(秋)だんだん乗ってきたよ!
フェニクスパート
『⋯⋯⋯んん⋯⋯ん⋯⋯?』
長い眠りから覚めた様な感覚を覚え、辺りを見回す。
『ここは、どこだ?』
目の前には、何も無い、ただの黒の空間が広がっている。
『そうか⋯⋯ここは⋯⋯』
ただの黒、何も無い空間、だがしかし、いや、だからこそ覚えている。
『ここは⋯⋯《我》が生まれた場所⋯⋯でしょう、グレイス様?』
届いているはずもない主の元への言葉を出し、つい苦笑する。
確かに、我には、記憶がある。戦の絶えぬ乱世に生まれ、地獄のような世の中に、生き残る為、敵を屠り続けた記憶、己の生涯全てを、だが、同時にそれが《造られた》物であることも知っている。正確には、その人生で幕を閉じたフェニックスをこのレイラのペルソナ、『フェニックス』として、霊的な魂の英雄として、レイラと共に歩むように造られたのだ。
⋯⋯尤も、まさかこれ程血に塗れ残虐と暴殺に身を置いた我を召喚する程の闇を抱えているとは思わなかったが。
気づけば、辺りに偽りの我とレイラが歩んだ旅が映し出されていた。
『⋯⋯⋯⋯(テーテレテテー⋯ピンピンピンピンピンピンピン。)』
『⋯兄さんの命で魂の橋を掛ける⋯!。』
『⋯何?死にたいの?なら殺すけど、ふあ~ぁ⋯⋯よし、殺そっか。』
『ブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブ(〇ピ⋯ルス⋯?⋯⋯!これも全部、あのニンゲンが悪いんだ!あのニンゲンさえいなければ!)
ブ⋯ブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブ
(ha⋯hahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahahah)⋯⋯面白い。』
⋯⋯何にせよまともでない奴が居たらしい。
すると、突然、旅の記憶は消え去り、空へと落ちる感覚を覚えた。
『くっ⋯⋯っ!?あれは!?』
今まで旅の記憶が阻害して見えなかったが、少し遠くに管に繋がれたレイラがいるのが分かった。
『レイラ!レイラァ!⋯⋯くっ聞こえていないのか!?』
正直、あのレイラの様子を見れば、旅の記憶を直接送り込んでいるのだろう。しかし、あんな方法では、脳に害が及び、最悪の場合死ぬことも有り得る!あのままでは不味い!急いで止めなければ⋯⋯そして、そのまま飛行を始めようとし、止まる。
『今飛行するのは危険⋯⋯か⋯』
正直、どこを起点に重力が発生しているのかも不明なここでの飛行は、非常に危険だ。しかし、我もグレイス様の記憶より携わった言葉があるのだ!
それは⋯⋯
「男のみならず!女にも!やらねばならん!時があるッ!」
レイラが管に繋がれ、激しい苦痛に悶えている。背中の翼をバサッと軽やかに広げ、レイラに向かって全速力で高速飛行をする。まだだ、もっと早く、もっと速く、もっと夙く!
レイラはまだこちらに気づいていない。そして、ついに目を細め、意識も消え掛かりそうになっていた。ダメだ!眠っては!
我は⋯⋯いや、私は叫ぶ、最高の友の為に。
『レイラァァァァァァッ!!!!』
友は⋯⋯目を開け、笑ってくれた。




