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夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
一路、北へ…
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ランクアップの試験ー後ろから追う者

その後方で…


『びっくりしましたよ、いきなり姫様が回復薬作り出した時は』


と、昨日食堂での一幕の1人が言うと


『しょうがないとは思うけどね。お金ないし、ボイテイで買ったヤツは質が悪すぎるからね』


副官と呼ばれていた人物が答える。


『でも、最低限とはいえ魔法を発動しましたからね。こっちはヒヤヒヤでしたよ』


『まぁ、確かに。首領(ボス)からの連絡が無いって事はバレてないって事でしょ』


副官は、そこで襲ってきた魔物を一撃で倒す。


もう1人も魔物を倒す。


『こっちは、魔物避けの結界張っているのに、何でくるかなぁ』


そうぼやくと


『仕方ないでしょ。姫様に分からないようにこっちも最低限の結界しか張れないんだから』


そう言って魔物を倒す。


結界のお陰か、魔物はそこでいなくなった。


『ま、姫様達が出立した後が大変でしたよ。すぐに姫様の部屋に入り込んで上書きの隠蔽魔法をかけましたからね』


『かけたの私だけど』


副官が言うと


『そうですけど、見張り役も大変でしたよ。人避けの魔法を発動しないとならなかったし』


そうぼやくと


『それも私が張ったでしょ』


副官がツッコミを入れる。


『でも、首領(ボス)から直伝されていて良かったですね。この魔法』


『ええ。私の適性が合っていたとはいえ、首領(ボス)には感謝だわ。それに全開で魔法を発動しなかった姫様にも』


『え?』


『全開で行かれたら、私の上書き魔法なんて打ち消しちゃうわ。姫様は次期【ベイト】候補の1人だと言われているのだから』


『確かに。…そういや首領(ボス)も【ベイト】候補だったと聞きましたけど?』


その問いに副官は少し黙ってから


『辞退された、と聞いているわ。単純に魔法力でいえば、あの2人には敵わないってね』


そう言った。


『2人?』


『姫様とヴィヴィアン殿よ。姫様はシンフォニアの加護を受けた寵児、ヴィヴィアン殿は賢者レスクドールの孫ですからね。高い魔法力なのは当たり前よ』


そう言った後


『いざ、戦闘となると経験値が違うから首領(ボス)が勝てるとは思うけどね。あの方は…この世界で唯一の…()()()()なのだから』


という副官に対して


『でも、姫様もそうなる可能性出て来ましたね』


そう何気なく言うと、副官はハッとして


『確かに、今のまま剣の腕を磨いたら…魔法剣士になるかもしれないわ。でも…』


『でも?』


その問いに、副官は


『今のままの戦闘スタイルじゃダメね。魔法と剣を絡めて攻撃と防御を同時に行わないと、首領(ボス)みたいに』


『そうですね。首領(ボス)は、さらに複数の魔法とかも絡めて来ますからね』


『だったら、首領(ボス)自ら指導したら…』


その言葉を遮るように


『それは無理ね』


副官はバッサリと切った。


『今の姫様の剣の腕では、その域にはいけない。まだ、首領(ボス)が指導できる程に剣の腕が上がってはいないわ。今は無理でしょう。それは首領(ボス)が一番理解されているはずだわ。だから、姫様の前には現れず、錯乱行動に回っている。どこまでヴィヴィアン殿に通じるかは分からないけどね』


そう言ってから、前にいる3人を見失わないようについていく。


『そういえば、他の班は?』


と、問うと


『1から5班は錯乱部隊ですから、首領(ボス)の管轄ですし掴めませんけど、6から8班は、私達と別方向から姫様達を追っています。9班と10班は情報部隊長の指揮の下、オリンズでの情報収集に駆けずり回ってます』


そう報告すると


『エイリア…か』


副官はため息をつく。


『あの子は、隙を見たら何しているか分からないから心配だわ』


そう言ってから、もう一度ため息をつく。


『情報部隊長は、仕事の時はしっかりされていますから大丈夫ですよ。…たぶん』


答えた本人も若干、自信が無い。


『あの子は、頭だけはいいんだけどねぇ…興味が湧いたら、そっちに気を取られる所があるから…』


『…苦労されていますね。副官』


少し同情気味だ。


『あの子が横道逸れる度に修正していたからね。今は9と10班がやっていてくれるといいけど』


天に願うかのように言う副官に


『副官…大丈夫です。信じましょう』


そう言うと


『そうね。信じるしか無いわね』


副官は、とりあえず信じる事にする。


『ところで…首領(ボス)達の錯乱班はどうなのですか?』


という問いに副官は


『あまり念話で話は出来ないから、よくは知らないけど、ヴィヴィアン殿の勘が冴え渡っているのか、難航はしているわね。それでも一定の効果は得ているわ。この試験が終わるまでは国境付近で足止め出来るでしょ。ま、こっちとしてはオリンズを早く旅立って欲しいものだけど』


最後は少しボヤくように言うが


『姫様には姫様の考えがあるのでしょうけどね』


諦めた様に言う。


『我々は、我々の使命を全うするだけよ』


そう言ってから副官は


『6班から8班に念話するわ。命に関わらない限り決して手は出さないように、とね。これもシンフォニアが姫様に課した試練なのかもしれないのだから』


そう言ってから、手を耳に当てる。


『6班から8班、聞こえますか?分かっていると思いますが、姫様の命に関わらない限り手は出さない事、命に関わる場合は、あとの2人は放置して姫様だけは保護しなさい』


そう言った後、耳から手を離す。


ふうっと息をついてから


『さ、追跡続けるわよ』


副官が、言った。


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