表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
一路、北へ…
56/141

ランクアップを始めましょう…まずはカイトから

ちなみに、イッカクボアとは、ボーグボアより少し強めのイノシシで銀色に輝く一角を持っている。


だが、ボーグボアと違い、肉はあまり美味しくはない。


ただ、額に輝く一角は、宝石としての価値はあるという。


そして、フェンダーベアだが、昨日遭遇したシャウトベアより力はかなり劣るが、ボーグボアよりは手強い。


問題は、両方とも遭遇率が低いという事だ。


とくにイッカクボアは、その一角を狙う狩人が多い事から、数は多くはない。


フェンダーベアに関しては、繁殖力が高くない上に、よくランクアップの標的にされる事から数は少ないのだ。


遭遇は、ほぼ運任せになる。


探索魔法を使えば一発で居場所が分かるのだが、いかんせん今、魔法は使えない。


2人は、息を飲んだが、今は引き返すわけにはいかない。


カイトは申込用紙に記入してから用紙とカードを翳す。


それぞれが淡く輝く。


「これで受付完了です」


とマーニャが言う。


カイトは、紙とカードを取り


「とりあえず、いってくる」


素っ気なく言ってから、カイトはカウンターを離れる。


「あ…あの…」


何か言おうとしたマーニャにメガネの受付嬢が説明する。


「まぁ、それが確実にデュランさんだけでもランクアップ出来ますね」


マーニャは、納得したようだ。


「アオイ!」


カイトに呼ばれ


「じゃ、いってくるよ」


そう2人の受付嬢に手を振ってギルド会館を出る。


「…ランクアップの試験中も私から離れるな」


小さく呟くカイトに


「でも…」


「魔物はすべて私が倒す。お前は一切手を出すな」


そう言うカイトの迫力に


「分かりました」


そう答える。


カイトの実力ならば、葵を守りながらでも魔物は倒せるだろう。


余裕で…


2人が正門に向かって歩いていると


「よぉ…」


バッカが声をかけてくる。


「あぁ、おはようバッカ。なんだ?」


葵が前に出てバッカに聞くと


「いや…今から狩りに出かけるなら、俺も同行させてもらえないかなと思ってさ」


「なんで?」


葵が疑いの目でバッカを見る。


バッカを100%信用している訳ではないのだから。


「いや、特に理由はない。ただ…」


「ただ…」


「あんたは、大物の魔物を引き寄せる何かを持っているようだからな」


そう言って葵を指さす。


「え?」


驚く葵に


「大物の魔物はな…強い力を秘めている原石を狙う傾向があるんだ。昨日のシャウトベアも、あんたの力に引かれて出てきたんだぜ。強い力を持つ者を餌として食えば、それは自身の力になる。それがあんたって訳さ」


そう言って、もう一度葵を指さす。


「俺には…そんな力は…」


ない…そうとは言い切れない。


レイラ姫としての…魔術師としての力は最高級なのだから。


自分が大物の魔物を呼び寄せる…それは、ある種の恐怖である。


自身の危険だけではない、カイトも危険に晒すからだ。


葵は迷ったが…首を横に振り


「俺達、今日は狩りに出かけるわけじゃない。残念だが…」


と言いかける。


しかし、


「じゃあランクアップか」


バッカに言うと、2人とも黙ってしまう。


「当たりだな。しかも、そっちの兄ちゃんのランクを確実に上げさせる為に、先に試験受けるように言われたクチか?」


事実をズバズバと言い当てるバッカに驚く2人に


「じゃあ、あんたは隙だらけって訳だな」


そう言って葵に顔を近づける。


「大丈夫なのかい?この兄ちゃんの助けを借りずに自分の身を守る事が出来るのかい?大物の魔物が襲ってくる可能性があるというのに」


痛い所を突いてくる。


グッと言葉を詰まらせる葵に


「…俺がいるから大丈夫だ」


そういうカイト。


「大した自信だ。だが、自信は時に傲慢を生む…フィアント公国のようにな」


その言葉に、2人とも黙り込む。


そう…神樹シンフォニアの加護を過信していたフィアント公国はビルガ帝国の侵攻を受け入れてしまったのだから。


「自信を持つのは悪い事じゃねぇさ。だが、その自信を過信して傲慢になっているならば、それは大事に至る…大切な人が守れない…そんな状況にな」


その言葉には重みがある。


「だが…!」


と、言いかけたカイトを抑えて


「分かった、同行しよう。デュランの試験が終わるまで俺の警護をしてくれ。ただし、大物からのみ守ってくれればいい。小物は俺自身の鍛錬の為に自分で狩りたい。報酬は、狩りをした獲物を売るから、その代金すべてでどうだ?」


そう、バッカに提案する。


「…お…おい!アオイ!」


と、言いかけるカイトに


「俺は、お前のランクアップの邪魔はしたくない。大物が襲ってきたら、俺よりもバッカの方が戦力になるだろう。効率的に考えてそれがいい」


そう言うが、カイトは納得出来ない様だ。


葵は、はぁっと息を吐いてから


「私を守りながら、戦うのは至難の業。あなたには出来るでしょうけど、もしもが…あります」


そう囁く。


「私を信用してないと?」


眉を寄せるカイトに


「いいえ。この世界で今一番信用出来るのはあなたでしょう。レイラ姫としても葵としても。だけど、何かあってあなたを失う訳には行きません。何事も安全対策を取らないと」


「だが…」


「彼は信用出来ない…それは分かります。ですが、少しの間です。彼が何か変な動きを見せたら、その時は斬ります。それでいいですね?」


強めの口調の葵に


「分かった…だが、私の判断でも斬らせてもらうからな」


そう葵に言う。


「わかりました」


葵は、頷いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ