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夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
一路、北へ…
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ランクアップの試験ーカイト編始まり

「話はついたかい?」


そう問うバッカに


「あぁ。そういう事で頼むバッカ」


葵が言うと


「そっちの兄ちゃんは納得出来てないみたいだがな」


と、少し嫌味を言う。


それにムッとするカイトだったが


「別に…」


短く答える。


肩をすくめるバッカに


「さぁ、行こうぜ。バースの森に」


そう言ってから、門から街を出る。


門番は、怪訝そうにバッカを見て首を傾げていたが、気にしている暇はなく、門は難なく通れた。


「偽装はいいのか?」


そう問うと


「今は、別の身分証だからな。商売上、身分証はいくつかある…だが、クリスタルには通用しねぇからな。そこに気を付ければ大丈夫さ」


そう言ってから、収納魔方陣から、双剣を取り出して腰の後ろに差す。


「さて、獲物はなんだい?」


というバッカの問いに


「デュランは、イッカクボア10匹だな。俺は、フェンダーベア5匹だ」


葵が答えると


「そりゃあ、レアものの獲物じゃねぇか。ギルドも無茶ぶりしてんな」


そう言って口笛を吹く。


「だが…あんたがいれば簡単かもな」


そう言って葵を見る。


「え?」


目を丸くしている葵に


「あんたはレアものを引き寄せるからな。案外簡単にクリアするかもな」


そう言うそばから、銀色の何かが飛び出した。


銀色の角と毛を持つイッカクボアである。


「ほらな」


バッカが言うと共に、カイトが剣を構える。


「俺達も警戒するぞ」


バッカに言われて、葵も剣を抜く。


2匹現れたイッカクボアが突進してくる。


カイトもタっと駆け出した。


そして、すれ違いざまにイッカクボアそれぞれに一撃を入れる。


《ヒュー》


バッカが口笛を鳴らす。


確実に急所を狙っているからだ。


「やるね」


ニヤリと笑った顔は、葵が見た事がない鋭い顔だ。


まだ、彼については謎が深まるばかりだ。


そして、何やらゾロゾロと魔物が出てくる。


「さて、俺達もやろうぜ。イッカクボアには気をつけな。せっかくの獲物を逃したら、時間の無駄にしかならねぇ」


双剣を抜いて構える。


葵から見ても、隙のない構え。


襲ってきた魔物を狩る姿には荒々しさがあるが、洗練された何かを感じる。


“本当に盗賊だろうか?”


そう思うほどに


だが、葵もそれにかまけている訳にはいかない。


魔物が、次々と襲ってくるからだ。


下級から中級寸前の魔物を葵が狩り、それ以上の魔物はバッカが狩る。


それなりに連携も出来ている。


(この人すごい。即席なのに即座に相手に合わせて動いている)


正直、感心してしまった。


葵には、まだまだ隙が多い。


それをバッカは見事にフォローしているのだ。


まるで、手慣れているかのようだった。


しかし、葵は気にする暇はない。


襲ってくる魔物を次々と倒していく。


一通り倒し終わった後…


「バッカ、助かったよ」


葵が言うと


「いや、礼はいいさ。俺は雇われている身なんでね。にしても、あんたよく冒険者になる気になったな」


そう言うバッカに


「どういう事だ?」


「いや、動きが隙だらけでならねぇ。まるで最近、剣を始めたみたいに未熟すぎるし、筋力もついてない。動きも遅い。どっちかと言うと後方支援向けって感じなんだが…」


バッカの見立ては外れてはいないから、ドキリとした。


本来ならば、魔術師である彼女は後方から味方を支援するタイプなのだから。


「…田舎が不作でよ。口減らしの為に追い出されたんだ。まぁ、剣さえ使えれば何とかなるだろうと高を括っていた所で魔物に襲われてな、その時にデュランに助けられたんだよ。それからデュランには剣の指南を頼んでいる。その代わり、口の立つ俺は交渉役をしているって訳さ」


と、口から出まかせを言う。


「そうかい。なるほどな」


と、一応納得してもらったようだ。


「そういうバッカこそ、動きに無駄がないな。さすが…というか洗練された動きだ」


葵がそう言うと


「俺の場合、師匠が優秀でな。盗賊団の首領(しゅりょう)なんだけどよ。孤児だった俺をここまで育ててくれた恩人さ」


と言った後


「…俺の師匠ならあんたを優秀な剣士に出来そうなんだけどな」


ボソリと呟く。


「え?」


葵には聞こえなかったようだ。


「…いや、何でもない」


そう言ってから


「さ、イッカクボアは…まだ5匹か。まぁレアもんだと思えば早い方だな」


そう言ってから、収納魔方陣を展開する。


「とりあえず、獲物は預かっておくぜ」


バッカの言葉に


「そうだな。頼む」


葵は、そう言った。


だが、カイトは、先程のバッカの言葉が聞こえていたのだろう。


「…先程の言葉、どういう事だ?【俺の師匠ならあんたを優秀な剣士に出来そうなんだけどな】と言っていたが…まるで、俺が葵の師匠としては役不足のような…」


鋭い視線をバッカに送る。


驚いてバッカを見る葵。


バッカは、バツが悪そうに


「…聞こえていたのか」


そう言ってから、少し沈黙を置いて


「ああ、言ったな。お前らは系統が違うからな」


と、言い切った。


「系統…?」


首を傾げる葵に


「あぁ、剣にも系統があってな、まずは前衛向きの突撃型と要人などと守る為の防御型、そして、小手先の技とかを織り交ぜた支援型…大きく分けてこの3つになるな」


と、言ってから


「俺は突撃型、デュランは防除型…アオイは、支援型。それぞれタイプが違うって訳だ」


そう言って、葵を指さした。


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