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夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
一路、北へ…
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ランクアップの試験ーアオイ編本番後

収納魔法は、便利な魔法だが、使う者次第で容量が違うのは前述で述べた通りだが、その収納を出さすに整理を中でやる事も可能だ。


出来た隙間を埋めるように、しかも中のモノが影響されないように中で方向を変えたりして、より多くの隙間を作る。


だが、それには相当な魔法の制御力(コントロール)が必要となってくる。


収納魔法の異空間を頭の中に投影させて、パズルのように一つ一つ整理していく。


パズルが重ならない様にするのは当然の事だが、中のモノが影響を受けないようにするとなると、細かい制御力(コントロール)が必要となってくるのだ。


レイラ姫は、もちろんこの訓練を行っている。


今は簡単に気軽に出来るが、訓練当初は相当苦労したものだ。


それほどに難しい事を、バッカは素早く正確に行っている。


それだけでも、バッカが高い制御力をもっている事は分かる。


それを横目でチラリと見てから、葵は診療に角を傷つけないように外していく。


腕が疲れていたのもあり苦労はしたが、何とか外す。


「…ふぅ」


息をついてから、次の個体の角取りにかかる。


一体一体、丁寧に作業を続けて、やっと完了すると


「お…済んだな。じゃ、これ貰うぜ」


バッカがそう言ってから、フェンダーベアを収納し始めた。


器用に収納しながら


「角は上手に取れたか?」


と葵達に聞いてくる。


「あぁ…とりあえずはな」


葵は、そう答えて、手の中にある1本の角を見つめる。


虹色に輝くそれは、確かに価値がありそうだ。


そういや、レイラ姫が持っていたアクセサリーの中にこれと似たような石があしらったペンダントがあった気がする。


今は、城の自室にあるが…


(あれって、フェンダーベアの角から作られていたのね)


そう思いながら、ふと自分がレイラ姫視点になっている事に気付く。


融合の影響なのだろう。


それに戸惑ってしまう。


(これが融合の影響なの?…自分がまるでレイラ姫であるかのようになってしまう。でも、それは…)


チラリとカイトを見る。


(カイトさんが望んでいる事では無いわ。カイトさんは、姫を取り戻そうとしている。そう、愛する人を取り戻そうと。だから…自分がレイラ姫であるかのようになってはいけない。…でも、この胸の苦しさは何?)


チクリと痛む胸にも戸惑ってしまっている。


そんな葵をカイトは分からない。


(何をしているのだ?)


と、首を傾げながら、手の中の角を見る。


レイラ姫も、この角から作られたペンダントを喜んでいた。


お気に入りで、しばらくの間付けていたくらいだった。


だが、姫は…今はいない。


葵の中に融合して消えてしまった。


最初は怒りで、張り裂けそうだった。


姫を吸収している葵に…何より、姫が瀕死に陥る原因を作った自分自身に。


だが、今は違う。


自分自身に対する怒りは収まってはいないが、葵に対する怒りはない。


むしろ、何も知らない異世界にいきなり放り込まれたと言うのに、懸命に馴染もうとしている姿勢に尊敬の念を感じる程だ。


自分だったら、こう上手く立ち回る事は出来ない。


自分は戦う事しか出来ない。


剣でしか役に立つ事は出来ない。


小手先の交渉やギリギリの交渉も、すべて葵がしている気がする。


自分は黙っているだけだ。


話し方で身分がバレるのを回避するには、自分が無言のキャラを演じないとならないのは理解出来ているが、葵に任せてばかりの自分は不甲斐ないと感じてしまう。


と、同時に何も知らない世界で上手く立ち回っている葵の胆力に尊敬の念を感じる。


(私は…何も出来ないな)


そう自虐的に考えてしまう。


そんな事を考えている2人をよそに、バッカは収納魔法を展開させて中身を確認しつつ整理をしている。


鼻歌交じりなので機嫌がいいのだろう。


これまでの収穫を考えたら、機嫌もよくなるだろう。


懐も潤うものだ。


「さて、行こうか」


バッカが言うが


「アオイ、お前大丈夫か?」


と、葵を気遣う。


「え?」


葵が驚いていると


「お前、相当摩耗しているみたいだからさ。帰りも、行きと同じ感じで魔物に襲われるだろうし」


そう言ってから、続けて


「道は長いんだぜ」


と言った。


その言葉は別の意味で2人にのしかかる。


そう…道のりはまだ遙か遠い。


まだ、北の解印石にすら辿り着いていないのだ。


だから、ここで弱気でいる訳にはいかない。


「大丈夫だ。フェンダーベアに比べたら雑魚ばかりだろ?」


と、葵が言うと


「いや、上にはシャウトベアがいるからな。フェンダーベアの群れの近くには生息はしていないと言われているが、それは分からない」


そう言うと


「その時は、俺が何とかしよう。アオイは無理はするな」


とカイトが言う。


「あぁ…でも…」


葵が何か言おうとすると


「それが、俺の役目だ」


とカイトが言った。


その気迫に押されたが


「…分かった」


と、葵は答えた。


「ま、そういう事でいいかな」


バッカは、そう言ってから


「ま、真っ直ぐ素早く移動すりゃ、遭遇率も下がるかもしれないな」


バッカは、双剣を構える。


「さて…早速おでましだ」


バッカの言葉に葵もカイトも剣を抜く。


ベレットが5匹こちらに向かってやってきていた。


「5匹か…まぁ、頭の石が金になるが、数が少ないな。ま、今の俺達にちょうどいいか」


そう言ってから、向かってくる魔物を切り捨てた。


葵達もそれぞれ構えた。


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