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夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
お姫様となって旅立ちます。
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いつもの部活 1

放課後-


「失礼しました」


キレイな一礼をしてから職員室を出る。


圭子の力を借りつつ、課題を済ませた葵は、はぁっと深い溜息をつく。


だが…


(これから部活だ!)


葵にとっては、部活は学校にくる楽しみの一つだ。


ただ…


『おーほっほっほ!今日こそ一本もらいますわよ!』


毎日、美津子に絡まれるのは、迷惑だが。


(ま、適当にあしらってから、練習しますかね。彼女も弱い訳では無いし、油断は禁物)


そう…北白川家は、葵に勝つ為に、美津子に専属の師範代を用意して、毎日練習をしているという。


それというのも、北白川家の現当主も、葵の父に未だに勝った事がないからだ。


(親子2代で執念だけは、あるんだから)


そこの部分は、感心している。


(おっと、早く行かないと何言われるやら)


と、教室に戻り鞄とリュックを取る。


隣の席にいた圭子が


「後で、クレープ忘れるなよ」


というと


「分かっている。でも…」


「はいはい、小父様には内緒にしておくわよ。買い食いとか禁止だなんて、今時古いんだけどねぇ」


肩をすくめながら圭子が言うと


「まぁ、それがうちですからね」


苦笑しながらリュックを背負う。


「早く行かないと、北白川が騒ぐぞ」


「はいはい」


彼女の名前を出され、少しテンションが落ちる。


かなり、ウザいからだ。


「執念だけは、認めてあげないとね」


茶化すような圭子に


「茶化さないでよ。練習中に絡まれて困っているとこあるんだよ」


深い溜息をついてから


「じゃあ行ってくるわ…」


これから、起る事であろう出来事にウンザリしながら教室を出る。


校舎を出て、武道館に入ると


「あーら、椎名さん。私が怖くて逃げたんではなくて?」


早速、美津子に絡まれた。


「いや、課題のプリント出していただけです。北白川さん…課題出してないって先生ぼやいていたよ」


葵の言葉に、美津子はビクッ!として


「あ…あら…そうだったかしら…わ、私に掛かれば課題なんて、ちょちょいと片付きますからね。明日にでも出そうかしらね」


ダラダラと冷や汗をかきながら、ホホホホと笑って誤魔化す。


(あーまた帰って、家庭教師にでもやらせるつもりだな)


葵だけではなく、そこにいた人間がそう思った。


「そんなどうでもよい事より!勝負ですわよ!」


ビシィっと、葵を指さす。


「…はいはい」


葵はウンザリしながらも


「着替えてきますから、待っていてくださいね」


そう言って、更衣室に入っていく。


自分のロッカーを開けてから、リュックと鞄を中に入れ胴着を取り出す。


手慣れた着替えを済ませてから竹刀を持って


「さて、行きますか」


頬を叩いて気合いを入れてから更衣室を出る。


「いつまで待たせるつもりですの?」


イライラした様子の美津子に


「いや…5分も待たせてない」


そう答えてから


「短気は、集中力を鈍らせますよ」


と、煽ってみる。


「なんですって!…とにかく、勝負ですわよ!部長!審判をしてくださいませ!」


名指しされた部長は、迷惑そうな顔になり


「えー毎日じゃん。私も練習したいんだけどね」


と、不満を漏らす。


「文句は言わない!これは、正当なる闘いなのですから!」


意味の分からない事を主張する美津子に


「はいはい」


3年生である部長は、しぶしぶ従う。


美津子の背の後ろから


『すみません』


と口を動かし、手を合わせる葵。


部長は、手をヒラヒラとして


「さ、試合するから、みんな空けて」


と、声をかける。


毎日の事なので、全員が手慣れたように場所を空けていく。


男子の剣道部員も


「お、いつもの始まるみたいだぞ」


「懲りないね、北白川も」


「どっちが勝つと思う。俺は、いつも通り椎名にかけるけどな」


「いや、勝負にならんだろ。全国大会の猛者だぞ、椎名は。北白川も強いけどさ…」


そこで、キッと殺気に満ちた視線で美津子の睨みが入る。


「うわ!こえ!」


男子部員は、黙ってしまった。


その間、葵は面をつけて神経集中をしていた。


(落ち着いて…いつも通り、いつも通り)


深呼吸をしてから、スッと歩き出す。


試合場の中心部で向かい合う二人。


「いつも通り、勝負は一本勝負!負けた方は、恨みっこなし」


部長の一声に


「当然ですわ!今日こそ、この私の勝ちですから」


「私もありません」


二人の同意を得てから


「それでは…試合開始!」


部長の声に激しく打ち合う竹刀。


打ち合いしながら


(やはり、自前の師範代のお陰か、日々強くはなってるみたいね)


葵は、余裕を持っている。


だが…


「…一本!それまで!」


隙を見て、あっけなく胴に竹刀を打ち込む。


「何でですの!?」


という美津子の叫び声も、いつもの事なので部員は慣れたように練習を再開した。


(そりゃあ、椎名が全国レベルの猛者だからだよ)


と、誰もが思っていたのは、誰にも予想は出来まい。


「もう一度、勝負ですわ!椎名葵!」


ビッシィっと指さす美津子に


「北白川、恨みっこなしの一本勝負のハズでしょうが」


部長が呆れながら言うと


「納得出来ませんわ!私が負けるなんて!」


「いや、負けたんだから、納得しようよ」


と、部長が荒馬をなだめるように言う。


「それより、北白川は上手いんだから、初心者の指導してよ」


そう言って、剣道初心者を指さす。


「え?何で私が?」


「そんなに上手いんだからさ、北白川に習った方が初心者もすぐ腕上がると思うんだけどな-」


と、煽てるように言う。


とりあえず、分けて書きます。

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