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夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
一路、北へ…
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追っ手達の奔走劇

フィアント公国とツォンズ王国の国境付近でヴィヴィアンは考えていた。


(何か、翻弄されているわね)


それもそうだ。


レイラ姫とカイトらしき人物の目撃情報が、多数の場所で確認されているし、姫の魔法の波動らしきモノを感知する事も出来ている。


だが、場所は複数でバラバラなのだ。


情報が入っては、その確認に移動…兵にかなりの負担を強いている事になる。


その証拠に、兵の中に不満が出て来ているのは事実だ。


誰もリスターが怖くて、言い出せないだけである。


事実、提案という形で意見した兵士の一人は切り捨てられた。


リスターは、今も情報の確認に兵を動かしている。


「東の方での目撃情報の確認はまだか?」


と、念話が出来る魔法兵士に尋ねる。


「はっ!今すぐ確認いたします!」


兵士は、恐怖からか声が裏返っている。


すぐに兵士は確認作業に入る。


リスターは、その様子に苛立ちを隠せない。


複数の目撃情報があるというのに、未だに発見・確保に至っていないのだ。


国境を越えていないのは、国境を守る門番に確認済みだ。


国境を越えている…という可能性は薄いと思っている。


大方、姫の身分証がない為、国境を越えられずに森を彷徨いている所だろうと踏んでいた。


そこに、兵士から報告が入る。


「リスター副官!情報のあった場所で、確認をいたしました。休憩をしたらしき痕跡を見つけたそうですが、発見には至っていません」


その報告に舌打ちを打ちながら、リスターは駆け寄ってくる兵士に気付き、その兵士が前に立つと


「何だ?」


と問う。


「はっ!ここから少し西の方での情報の確認をいたしましたが、痕跡も何もありませんでした。南の方も確認いたしましたが、これも発見には至りません!」


そう報告を受けて苛立ちを隠せなくなり


「ヴィヴィアン!探知魔法を使え!広範囲で構わない。効果は薄れるだろうが、この際構わん」


そうヴィヴィアンに命じる。


「はいはい、分かりましたよ」


ヴィヴィアンは、焦るリスターとは違い冷静に対処していた。


そして、手を挙げて集中をする。


彼女を中心に魔法の波動が広がった。


それは広範囲に及ぶ。


国境を超えてバースの森に入るくらいの広さだった。


ヴィヴィアンの感覚に、複数の反応が感知される。


姫の魔法の波動に似た波動だ。


(これは、隠蔽系か?姫は、隠蔽系は使えたけど得意な方じゃないわ。だから、波動を隠しきれなかった?それとも…別の誰かの工作か?)


ヴィヴィアンは、姫達を支援する者達の存在を確信している。


ボイテイで逃げられたのも、その者達の支援があったからだろう。


そう確信しているからこそ、この目撃情報が偽物である可能性が高いと踏んでいる。


(ん?これは…)


捜索範囲にギリギリ入っている北側にあるツォンズ王国のバースの森の南の方で魔法ではないが、微かに反応を感じた。


(やはり…何かの方法で国境を越している?でも…それをこの人に言っても、通じないでしょうね)


そう思いながらも


「3ヶ所ぐらい反応が出たわ。さっきの東からさら東に1ヶ所。西の方に1ヶ所。南に1ヶ所ね」


と言う。


「それは本当か?」


リスターが疑いの目を向けてくる。


当然の事ながら、完全にヴィヴィアンを信用していないのだから仕方がない。


「本当か嘘か、信じるのはそちら次第よ。それに…」


「それに…?」


「北の国境を越えた先で、魔法ではないけど姫の存在を示す反応が出たわ。国境を何らかの方法で越えたと思うのだけど?」


ヴィヴィアンの言葉に


「それは、ありえない。お前は国境の門番が嘘を吐いているとでも言いたいのか?」


リスターは、怒りの感情をヴィヴィアンに向ける。


「いいえ。門番は嘘を吐いていないでしょう。何らかの方法を使い…変装は確実にしていると思うけど、国境を通過したと思うけど」


ヴィヴィアンの言葉に


「しかし、国境を超えたのは男ばかりだ。中には女もいたが、姫の特徴とは相当離れている。身分証もギルドカードが主だ。ギルドカードの偽造は無理に近い。変装したいたとはいえ、そう簡単に…」


リスターは反論したが、ヴィヴィアンは動じずに


「ギルドカードは無理でも身分証の偽造くらいはいくらでも出来るでしょう?身分証がどんなモノかが分かれば、作る事だって出来るわ。言えるのは、確実に姫達は国境を越している」


そう言い切った。


リスターは、少し考えてから


「もう一度、門番に確認を取る。7分隊と8分隊、9分隊は反応が見られた場所の捜索に急げ!」


そう命じてから


「門番の所に急ぐぞ」


と、ヴィヴィアンを促した。


「はいはい」


ヴィヴィアンは、仕方ないと思いながらそれに従う。


そこに…


「目撃情報出ました!」


と兵士が報告に入った。


「何処だ?」


リスターが問うと


「はっ!ここから西のゲルムの街の方に向かっている2人組が目撃されました。そこから行きますとイーストベレカ王国に向かっている可能性が…」


そこで兵士は言い淀んだ。


リスターの表情が怒りで強張っているからだった。


「イーストベレカ…だと?ヴィヴィアン!どういう事だ?」


話が違う!と言わんばかりにヴィヴィアンを問い詰める。


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