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夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
一路、北へ…
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葵の焦り、鍛錬のおわり

だが、今は不安を抱いている場合では無い。


葵に対して次の一手を講じる時だ。


木刀を構え、葵の前に立つ。


(隙が無い…)


葵は、カイトの隙の無い身のこなしに若干の焦りを感じてしまう。


自分はまだまだ未熟すぎる。


恐らく、元の世界の実力を持ってしてもカイトの足元には及ばないだろう。


それだけカイトは強い。


常に命のやり取りを繰り返している環境下にある事の違いだろう。


葵の元いた環境は当たり前の事だが、命のやり取りはない。


平和な世界に生きているのだから、それは当たり前の事だ。


緊迫感が足りない。


分かりきっている事だが、そう言う環境下にあったのだから仕方ないのかもしれない。


だが、それを言い訳に出来る程、この状況は甘くない。


ギリギリの綱渡りな状況なのだ。


判断が少しでも遅ければ、追っ手に捕まり、旅は強制的に終わってしまう。


恐らくカイトの命は無い。


シンフォニアの封印は解けないまま、世界はビルガ帝国に蹂躙されてしまうだろう。


【レイラ姫】という存在は、ビルガ帝国が世界に対しての【免罪符】を与えるだけの【理由】となってしまうのだ。


そのような状況をシンフォニアが許すとは思えないが、シンフォニアの考えが分からない今、もしかしたら…が起こる可能性も否定はできない。


それをレイラ姫自身が望んではいないだろうし、元の世界に戻りたい葵自身も望んでいない。


だからこそ、旅は早く進めた方がいいのだが、今の自分の実力では【試練】をクリアする事は出来ないだろう。


この世界について、全く分からない葵でもそれは理解出来ている。


だからこそ、少しでも強くなり、試練に備えなければならない。


だが、ゆっくりしている事も出来ない。


こうしている間にも追っ手の手が自分達に迫っている可能性があるのだ。


規模は分からない。


小規模なのか大規模なのか。


どういう精鋭を揃えているのか。


情報が全くない状況だ。


出来たようなギリギリのタイミングではあるが、ボイテイの街では追っ手からは逃れた。


オリンズでも同じ状況が起こるかもしれない。


何も情報を持ってない葵達は、もう追っ手が迫っていると考えても仕方ないのだ。


だからこそ、余裕が持てない。


そして、その余裕の無さが剣筋にも出ている。


「余裕が無いぞ。焦る気持ちも分からないではないが、もっと周囲を観察するんだ」


カイトからそう言われても、葵にはまだ出来ない。


目の前にいるカイトの事だけで精一杯なのだ。


(それではダメだ…)


分かっているが、上手く出来ない。


ほんの僅かな隙を見つけて切り込みに行くが、それは余裕で躱されてしまう。


だが、カイトが次の動きを見せる前に葵は木刀を動かす。


僅かに掠る。


だが、カイトはまだまだ手加減しているにそれによって隙も出ている。


それが分かっているから、葵はそれでは満足はしない。


また切り込む。


今度は、跳ね返されて木刀を落とされた。


「動きが甘い。さっきも言ったが焦りが動きに出ている。少し余裕を持て」


厳しい口調でカイトが言うと


「でも…」


葵は唇を噛む。


「焦る気持ちは分かるが、それが剣筋を鈍らせている事に気付け」


そう言ってから、木刀を降ろし


「今日はここまでにしよう」


と言う。


葵は首を横に振って


「ダメだ…まだまだやらないと…」


そう言うが


「お前に焦りの気持ちが出ている限り、いくらやっても意味は無い」


カイトはそう言ってから


「まずは、筋力をつけろ。まだ剣に踊らされている感がある。適度の運動と睡眠が大事だ」


と、続ける。


その言葉に葵は、剣を降ろして


「分かりました」


と答える。


カイトは、葵に背を向けて


「外は寒い。軽く汗をかいてしまったから、体が冷える前に中に入ろう」


そう言ってから宿の中へと歩き出す。


それに続いて中に入っていく葵。


ふと、視線を感じて、顔を上げる。


カーテンが揺らめき、人影が窓から消えたように見えた。


(あれは…バッカの部屋?私達を見ていた?)


疑問に感じたが


「アオイ!急ぐぞ」


カイトに呼ばれて


「分かった」


そう答えて宿の中に入っていく。


(バッカ…何故、私達を見ていたのだろう?)


そう思いながら上に上がって自室に入る。


「どうした?」


カイトに声を掛けられる。


葵は少し迷ったが


「いや、気のせいだといいのですが…バッカが私達の事を見ていたような気がして…」


と言う。


カイトは少し考えてから


「気のせいではないか?」


と言うが、葵も返事に困ってしまったが


「私の気のせいだといいのですが、先程、視線を感じて上を見たらバッカらしき人影が窓から消えた感じがして…」


不安げに言う。


カイトは少し考えて


「…奴に怪しい所があるのは否めない。だから、奴に対して油断をしないようにしよう。その警戒は自分がする。アオイは、自分の鍛錬や体作りに専念するんだ」


と、葵に言う。


「でも…」


葵が何か言いかけたが


「優先順位を間違えるな」


カイトに言われ、多少納得出来ない部分もあるが納得するしかない。


「とにかく、よく拭いてから休め。睡眠を取るのもお前の仕事だ」


そう言ってから布を投げる。


それを受け取ってから


「…分かりました」


そう答えてから、布で汗を拭う。


「…明日は早めに出立しよう。バッカに気付かれる前がいい」


カイトの提案に葵は頷き


「そうですね」


そう答えてからベッドに座る。


カイトは汗を拭ってから


「早く休め」


と葵に言う。


「はい」


葵は素直に答えてベッドの中に入る。


「それでは…」


葵が言うと、カイトが蝋燭の火を落とす。


少し寝付けない部分はあったが、疲れていた影響なのかその内に寝息を立てて眠りについた。


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