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夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
一路、北へ…
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迷い…そして、空回りしそうな気合い

グッと拳を握りしめる。


(私がもう少し剣の扱い出来て動きが早ければ、カイトさんは楽になる。ヴィヴィアンが敵に回ってなければ魔法も使える)


そう思いながらも首を横に振る。


(考えたって仕方ない。この体では、まだまだ剣の動きが遅いし、ヴィヴィアンが敵に回った事は事実。考えたってどうしようもないわ。今は少しでも状況を打開出来るように精進するしかない)


そこに


「……イ、アオイ…アオイ」


後ろからカイトの声がする。


「あ!はい!」


慌てて返事をする葵。


「湯浴みが終わった。今から使った湯を回収してもらうようにするから、アオイは部屋で待っていてくれ」


カイトはそう言ってから、部屋の鍵を手にする。


葵は振り向いて


「あ、一緒に…行きます」


そう言うが


「いや、あまり行動を一緒にしていると、周囲に疑われる。お前は部屋にいてくれ」


と言ってカイトは部屋を出る。


【カチリ…】と鍵をかけて。


少し立ち上がりかけていた葵は、ベッドにストンと座り


(自分の身ぐらい、自分で守れないと、カイトさんの手を煩わせてしまう。もっと精進しないと…)


そう思い立ち上がり、小さく収納魔法を展開して、木刀を取り出す。


木刀を両手に持ち、軽く素振りや剣を振るう動きを反復する。


(やっぱり、部屋の中では動きが制限されてしまうわね…髪が乾いたら、カイトさんにお願いして外で訓練しよう)


だが、制限された範囲での剣の振るい方を訓練するには、部屋の中は打って付けだろう。


それも一瞬考えたが、その場面は今のところは無いと思われる。


今は、少しでも剣になれる方が急がれる課題だ。


葵は、収納魔法をもう一度展開して木刀を収納する。


ため息を1回吐いてから


「…まだまだだよね」


そう呟く。


その呟きは、剣の扱いに対するモノ、この旅がまだ序盤でまだ先は長いことに対するモノ、抱えている問題は山積みである事、様々な意味である。


正直、荷が重すぎる感は否めない。


この世界にやってきてまだ数日でしか無い。


元の世界でいきなり死に直面し、この世界にいきなり引き寄せられて、目覚めてみればいきなり重い使命を課せられ、旅を強制的に始める羽目になり、いきなり実戦に自分に不利な状況で放り出された形で送り込まれ、いろいろ制限を付けられ、ギリギリな状態の旅を続けている。


休むいとまもない。


ため息を吐きたくもなる。


だが、そういう間も惜しいくらいに事態は切迫しているだろう。


追っ手がどこまで迫っているか、分からない。


今この瞬間にオリンズに追っ手の手が迫る可能性が高い。


いち早くオリンズを出て、旅を先に進める必要はある。


だが、今の時間に外に出て戦闘になった場合、自分の実力では魔物の餌食になるのは確実だ。


カイトの実力ならば、それを回避出来るが、それはあくまで1人である場合だ。


葵を庇いながら戦闘を行えば、確実にカイトの身も危ない。


魔法を使えば確実に戦闘に勝てる。


レイラ姫の持つ最強魔法は、1つの都市を吹き飛ばす威力があるのだから。


だが、魔法は使えない。


それが現実。


1つ息をついてから


「出来る事から一つ一つやっていくしかないのよね」


そう呟く。


ベッドに倒れていき、天井を見つめる。


(あぁ…元の世界、お父さん…お母さん…雪夫…それに、圭子に北白川…みんな元気にしているかな?私の遺体は…もう荼毘に付されているよね?…当然か…あれから何日経過しているんだろう?)


自分が不慮の事故に遭ってから、どれくらいの日数が経ったのかを考える。


レイラ姫の体に入って眠っていた日数はどれくらいだったのだろうか?


状況を鑑みても、そんなに長くはないと思われる。


恐らくではあるが、ベイト・ディインダの転移魔法で賢者の森を出てから、すぐにヴィヴィアンのいるであろう追っ手が、賢者レスクドールの家までやって来たのは予想が出来る。


ギリギリのタイミングで追っ手を躱せたとも言える。


ボイテイの街でも、自分達が抜けてからすぐ後に騒がしくなっていたようだった。


本当にギリギリのタイミングで躱せたのだろう。


だが、そこでふと考える。


追っ手が迫るタイミングが出来すぎているのではないかと。


本当にギリギリのタイミングで躱せている。


まるで、何者かが糸を引いているかのようにも感じられる。


見えない糸が自分達や追っ手を操っているように思えてしまう。


疑い出したらキリが無い。


自分が事故に遭うタイミング…レイラ姫が矢に撃たれるタイミング…それは出来すぎているように思えてきた。


少し考えてみる。


しかし、すぐに首を横に振って


(考えても仕方ない。分からないのだから。そんな事より、少しでも精進して、せめてカイトさんの足手まといにならないようにしないとならない。少しでもカイトさんが戦闘に集中出来るように…)


起き上がってから、1回息を吐く。


(よし!)


気合いを入れて立ち上がってから


(くよくよ考えても、事態は動かない。行動あるのみ!)


そう思いながら、収納からもう一度木刀を、今度は2本出す。


(カイトさんが戻ってきたら、稽古を付けてもらおう)


空回りしそうな気合いかもしれないが、今はその方がいいと葵は思った。


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