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夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
一路、北へ…
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バースの森からオリンズの街へ

葵は、カイトの脇をごつき


「俺達も詐欺って言えば、そうなる。身分証、ギルドカードは偽造だからな」


小声で言うと


「だが、それは…」


「俺達にも痛い部分はある。とりあえずオリンズまで彼と共に行こう。そして、次の行動に移るしかないんだ」


葵の言葉に、納得は出来ないが


「…それが、アオイの判断なら」


と、従うカイト。


だが、カイトはバッカの事は信用していない。


何かあったら、身を持って葵を…レイラ姫を守るのは自分なのだと自負している。


だから、警戒だけは怠らないようにしなくては…思っていた。


葵とて、100%バッカを信用しているわけではない。


そんなにバカではない。


だが、時が時、ケースバイケースなのだ。


自分とカイトの身を守る為には、なりふり構ってはいられない。


旅を続け、目的を達成するまでは…


利用できるモノは利用しないといけない。


幸運な事に、バッカの実力は先程の戦闘で折り紙付きだ。


カイトぐらいの戦闘力は見込める。


オリンズの街までの用心棒ぐらいにはなる。


葵もだが、カイトの体力もそんなに残ってはいない。


バオ・ラビットの群れからボークボアとシャウト・ベアとの連戦…


途中で回復薬を使ったとはいえ、純度の低い薬だ。


今、魔物に襲われたら、100%の力を発揮できるかといえば出来ないだろう。


幸い、魔力は有り余る程あるから魔法を使えばよいのだが、魔法は背中合わせの危険が伴う。


なので、安全牌を選ぶならバッカと同行して、オリンズの街に戻った方がよい。


この旅は、綱渡りの状態だ。


危険が伴っている。


バッカがどのような人物だとしても、今は合わせて行動する方がよい選択だと判断した。


とりあえずオリンズの街まで戻り、報酬を受け取ってから、バッカに礼を渡して宿を見つけてから、純度の高い回復薬の精製、そして、剣の鍛錬をして明日の依頼に備えるしかないと考えていた。


出来るだけ、波風を立てないように行動するしかないのだ。


バッカが変な動きを見せたら、それでこそ魔法を使ってでも逃げればいいだけ。


…それだけなのだ。


葵は、バッカに警戒しながら、そう自分に言い聞かせた。


あくまで、自分が魔法を使うのは、もしもの時にだけ。


その時までは、出来るだけ使わずにいなければならない。


そう言い聞かせて、歩みを進めた。


幸いな事に、オリンズの街までは、先程の戦闘程の狩りがあったわけではなかった。


レッド・ディアが数匹狩れた位だ。


レッド・ディアとは、赤い色をした鹿で、角は長い。


肉は食用として美味とされ、皮は防具や防寒具として利用され、長い角はアクセサリーとして重用されている。


赤い皮は目立つので、主に貴族や軍の上層部の鎧に利用されている。


一般市民も利用は出来るが、色を落とすその工程で防御力は数段と落ちてしまうのが難点なので、ほとんど利用されない。


だが、買い手はいくらでもあるし、滅多に出回らないから…というより魔物に淘汰されているので、ほぼ遭遇しないので、高値では売れるのだ。


(これで、少しは懐が潤えばいいけど)


自分達が狩ったレッド・ディアに淡い期待を寄せながら、オリンズの街に入る。


その前に、葵達が狩った獲物を出してついでにバッカの収納魔法にあった荷車に乗せた。


この世界では、収納魔法は本人の魔力次第で大きくなる。


バッカの魔力が高い事は、それで証明されてしまった。


驚く葵とカイトを横目に


「さ、行くぜ」


そう言って門の方に向かう。


「…増えてんな」


門番は怪訝そうにバッカを見る。


「すまねぇだ。おら、森で迷ってたとこさ、この人達に助けてもらったんだ」


自然な口調で田舎言葉を話し、門番の疑いを晴らす。


双剣のダガーは収納しており、代わりに籠に農作物を詰めたモノを背負っている。


「おら、これを首都に売り捌きにきただ」


そう言って農作物を見せる。


門番は、それを検めてから


「物騒だからな。早く売って、日が明るいうち帰りな」


そう言ってバッカを通す。


だが、逆に荷車に乗っていた葵達は疑われた。


「お前ら、そんなの持ってなかったよな?」


怪訝そうに見る門番に


「それ、おらの村のモンだ。村から買い物頼まれてよ、獲物運ぶのに貸した」


先に通っていたバッカが言うと


「そうか…」


そう言って門番は


「おめえら、運がいいな」


葵達に言う。


「そうだな」


葵は、短く答えた。


カイトは黙ったままだ。


「おめぇのツレ、愛想わりぃな」


門番の言葉に


「愛想がないが、腕は確かだからな」


葵が答えると


「ま、そうだな。これでしばらくは楽が出来るぞ。少なくとも装備はきちんと揃えた方がいい」

ボロボロ(に見えるが、実は防御力高い)の装備を見ながらアドバイスする。


「…そうだな」


葵は、苦笑いで答えて門を通る。


そして、しばらくすると


「…上手いな」


感心したように葵が呟くと


「こんなものお手のものだぜ」


小さくバッカが言う。


「俺達は、このままギルドに行くが…来るんだろ?」


「…礼を頂かないとなんねぇからな」


バッカが着いてきて当然のごとく言うので


「背の荷物はどうする?」


バッカの背にある農作物を指さす。


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