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夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
一路、北へ…
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ランクアップの試験ーカイト編終了

「とりあえず、街に戻る前に…」


と、収納魔法を発動する。


「獲物を入れようか…」


そう言ってから狩った獲物を要領よく収納していく。


「手慣れているな…流石と言うべきか…」


葵が感心していると


「…褒められたと取っていいのかね?」


苦笑しながら、バッカが質問を投げかける。


「ああ…当たり前だ。要領よく収納するには、相当な技術がいるからな」


スッと言葉が出たが、すぐにハッとなる。


…そう、今、ボロが出たのだ。


『相当な技術がいる』


その言葉は、魔法に対しての知識がないと言えない。


魔法と言えども、万能な訳ではない。


《限り》があるのだ。


魔力の消費の低い収納魔法とはいえ、それは同じ。


収納できる量にも限度がある。


四角い箱にブロックを隙間なく詰めるように、収納には順番や方向など、様々な工夫が必要になってくる。


それを上手に行っているバッカに対して、葵は素直に驚いた。


そして、…ボロが出てしまった。


恐る恐るバッカを見るが、バッカは気付いていないかのように次々と獲物を収納していった。


「ん?どうした?」


バッカが、自分を恐る恐る見ている葵を不思議そうに見ているが


「何でもない…」


そう言って、胸を撫でおろす。


(よかった…気が付かれてないみたい)


だが、一瞬バッカの口元がフッと笑った事に葵は気付いていない。


「じゃあ、一旦、街に戻るか」


バッカに言われて


「分かった」


そう答えて、帰り支度を始める。


今狩った獲物のうちに、価値があるのはボークボアやレッドディアだけだ。


それと、今回のランクアップの対象であるイッカクボア。


額の一角部分の状態が良ければ良い程、買取は上がる。


その報酬が、今後の活動資金になる…という訳だ。


無論、自分達でも金貨を持っている訳ではあるが、それは使えない。


どこからボロを出すかは分からないのだ。


無謀な賭けは、《いざ》という時にしか使わない。


使えない。


それは、バッカと一緒にいるのであれば、限りなく不可能だろう。


あくまで、依頼をこなして、その報酬を充てるしかない。


焦る気持ちはあるが、それを抑えていくしかないのだ。


だが、急がなければならないのも事実。


追手が掛かっているのだから。


今は、何とか逃げ切れているのかもしれないが、いつ追いつかれるか分からない。


ボイテイの街では、ギリギリだった。


いつ、追手が自分達に追いつくかは分からない。


だから、一刻も早くオリンズから出立しないといけない。


焦る気持ちやそれを抑える気持ち、そして状況と…1つ判断を誤れば大変な事になる。


それを、冷静に客観的に、かつ迅速に判断しないとならない。


綱渡りな旅だ…と葵は感じ取っているが、それはシンフォニアから与えられた試練の1つであろうと思っている。


これからの旅が途方もなく、長く幾度も危機が訪れるだろうと覚悟はしている。


でも、まだ甘い部分はあるし、自身の剣の腕は限りなく弱い。


強くならなければ…と強く思う葵であった。


オリンズへの帰り道でも、ボークボアやレッドディアとの遭遇戦はあったが、急ごしらえの連携で何とか乗り切った。


そして、鼻歌交じりに獲物を収納していくバッカ。


(要領よく収納しているとはいえ、よく入るものだわ…どんだけの実力者なの?)


感心しながら葵はそう思ったが、口には出さない。


今度は、ボロを出さずにいられた。


そして、街に入りギルトの近くにある路地裏でバッカは収納魔法から荷車とカイトが狩った獲物を出す。


「これで間違いないと思うぜ」


そう言った。


「数えていたのか?」


葵の問いに


「まぁな。俺達の世界ではよくある事だからな。互いの手柄を横取りする事は日常茶飯事さ。それを防ぐために、自分の狩った分や相手の狩った分に対しては、きちっと見ているんだ。じゃ、俺はアオイが狩った分と俺が狩った分をこっちのルートで捌いてくる」


そう言って、手をひらひらさせて去って行く。


《こっちのルート》とは、彼の独自のルートであろう。


それについては、何も言わずにおいた。


探られたくない腹は、お互い様…という訳だ。


早速、獲物を荷車に乗せて、昨日の買取場に向かう。


昨日程ではないが、買取場にはそれなりに人が並んでいた。


順番に並び、昨日と同じように買取を済ませる。


「イッカクボアの角の状態が、こんなにいいのは珍しいですね」


と、受付嬢に感心された。


この言葉を信じるなら、買取価格は高い方であろう。


早速、ギルトに向かい、マーニャに話しかける。


「ランクアップの対象を狩ってきた」


カイトがそう言うとマーニャは、ポンっと手を叩いて


「早かったですね」


そう言ってから、買取場からのカードを受け取る。


「デュランさん、ギルドカードを出してください。確認しますね」


マーニャの言葉に、カイトはカードを出してマーニャに渡す。


マーニャは、それをクリスタルに翳してから


「ふむふむ、間違いないようですね…ん?アオイさんは、獲物は仕留めなかったのですか?」


至極当然な質問をぶつけてくる。


葵の狩った分は、バッカに渡してあるから、手元にはない。


葵は、しれっと


「あぁ、俺の狩った分はバオラビットばかりだったからな。森に置いてきた」


そう答えると


「…あぁ」


と、マーニャは納得したように


「あれは、高くは売れませんしね」


と、納得したようだ。


久しぶりの投稿になります。


やっと再開できたと安堵していますが、諸事情にて投稿はまちまちになります。

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