ランクアップの試験ーアオイ編本番
群れに近付く。
それぞれ獲物を手に取る。
張り詰めている緊張。
群れの方は、まだ葵達に気付いていないが、時間の問題だろう。
ゆっくりと、近付く。
群れの一匹が気付いた。
すぐに群れに伝達されたようで、臨戦態勢に入る。
群れは10匹…子供らしき小さめな身体をしている個体が2匹いる。
大人の個体は8匹。
内、5匹は葵が仕留めないとならない。
3匹は、こちらに向かって吠えながら突進してくる。
両脇をカイトとバッカに固められた状態で、一歩前に出る葵。
剣を構える。
フェンダーベアの鋭い爪の切り込み。
それをギリギリのタイミングで避けて、先ずは切り込みを入れる。
(浅い!!)
切り込みの浅さに舌打ちをしながら、次の攻撃に移る。
フェンダーベアもやられてばかりではない。
攻撃を仕掛けてくる。
鋭い爪の攻撃を躱しながら、首筋を剣で切り込む。
重い手応え。
【ドゥーン…】
音を立てて倒れるフェンダーベア。
だが、それに構っている暇は無い。
「次!」
葵は、そう言いながら、近い方にいたフェンダーベアを目指す。
バッカが相手にしているようだ。
葵がやってきたのを確認すると、交代するかのように後ろに下がる。
そして、前に出た葵はすぐに攻撃に出た。
「俺は、残りの群れの足止めをする。焦るな。1匹ずつ確実に仕留めろよ」
そう言ってバッカは、残りの群れの方に駆け出す。
鋭い爪の連続攻撃。
さっきの個体とは違う攻撃。
それを躱してはいるが、掠るくらいの攻撃は受けている。
タイミングを計り、後ろに回り込もうとする。
フェンダーベアが身体を捩る、その瞬間に脇に一撃を入れる。
吠えるフェンダーベアが血を流しながらも攻撃を仕掛けてくるが、先程より若干遅い。
躱しながらも、攻撃に仕掛けられた瞬間…屈むフェンダーベアの首に一筋入れる。
2匹目を倒した。
カイトは、それを確認すると、すぐに行動に出る。
葵が攻撃しやすい位置に、フェンダーベアを誘導した。
今度の個体は、先程のより動きは遅いがパワーがありそうだ。
爪が土に深く刻み込まれている。
(やられたら一撃…か)
そう思いながら、攻撃を躱す。
力はあるが、動きが遅いので攻撃は入れやすい。
だが、頑丈ではあるらしい。
3度、攻撃が入ったが、動きが鈍る事は無かった。
(これは…やっかいだわ)
攻撃を躱しつつ、次の攻撃を考える。
(正面がダメなら…)
と、再び背面に走る。
そして、間髪入れずに背中に一撃大きく入れた。
仰け反りながらも、吠えるフェンダーベア。
すぐに正面に回り、心臓に向かって剣を突き立てる。
だが、剣は弾かれた。
(…チッ)
葵は、すぐに攻撃を警戒して、後ろに素早く下がる。
少しのにらみ合い。
攻撃の仕掛けてきたのはフェンダーベア。
大きく振りかぶり一撃を入れようとする。
それを、躱してから、再び首に太刀を入れる。
重すぎる手応え。
渾身の力を込めて剣を振るう。
運が良かったのか急所を切れたらしい、フェンダーベアは倒れた。
一息も付かずに群れに向かって走り出す。
(あと2匹…)
走りながら、回復薬を飲む。
さっきの戦闘で消耗をしていたからだ。
体力を回復してから、カイトとバッカが相手にしている群れを目指す。
残り7匹…うちの子供らしき個体は奥の方で固まっている。
5匹を同時に相手にしているカイトとバッカだったが、葵が来るとフェンダーベアの1匹が葵に向かってやってくる。
葵は、すれ違い様に一撃入れたが、代償とは言わないが腕に微かに切り傷を負う。
傷を気にせずに次の一撃を背中に入れた。
仰け反る所に心臓に一突き。
今度は上手くいったようだ。
倒れるフェンダーベアを確認せず、する間もなく
「次!」
そう言って、残りの群れに突っ込んでいく。
次の1匹は、ジリジリと間合いを取っている。
警戒しているようだ。
(ここは、攻撃あるのみ!)
先に仕掛ける為に駆け出す。
フェンダーベアは、鋭い爪の一撃を加えようとしたが、サッと躱して後ろに回り込み一筋入れてから、心臓目掛けて後ろから刺す。
断末魔と共に倒れるフェンダーベア。
それを確認した、バッカが
「後は、俺達に任せろ」
と言って、残りの3匹と子供の個体2匹を、2人であっという間に倒していく。
群れを倒し終わってから、剣を突き立てて片膝をつく葵。
「ごくろうさん」
そう言ってから、バッカはすぐに自分が仕留めたフェンダーベアを収納していく。
そして、それが終わると2人に向かって
「さて、後はお前らの獲物だな。角を取るのはコツがいる。教えてやるからこいよ」
と言う。
それに従い、バッカの元へと向かうと葵が最後に倒した個体の前に立っていた。
「見てろよ」
そう言うと、ナイフと取り出し、皮と角の境目に切れ目を入れ行く。
慎重にだ。
ある程度の深さまで切り込みを入れたら、角を引っ張り、出て来た角本体に横から切り込みを入れだした。
のこぎりのように動かし、それを繰り返すと角は取り外された。
「ほれ、この通りだ」
そう言って、角を葵に渡す。
「さっきのリルラビットと同じで、切り込み入れやすい所は色が違うから、切れやすい。生え際はあまり価値がないから多少切れ目が悪くても大丈夫だ。悪すぎるのは問題だけどな」
そう言ってからナイフをしまう。
「俺は、自分の収納の整理をするから、お前達は角を取り出しな」
と、バッカは手の平を上に向けて魔方陣を展開する。




