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夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
一路、北へ…
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バースの森、出会い

「…たぁ!!!」


ザクッと肉を断つ音。


それに合わせるように、ズドン…と落ちる音。


返す刀で、別の獲物を切る。


森に入って、しばらくしてだった。


魔物の群れに、遭遇する。


ボークボアとは別の魔物であり、ボークボアより格段弱い魔物だが、数が多い。


狩っても狩っても、次から湧いて出てくる。


兎型の魔物【バオ・ラビット】


多数の群れで行動する彼らは、一度遭遇したら体力勝負と言われる程に消耗戦に入る。


先に尽きた方が負けになる。


バオ・ラビットの数が尽きるのが先か…


狩る者の体力が尽きるのが先か…


それを身に沁みて理解するかのように、次々に倒していく。


背中合わせで戦っている2人は


「大丈夫か?」


カイトの問いに


「大丈夫です!」


葵は答えて、次の獲物を狩る。


だが、息は荒くなっている。


カイトも、葵に無理をさせたくないが、自分1人で葵を守りながら戦うのは、些か不利である。


(…すまない…自分の力が足りないばかりに)


そう思いながら、獲物を狩っていく。


合計何匹の群れを倒したのだろうか…


途方もない数を狩ってから、バオ・ラビットの群れは不利を察して、その場から去って行く。


ペタン…とその場に座り込み


「…終わった」


安堵の声を上げる。


カイトも安堵したように剣を鞘に戻す。


「大丈夫か?」


葵に声をかける。


「…一応」


そう言ってから、バックから回復薬を出す。


これは、先日ボイテイの街で購入したモノだが、純度はあまりよい方ではない。


葵…レイラ姫は一応精製出来るが、何せ時間がなかった。


剣の腕を磨く事が最優先だからだ。


時間があれば、剣の練習と体力作りに時間を割いていたので、回復薬を作る暇はない。


一応、レイラ姫は魔導師なので回復魔法は使えるが、魔法は基本使わないようにしている。


ヴィヴィアンに感付かれるからだ。


だから、多少純度が悪くとも、回復薬に頼った方がよいのだ。


カイトもアイテム袋から回復薬を出して飲む。


「とりあえず、難は脱しましたね」


葵が言うと


「ああ…だが、油断するな。いつ何処で何に遭遇するか分からないからな」


「…そうですね」


それは、今、骨身に沁みて分かっている。


回復薬を飲んでから立ち上がろうとすると…


茂みから何かが飛び出してくる。


先程、遭遇したバオ・ラビットだ。


「また来たか!」


そう言って剣を構える2人だったが、バオ・ラビットは2人をスルーして逃げるように通り抜けていく。


「どういう事?」


意味が分からない葵だったが


「大物が来る…という事だ」


そう言って、剣を構え直すカイト。


そして、大きく地面を鳴らしながら、それはやって来た。


ボークボア…イノシシのような気性の荒い、角を持つ魔物。


それが数匹、真っ直ぐこちらに向かっているのが分かる。


彼らにとって、人間は餌でもある。


弱い人間は彼らに淘汰される宿命にある。


グッと剣を握りしめて、構える。


ボークボアが現れた。


まずは、弱そうな葵をターゲットにしたようだ。


だが、葵の前にカイトが立ち塞がり、ボークボアに一撃を入れて倒す。


カイトの横を通り過ぎ、葵に迫ったボークボアは彼女に仕留められた。


先程のバオ・ラビットより重い肉を断つ音。


5匹倒して、次に行こうとした瞬間だった。


別方向から、別の魔物が現れた。


シャウト・ベア…体長2mもある熊のような魔物。


大きい体と鋭い爪が特徴であり、ボークボアより格上の中級魔物。


カイトはともかく、今の葵では太刀打ちできない。


…魔法を使う以外は。


(…最低限の魔力で)


そう思いながら、シャウト・ベアの最初の一撃を魔法で強化した体でバックステップして躱した葵は、次の一撃を躱して魔法の一撃を入れようとしたが、シャウト・ベアの方が動きが速かった。


その鋭い爪が葵に振り落とされる直前


「…!しまった」


ボークボアの相手をしていたカイトが助けに入ろうとしたが間に合わない。


葵は、グッと覚悟を決めて一撃を…と目を瞑った瞬間…


聞こえてきたのは、シャウト・ベアの断末魔。


その後も、ボークボアの断末魔が聞こえてくる。


葵が目を開くと、誰かが葵を守るように魔物を狩っていた。


そして、魔物が全部狩られた後


「危なかったな…お嬢さん」


その人物は、葵に声をかける。


ボサボサ頭に無精髭、身軽な武装の身につけている彼は、両手に握りしめていたダガーを柄に納める。


「あぁ…助かったよ。…でも、俺は男だ」


ギリギリ理性を守っていた葵は、その人物にお礼を言ってから訂正する。


「え?あんた、女じゃないの?」


不思議そうに言う彼に


「俺は男だ!」


そう言ってギルドカードを見せる。


顎に手をやり、それを見た彼は


「なるほど。確かに、男の子…か。助けて損したな」


と、惜しそうに言う。


だが、手を出して


「ま、男でも女でもいいや。とりあえず、はい」


笑顔を浮かべて言う。


「え?」


と葵が固まっている。


「お・れ・い。基本だろ」


と手をヒラヒラさせる。


「…ああ、そうだな」


そう言ってから、お礼を出そうとしたが、この国入ってからお金を儲けてもいないし、金品交換所にも行ってない。


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