも指示が多いもので混乱してしまいそうだ。
針金たちも活発に動いている。
『RH、LR、RL、LL、LH123、N、E……』
……………終わった。
終わったといっても忙しい時間が終わったという意味である。
やることは完全にはなくならない。
随分と疲れた。
臨機応変に対応していくことはやはり大変である。
いっそ全自動で動くアレにしてくれればいいのだが。
まあ、文句を言ったって仕方がない。
指示通りに動かしていく日々がこれからもずっと続いていくのだ。
終わるときまでずっと。
寝ていても、起きていても、最初から最後まで。
アンドリュー氏は休まず、動き続ける。