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夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
一路、北へ…
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出立を急ぎましょう…追っ手が来る前に

「さて、宿に急ぎましょう」


と、バスクベの方に歩き出す。


「どうしてだ?」


「出立します」


葵は小さな声で言う。


カイトが目を見開いていると


「ぼやぼやしていたら、追っ手がやってきます。かと言って今出立するのは、私が足手まといでしかなりません。だから一旦休みます。それに…」


「それに…?」


「薬をまた作らないと…材料を買わないといけませんね…その為には、バッカがいるのは都合が悪いで

す。急いで買いに行きましょう」


そう言ってから、商店街に進路を変更する。


急いでいる2人の姿をバッカが見つめていた。


ふと、肩に1羽の鳥が止まる。


足には何かメモのようなモノが巻き付けられていた。


それを外して、メモを広げる。


読んだ後、メモを【ポッ】と燃やしてから


「了解」


小さく呟いた。


そんな事は知らない2人は、アイテム屋に向かい薬草やその他の材料を購入する。


やはり、ボイテイとは品揃えが違うし、価格もまだリーズナブルだ。


値切る必要性もない。


怪しまれないように、だが量は多めに購入して、店を出た。


裏路地に入り、葵の収納魔法で今買った材料を収納する。


表に出てバスクベに向かっていると


「ようお二人さん」


と、声をかけてきた冒険者がいる。


咄嗟に構える。


さっき、大金を手にしたからであろう事は明白だからだ。


「今日は、いい収入があったじゃないか。俺達にも少し分けてくれないもんかね」


と言って、数人で2人を取り囲む。


「断る…と言ったら?」


「とりあえず、体に教えてやろうか」


冒険者は殴りかかろうとした。


サッとカイトは葵を庇ったが、そいつの拳が届く事は無かった。


後ろから手刀を入れられて気絶したからだ。


「おいおい、早速絡まれてんな」


バッカが、呆れながら言う。


「お、お前…」


倒れいている男の仲間らしき男が何か言おうとすると


「そんな事したら、冒険者資格剥奪だって知っているよな?」


バッカが睨みを効かすと、冒険者達は押し黙った。


「さ、そいつ連れて早く行きな」


と、倒れている男を指差す。


「クッッ」


男達は、倒れている男を抱えて逃げていく。


「す、すまない。助かった」


葵が礼を言うと


「いや、別にいいさ。そんな事より、お前ら何でこんなとこいるのさ?」


バッカの問いに少し黙ってから


「今日、回復薬を使ったからな。足そうと思って」


葵が答えると


「あぁ、あの品のいいヤツな。アレは惜しかったが状況的に仕方ないからな。それで買えたのか?」


再びの問いに


「いや、今日は買うのを止めた。宿に帰って早く休みたくてな」


葵は答えた。


背中には、変な汗が流れている。


「…そうだな。湯浴みもしたいしな」


バッカが言うと


「湯浴み…出来るのか?」


葵が聞くと


「バスクベはな。男女分かれているがそれがある。まぁ、集団で入りたくないヤツは、部屋に桶とお湯を持ってきてもらうけどな。価格は少しかかるが、自分の裸に自信の無いヤツには丁度いいらしい」


そう言って、葵の肩を叩き


「一緒に入るか?」」


と言うが、その手を払い


「いや、遠慮しておく」


とけんもほろろに答える。


「寂しいな。自分の体に自信ないのか?俺の素晴らしい筋肉見せてやるよ」


機嫌良く言うが


「俺は遠慮しておくよ」


そう言ってから


(しかし、体の匂いは気になるし、湯浴みくらいはしとかないと。部屋にお湯持ってきてもらうか)


そこで、気付く。


同室にカイトがいることを。


(さすがに湯浴みを見られるのは困るから、その間だけ外に出てもらおう)


ひどい扱いかもしれないが、女子たるもの当然の防衛である。


「なぁなぁ、一緒に入ろうぜ」


しつこく誘ってくるバッカに


「アオイが嫌がっている、やめろ」


カイトが少しの怒りを含めて止めに入る。


知らないとはいえ、葵は女性だ。


男性と湯を共にするなどあり得ない。


それに、一国の姫に対して無礼が過ぎる。


知らないとはいえ…だ。


だから、自分の怒りを最小限に抑えて言った。


だが、それは漏れていた。


「そんなに怒らなくても…」


バッカが言うと


「嫌がっている相手に強要するなんてあり得ないからな」


と、葵がフォローを入れる。


「ひでぇな。嫌がっていたのかよ」


バッカが驚いていると


「見て分からなかったのか?…俺は、部屋に桶と湯を持ってきてもらうよ。そっちが楽だ。今日は少し儲けたし、それくらいいいだろ」


そう言ってからバスクベに向かう道を歩き出す。


「ところで、結果はどうだったんだ?」


と、結果が気になっていたのであろうバッカが聞いてきた。


「…あぁ、ダメだったよ」


と、葵が答える。


「え…でも…」


「【助けが入った】…これが理由さ。バッカとデュランに足止めしてもらっていたのがマズかったんだろうよ。仕方ないさ」


葵はそう言った後に


「俺の実力不足なのは明白だからな」


と言い


「さ、明日からはデュランがEランクだからEランクの依頼も受けられる。早く宿に行こうぜ」


と続けた。


本当は、もうこの街にいるつもりはないが、建前としてそう言っておく。


早く薬も作らないとならないし、早く休んで早く出立しないとならない。


湯浴みもしないとならない。


(…今日は忙しくなりそうだ。早く宿に向かおう…でも、この汚れた装備何とかならないかなぁ。体は湯浴みで何とかなるかもしれないけど、装備は洗えないだろうし。洗浄魔法は、さすがに使うのはマズい。あぁ、マジ汗とか汚れとか酷い。どっかに洗浄魔法の使い手でもいないかしらね)


なんて都合のよい事を葵は考えていた。


そんな都合良く事が運ぶ訳はないだろうが…


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