表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
一路、北へ…
68/141

ランクアップの試験ーアオイ編肩慣らしの戦闘

少しホッとしたように剣を下ろす。


すると


「油断はするなよ。どこに魔物が潜んでいるかは分からないからな」


と、双剣を鞘に収めながらのバッカから忠告にも似た言葉。


「あぁ…わかっている」


そう言って、葵が剣を鞘に収めると


「とりあえず、俺が7匹、デュランが5匹、アオイが3匹か…まぁまぁの出来だな」


そう言ってから、魔物に近付き


「こいつは、ベレットっていう魔物だ。さっきも言った通り額の石には価値がある。だから、乱獲されやすい。そのせいで数は希少な訳だ。大人しそうな見た目だが性格は獰猛だ。鋭い爪で相手を倒しにかかってくる。額の石は、この通り…」


そう言って、一匹のベレットの額の石をグッと引っ張る。


あっさりと取れた。


「簡単に取れるわけだ。これは、この石が古くなったら新しいのに生え替わるからだ。生え替わった石は、ゴロゴロ森に落ちてはいるが、価値は下がる。古くなった石だからな」


そう言ってから、自分が狩ったであろうベレットの額から次々と石を引っ張り出す。


「分かるのか?」


葵が問うと、バッカは作業を続けながら


「まぁな。自分の狩ったのが分からないと、後で面倒な事になる。だから、自分が狩ったヤツは覚えておかないとならない…これで終了だ」


そう言って、最後の一匹の石を引っ張る。


だが、少し固そうだ。


「お…こいつは…」


そう言って力を込めるとやっとの事で引っ張り出す。


「ラッキーだな」


その赤く光る石を見ながらバッカが言う。


「何がだ?」


葵の問いに


「あぁ、ベレットの額の石は生え替わる…てのはさっき説明したが、生え替わったばかりは、外れにくい。逆に古くなってくると外れやすい。これは、相当外れにくかったから、生え替わりに近いって事さ」


そう答えてから、目の前の石を手の中で遊ばせる。


「そうか…」


納得しながら、困ってしまった。


3匹しか倒していないとはいえ、どれを倒したのか分からない。


「お前らは気にしなくていいと思うぜ。チームなんだから、一緒に鑑定するだろうからな。そん時にどっちがどれを狩ったかなんて混ぜちまえば分からねぇ。大事なのは、どっちが何を何匹狩ったかっていう事だからよ」


そう言われて、納得出来た。


確かに先日も混ぜて鑑定してもらっていたが、一緒に鑑定されていたし、数が正確だった事もあり、何の問題もなかった。


「なるほどな」


そう言ってから、覚えのある手前の1匹の額の石を取る。


少し力がいるが、それをバッカに気付かれてはならないと思い、難無く引っ張り出すフリをする。


そして、別のベレットの石も引っ張り出した。


今度は、少し苦労をする。


(これは…新しいの?)


と、思いながらも何とか外せた。


そして、最後であろう1匹は、特に苦労する。


引っ張り出せない。


カイトがそれに気付き


「俺がやろう」


と、葵に代わってベレットの額の石を取り出そうとする。


だが、中々外れない。


「どうした?」


そこにバッカがやってくる。


「…こいつの石が…」


と、葵が言おうとすると


「外れないのか?そりゃあ、またレアだな」


そう言ってから、ナイフを取り出す。


「どきな」


そうカイトに言う。


カイトは、不本意ながらもバッカに場所を譲る。


バッカは、器用にナイフで石と本体の境目に切れ目を入れてから、次に細くて短い平たい棒を取り出して、切れ目に差し入れてから梃子の原理のように棒を動かす。


すると、するり…と石は外れた。


バッカは、外れて石を見ながら


「よし、傷ついてないな」


と言ってから葵に渡す。


「これは、そんなにレアなのか?」


と聞くと


「あぁ、昨日今日生え替わったばかりの石だ。新しいから買い取り価格は高いと思うぜ」


そう言われて手元の石を見る。


「…だが、デュランが狩った獲物かもしれないがな」


ボソリと葵が言うと


「まぁ、その可能性はあるな。だが、売る時は一緒だ。売った後の合計をお前達の好きなように配分するといいさ」


そう言ってから、さっき使用した小道具をしまう。


「…そうだな。デュランと俺の狩った分で配分を決めるよ」


そう言ってから、石を腰に下げていた麻袋に入れる。


「どれをどっちが狩った…ってのを気になるなら、クリスタルに聞けば分かるが、そんな面倒な事は誰もしねぇよ。時間がかかるから別の連中が迷惑になんだ。ま、それでもやる連中もいるが、お前達もやるか?」


そのバッカの問いに、葵は少し考えていたが


「いや、必要ない」


カイトが即答した。


「配分は対等にする」


そう言い切るカイトに


「デュラン…しかし…」


葵が何か言おうとすると


「お前と俺は対等の立場だ。確かに腕は俺の方が上だが、戦闘以外の交渉等は、アオイに任せてある。それがあるから対等の立場だと思っている」


そう言ってから、回収した石を麻袋に入れた。


その何も言わせない空気感から、アオイは何も言わなかった。


だが、バッカはその2人の様子を見ながら


「お前らがそれで納得出来ているなら、いいんじゃないか?俺が口出すことじゃない」


そう言ってから


「群れはこっちの方だな」


と、歩き出す。


葵とカイトもそれに続いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ