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夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
一路、北へ…
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再びバースの森へ…

そのままギルド会館を後にしてから


「とりあえず、依頼受けれましたね」


大通りを歩きながら、葵が小さな声で言うと


「そうだな…」


そう答えたカイトだったが、チラチラと周囲を見渡す。


「?…どうかしました?」


葵が問うと、カイトは首を横に振って


「いや、何でもない」


そう答えた。


(何か…視線を感じる)


何気に視線を感じている事を葵には言わない。


葵を不安がらせる必要がない、と思うからだ。


(何かあったら、自分が守ればいいだけ…それが騎士としての自分の役目)


自分のそう言い聞かせ、カイトは葵に


「依頼書にはボーグボアは、街の南東に出没する…とあったようだが」


と、ボークボアの居場所を確認するように聞く。


「はい、バースの森にまた戻る事になりますが…」


「仕方ないだろう。それより、アオイ…お前の腕は、未熟だ。あまり無理をしないようにな」


カイトの指摘に


「分かっています。デュランさんの足手まといにならないように、頑張ります」


「無理はするな。怪我をしては元も子もないからな」


そう言ってから


「出来るだけ自分が討伐する。アオイは自分の身の丈にあった分だけ狩れ。後は自分がやる」


と、剣をグッと握りしめる。


「でも…」


葵が何か言おうとしたら


「…あの方の体に何かあったら、大事になる」


カイトの言葉に


「そう…ですね」


そう言いながら、葵の表情は何やら暗い。


「どうした?」


カイトの問いに、葵は


「いいえ、何もありません」


少し拗ねたように答える。


「どうした?」


カイトが不思議そうにしているが


(何か、釈然としない…レイラ姫の体が大事なのは理解出来るけど…何か、モヤモヤする)


そう思っていたが、口には出さない。


出せない。


どう口に出していいのか分からない。


葵の胸にあるモヤモヤした感情が何か分からない。


それは、カイトも同じだ。


何が葵の琴線に触れたのか分かってないので、葵が拗ねたようにしているのが不思議でならない。


(何か…したか?)


と、首を傾げたが分からないモノは分からない。


歩き続けてから、街の入り口である門に着くと


「あんたら…外に出るのか?」


先程の門番が声をかけてくる。


「まあね、俺達冒険者だから、クエストを受けないと飯にありつけないからな」


葵が答えると


「そりゃそうだな」


納得するように肩をすくめる。


「気をつけな」


その言葉に


「ああ」


短く答えて、街の外に出る。


(あー、声低くするのも疲れる)


1つ出るため息。


「どうした?」


カイトの問いに


「いえ、何でも…」


葵は、笑顔を浮かべて答える。


「何か悩んでいるのか?…自分に出来る事が…」


「いえ!何でもないです!」


カイトの言葉を遮って、葵は言う。


「…そうか」


納得出来ない様子だったが、カイトは何も言わなかった。


言っても無駄だろうと言うのは、誰にでも分かっている事だからだ。


(…ツッコんでもくれないのか…はぁ)


微妙に難しいお年頃である。


構ってもらいたいのか、放っておいて欲しいのか…


何とも微妙に難しいお年頃である。


葵自身も、このモヤモヤしているモノの正体は分からない。


レイラ姫のモノなのか、葵のモノなのか…


どちらのモノなのかも分からない。


ただ、分かっているのは、こんなモヤモヤは、初めての事だという事だけ。


はぁっとため息をついてから


「さ、ボークボアを倒しに行きましょう」


気持ちを切り替えるかのように、先に進んでいく。


「お、おい、待て…」


それを追いかけるカイト。


2人の姿は、もう一度バースの森の中に消えていった。




『大丈夫かね?』


それらを見ていた者達の1人が呟く。


『2人ともこのような旅は初めてだから、何かと戸惑う部分もあるのだろう』


キッパリと言い放つ言葉。


『ですが…首領(ボス)


『ん?何かあるのか?』


『いや、ツッコみたい部分はたくさんありますよ。だいたい、姫様、雰囲気変わってません?あれじゃ、ごく普通の…』


『言うな…姫様は、一生懸命民に扮しようとされているのだ』


そういう首領の言葉に


『いや、それにしても、あの変わり様は…』


尚もツッコもうとする部下に対して


『…お前は、彼女が偽物だと?賢者レスクドールが我々を欺いていると言うのか?』


首領が口調厳しく聞くと


『そうは言ってませんが…でも、あの変わり様は…』


『人は、状況が変われば変わるモノだ。姫様も、この世界の為に変わられたのだろう。そんな事より…』


そう言って別の部下達に対して


『目を離すな。我々の使命は、姫様が旅を無事に済まされるようにお助けする事だ。何かないように、よく見張っておけ』


『…介入してよいと?』


部下の問いに


『我々が出来る事は、姫様が無事成長されて、フィアントに戻られる事だ。それまでは、陰ながらお助けする。その為に…』


そこで、声を潜める。


『…分かっていますよ』


部下の答えに


『監視を怠るな。バステノス次期子爵では、姫様をお守り出来ない時があるやもしれん』


首領は、声を低くする。


『彼を信用されてないのですか?』


部下の問いに


『信用の問題ではない。1人で抱えさせるのは酷だ。何の為に賢者レクスドールとベイト・ディインダが我々を遣わしたか忘れるな』


『…了解、首領(ボス)



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