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夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
一路、北へ…
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ランクアップの試験ー小休止から再び戦闘へ

何処からその自信がわいてくるかが分からないが…


「…会えるといいな」


とだけ葵は言った。


ハッキリ言うと、バッカの師匠の事は関係ない…というか関わるつもりもない。


これ以上、誰かに関わるという事は危険をもたらす。


葵達にとっても、相手にとってもだ。


それくらいの危険を秘めた旅である事ぐらい、自覚はある。


「…そうだな。アオイの為にも早く会えるといいがな」


と、言うバッカに驚きながら


「いや…お前が早く師匠とやらに会えるようにと」


葵が言うと


「え?アオイ、お前が師匠に出会えるんだよ。俺の勘によればな」


得意げにいうバッカに


「いや…俺は…それに、お前とはこの旅が終われば…」


と、言いかける葵に


「俺は、しばらくお前らと一緒にいるぜ」


バッカが、爆弾発言を投げ込む。


「「え?」」


葵達が、その発言に驚いていると


「お前らといると、儲けそうだしな」


さらに追い打ちをかけるように言う。


その言葉に、葵とカイトは焦ってしまう。


「…いや…俺達は…」


葵が戸惑いながらも、何か言おうとすると


「アオイの魔物を引き寄せるオーラは、危ないぜ。デュラン一人じゃ守りきれないと思うがな」


バッカの言葉に、ムッとしたカイトが


「自分では力不足だと言うのか?」


そう聞くと

「そうだな…無理だな。昨日のシャウトベアみてぇな奴が一匹ぐらいなら守り切れるかもしれないが、複数出てきたらアウトだ。シャウトベアは群れて出てくる場合があるんだぜ。それくらいは知っているだろ?」


その鋭い眼差しと指摘に、カイトは黙ってしまう。


葵は、バッカに


「シャウトベアは群れで出てくるのか?」


世間知らずであるレイラ姫の知識では、それは知らない。


確認するように聞く。


バッカは頷いて


「あぁ、シャウトベアは本来、群れているもんだ。…とはいっても家族単位だから3、4匹ぐらいだがな…昨日のは運がいいとしか言いようがねぇ。1匹だけはぐれていたのが、アオイのオーラに釣られて出てきたとしか言えねぇ」


そう返事してからカイトの方を向いて


「デュラン…お前は確かに強い…多分、冒険者レベルで言えば、単体でBランクまでは楽々と上がれるだろうな。だが…アオイは違う。今のレベルではEランクに行けるかどうかも分からないぐらいの実力しかない。それを庇いながらでは実力は発揮できない」


と、ズバリと痛い所をついてくる。


カイトは、言葉に詰まった。


アオイも苦い顔をする。


バッカの言葉に間違いはない。


葵には、実力が伴ってないのは事実なのだから。


「…だが、それでも」


と、カイトが何か言おうとするが


「お前らに、どんな事情があるかは知らないが、1人ではアオイは守り切れない。それが現実だ」


そう言って葵を見る。


葵は、目を逸らしてから


「確かに、俺の実力はない…それは、事実だ。だが、それとバッカが俺達の旅に同行するのは別問題だ」


と言うが


「…甘いな」


バッカが言う。


「え?」


葵が驚いていると


「お前は、口先で渡り歩いていたかもしれないが、それは出身の村での話…人相手に対してはその実力は発揮できるが、ここは人の住む処じゃねぇ。魔物の巣窟だ。そんな甘い考えではすぐに淘汰されてしまうぜ。どんだけ世間知らずなんだ?」


その厳しい言葉に、葵は何も言えない。


更に追い打ちかけるように


「世の中はな、利用出来るもんは何でも利用しないとならねぇ時があるんだぜ」


そう言うと葵は


「…お前が、俺の魔物を引き寄せる力を利用しようと思っているという訳か?」


と、問う。


バッカは、ニヤリと笑い


「俺は、それが儲けに繋がるから、アオイ…お前を利用する。お前らは、俺の魔物を狩る実力を利用すればいいだけだ。簡単な事だろ?」


そう言ってから双剣を抜く。


「さて…小休止は終わりみたいだ。魔物は待ってはくれないぜ」


そう言うと、バオラビットの群れが大量に出現する。


それが、一番弱そうな葵に向かってくる。


葵とカイトも剣を抜いた。


同時にバオラビットが襲ってくる。


「アオイ…お前は、自分で出来る範囲をやりゃあいい。フォローは俺とデュランでやるから。自分で出来る範囲でやれ」


そう言ってから双剣を振るう。


「分かった」


葵は、返事をしながら剣を振るう。


肉を断つ音は、何度やってもまだ慣れない。


だが、バッカの言う通り魔物は待ってはくれない。


一番弱い葵に向かってくる。


守られながらは、本来自分の望みではないが、時としてそれを受け入れなければならない場合もある。


悔しさを飲み込み、葵はバッカの言葉に甘えて自分で狩れる範囲で魔物を狩る。


悔しさがあるのは、葵だけではない。


それは、カイトも一緒だ。


バッカの言葉通り、自分一人では葵を守り切れないのは分かってはいる。


だが、納得できないし、認められない。


それは騎士としての矜持に関わる事なのだから。


認められないが、今はそんな場合ではない。


次々と襲ってくる魔物を狩りながら、葵を守らないとならない。


バッカの言う通り、彼の実力を利用するしかない。


悔しさを飲み込みながら、カイトは剣を振るった。


バオラビットの群れが片付くと、次はイッカクボアがやってくる。


休む暇もなくだ。


カイトは、それを正面に見据え剣を構える。


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