船酔いの時代
ぼくたちは同じ船に乗りながら
あっちやそっちにばらけていって
船はぐらぐら揺れてしまう
平らな水面は波が立つ
それに煽られ船は回る
船が回れば乗る人もまた
あっちやそっちにぐらぐら揺れる
やがて互いで落とし合う
もっともな理由をつけて
我は残らん、そなたが落ちよ
転がり回って引っかきあって
船は益々ぐらんぐらんと
揺れて波立ち波立ち揺れる
ぼくらはやがて投げ出される
船は歪んで穴が開く
木切れが浮かんでぼくらは掴む
残りしものは僅かな木っ端
跡形なくなり皆黙り込む
後からこみ上げる吐き気
船酔いの余韻
ぼくらの時代は船酔いの時代
だれもかれも大海に漂う
難破船の木切れの如し