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夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
ミヒデ村
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ミヒデ村への救いの手

見張りの男の他にも、数人が立ったままだ。


見張りの男以外の村人は、見張りの男をチラチラ見ている。


「…俺は、認めねぇ」


グッと拳を握りしめて見張りの男は言う。


「ネーナを殺したこいつらを…俺は認めねぇ!」


そう叫んでから、その場から立ち去る。


「…すまないねぇ」


イーナが、顔を上げてから言う。


「あいつは、少し頭を冷やした方がいい」


イーナの言葉に立ったままの村人達は、戸惑っているようだ。


「いいよ、イーナ伯母ちゃん。あのおじちゃんは、昔から俺達嫌っていたみたいだし」


イラガは、少し悲し気に言う。


「…あいつが、ネーナの事を今でも好いてくれているのはありがたいのだけれどね…」


イーナが溜息交じりに言うと


「そうだ」


イラガは、イーナに駆け寄り


「イーナ伯母ちゃん立ってよ。村のみんなも」


そう言いながら、周りを見渡す。


「そうかい?」


そう言いながら、イーナが立ち上がると、他の村人をポツポツと立ち上がった。


イラガは、バッカを真っ直ぐ見て


「兄ちゃん、俺達に魔法制御のやり方を教えて」


と言った。


バッカは、《困ったな》と言いたげな表情を浮かべながら、頭をかく。


やがて、何かを思いついたように


「条件がある」


と言った。


「条件?」


イラガが首を傾げると


「まずは、魔法制御は一晩で、出来るもんじゃない。最低でも2、3日はかかる。その間、滞在を許してほしい」


バッカがそう言うと、村長が


「もちろんだ。歓迎する」


と言った。


バッカは頷いてから


「それに、これからは、この2人の扱いを変えてほしい。石を投げるとか、木の棒で殴るとか、十分な飯を与えないとかは、止めてほしい」


そう言うと、村人達は少し戸惑いを見せていたが


「それは当たり前じゃ。この村をもう一度、豊かな大地に戻してくれる2人に、そのような扱いが出来ようか。約束しよう」


これにも村長が答えた。


「あとは…アオイにデュラン、お前達には、俺がこの2人に魔法制御を教えている間、村に滞在して待っていてほしい」


葵とカイトを見ながら言うバッカに


「バカな!俺達は先に行く」


カイトが、そう答える。


葵やカイトにとって、バッカと離れる千載一遇のチャンスだと思っていた。


直前に、バッカが滞在延長を申し出た時は。


自分達は、先を急ぐからと明朝、旅立てばいいと、思っていた。


だが…


「お前達が、その条件を呑めないのなら、俺はこいつらに魔法制御は教えない。お前達と一緒に明日の朝に旅立つ」


そう言うバッカに、葵達は言葉を詰まらせる。


「何を言っている?俺達は先を急ぐ。お前に付き合う理由はない!」


カイトがそう言うと


「そうかい?俺にはある。アオイと一緒にいるメリットは先日話したばかりだ。そのメリットを捨てるつもりは俺にはない」


そう言い切るバッカに


「バカな!俺達は…」


続きを言おうとしたカイトを


「待て、デュラン」


葵が制する。


葵は、グッと拳を握って


「分かった。その条件呑もう」


そう答えた。


「な!」


驚くカイトに


「この村の状況は、放ってはおけない。この子達は、将来、この国…いや、この世界を担う魔導師になれるかもしれない。その芽を今、潰す訳にはいかない」


葵がそう言うが


「それはそうだが…わ…俺は反対だ。俺達は先を急ぐ。ここで立ち止まっている場合ではない」


あくまで反対をするカイトに


「じゃあ、お前だけ先に行けよ。お前なら一人でも、魔物にヤラレる事はないだろ?」


バッカが言う。


「何を!」


カッとなってバッカに拳を上げそうになったが


「デュラン!」


葵が声を上げた。


「デュラン。この子達はシンフォニアからの慈悲だ。そこに()()()()()()()()()()()があるなら、俺は()()()()()()()()()()()()


そう言ってから、葵はイラガの前に立ち、頭を撫でる。


「お前達2人の力は、シンフォニアからの祝福だ。大事にしろよ」


優しく言うと、イラガは涙を浮かべ


「…分かった」


それを見て満足したように頷き


「バッカ、待つ代わりに俺からも条件だ」


と、バッカを見ながら言う。


「なんだ?」


「2日間なら待つ。3日後には出発する。それまでに、この2人に魔法制御が出来るようにしてくれ」


そう言うと


「無茶な事を言い出すな」


バッカが呆れながら言うと


「これでも譲歩している方だ。俺は先を急いでいる。だから、俺達の出発は3日後だ。それまでに、この2人に完璧に教え込めよ」


そう言ってから、村長に向かって


「村長、剣の練習がしたい。どこか場所はあるか?」


と、問いかける。


村長は、ハッとして


「それなら、集会場の横にある広場を使うといい。案内をさせよう」


そう言うと


「それなら、私がやるよ」


イーナが挙手しながら言う。


「ありがとう」


葵が礼を言うと


「今日は、もう遅いから、とりあえず寝床だけでも案内してくれるか?」


そう続けてから聞くと


「わかったよ。集会所に案内する。今晩のご飯はどうしたらいい?出来るなら、うちで食べていかないかい?」


イーナの言葉に葵は頷き


「それでいい。デュラン、お前はどうする?」


と、葵がカイトの方を向いて聞くと


「…俺もそうさせてもらう」


不機嫌そうに答える。


「そうか…バッカ、悪いがお前は今から、その2人に魔力制御を教えてほしい。出発は3日後と決めているが、早ければ早いほどいい」


葵が、そう言うと、バッカは肩を竦めて


「…分かったよ。お前達、どこでやる?」


と、イラガとネーゼに問いかけた。


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