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夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
一路、北へ…
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ランクアップの試験ー小休止中2

「…?あぁ、大丈夫だが」


葵がそう答えるが、バッカは軽い切り傷を受けている腕を掴み


「傷は浅そうだ。だが、体力は相当減らされているな」


そう言ってから


「回復薬は持っているか?」


と、葵に問う。


葵は、それらを入れているバックを指差して


「4本位あるが…」


そう答えると


「今、1本飲んでおけ。体力の消耗が激しい。フェンダーベアの群れまで、まだ少し距離がある。それまでまだまだ、魔物の群れとは遭遇する。目的のフェンダーベアまでにダウンされたらお終いだ」


バッカが、そう言う。


「しかし…」


葵が何か言おうとすると


「俺も飲んでおいた方がいいと思う。いざという時は、俺が持っている5本も分ける。早く飲むんだ」


カイトまでもが、そう言ってきた。


2人に言われ、不本意ではあったが葵は回復薬を1本飲む。


葵の中で体中に活力が湧いてくる。


それと同時に微かにあった切り傷を癒やされていた。


(すごいわ。この回復薬)


実は今使ったこの薬、昨日葵がこっそりと作っていたモノである。


早起きして、こっそり作っていたのだ。


材料だけは買っておいたので、後は作るだけだったが…


ただ、魔力を込めないとならなかった為、作るときは魔力や波動が漏れないように細心の注意を払っていた。


一見、危険な行為だが、葵にしたら、レイラ姫の知識を試したかった事もあるし、何より回復薬は、不足している。


ボイテイで買ったのは、質の悪い回復薬だった。


それによって、回復が少なかったと言える。


それでも無いよりはマシだったが。


だから、今度はもう少し質のよい回復薬が欲しかった。


だが、現在、金銭に関しては困窮しているに近い。


金貨を元々持っているが、それは使えないし、ギルドで稼いだ金銭は少ない。


その一方で、回復薬は、需要があるせいなのか少しお高めだ。


買うのが無理なら作るのみ。


この作業で10本ほど作れたので、カイトと分けた訳だが。


…その代わり、カイトにはしこたま怒られた。


危険な行為だったのだから、仕方あるまい。


一応、弱い結界を張っていたとはいえ、魔力や波動が漏れたら居場所が知られてしまう。


ただでさえ、追っ手が何処にいるのか見当も付かない。


葵が理由を説明しても、それでもカイトは一言相談すべきだったと言った。


そこは、葵の落ち度だったと思う。


好奇心に負けてしまった自分が反省すべき点だったと。


だが、その成果は絶大だった。


そして、レイラ姫の知識と魔導士としての能力の高さを確認出来た。


普通なら、弱いとはいえ結界を張りながら、魔力と波動の流出を最低限に抑えて、効果の高い回復薬などは作れない。


これを同時に行える事は、相当な魔導士である事の証なのだ。


それを確認出来ただけでも葵にしたら収穫があったと言えよう。


そして、回復薬も上級とは言えないが、かなりのモノが出来たと言える。


それをボイテイで買った分と混ぜて麻袋に入れている分と収納している分に分けている。


「お…その回復薬…」


バッカが言おうとするのを遮るように


「前の街で買ったもんだ。当たりを引いたな」


そう言って空瓶を麻袋に直す。


これは再利用する為である。


「そうだな。普通は、そこまで回復はしねぇ。質のいい回復薬を買ったんだな?高かっただろ?」


そうバッカが聞くが


「いや、普通に買ったもんだ。運が良かったとしか言えねぇ」


しれっと葵は答えた。


よもや、自分で作りましたなんて言わない。


そこまでバカではない。


「…ふぅん、そっか。他に持っているのは?」


バッカに聞かれ、他の3本を出す。


「質の高いのと低いのが混ざっているな…次はこれを使えよ。質の高いのはフェンダーベアの時にとっておけ」


そう言って、質の悪い回復薬を指差す。


「あぁ…分かった」


葵は素直に答えてから


「よく分かるな」


そう感心していると


「これでも目は肥えている方だぜ。おっと、そういや空瓶は…っと、道具屋に持って行けばそれなりの金額で交換してもらえるからか」


と、葵が空瓶を持って帰るのを勝手に解釈してくれたようだ。


「…まぁな」


【リサイクル】です。


何て言えないので、曖昧に誤魔化した。


「じゃ行こうか」


バッカに先導されて先に進む。


「そうだな。まだ先なのか?」


葵が問うと


「ああ、まだ先だな。とは言っても、そんなに遠くはないさ。ササッと仕留めれば、夕方前には街に戻れるハズだぜ」


そう言って先を進むバッカ。


「そんなに上手くいくかな」


葵は、不安を口にしたが


「ま、それは俺達の連携次第って訳だな。さっきの通り、葵はフェンダーベアを相手する事を考えろ。雑魚は俺とデュランが引き受ける。確実に5匹仕留めろ。群れは、5匹以上はいる。出来るだけ足止めはするが、1匹ずつ確実にな」


と、バッカが自信ありげに言う。


だが、彼らは大事な事を忘れている…


それが何かは後で判明するだろう。




そして、その後ろに誰かがいた事は気付いていない。


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