ボイテイの街での捜索 2
「そなたの方はどうだった?」
と、リスターが問うと
「似たような人物がいたらしいけど、男だったわ」
「変装している可能性はないのか?」
「店主が、男だと確認したと聞いているわよ、ねぇ?」
そう言って、一緒にいた兵に同意を求める。
「はい…宿の女将がそのような事を申しておりました」
兵は、ヴィヴィアンの言葉を肯定する。
「だいたいギルドカードを持っていたと聞いているから、男で間違いないでしょう。あなたも知っていると思うけど、あれは特殊な魔法で出来ているから偽造は不可能に近いわ」
「しかし…」
「もう一度探してみるわよ」
そう言って探索魔法を展開する。
「防御魔法でも使っているのかしら?それでも波動は残るから…」
そう呟いた。
「副官!あれを!」
そう言って兵が指さした先にフードを被った2人組がいた。
「行くぞ!」
リスターは兵を連れ駆けていく。
(…あれは、あの2人ではないわ。もしかして陽動?)
魔方陣を解除してから、考え込む。
(これは、協力者がいる?いや、こんな短い時間で協力者を作るなんて…不可能だわ。姫は限られた者としか接しないし、カイトは姫の演習以外は姫にべったりだったし…そうなると…)
ヴィヴィアンの頭の中に浮かんだのは、祖父の顔。
(賢者レクスドールなら、それ位は可能…)
普段は、すっとぼけている祖父に対して、内心舌打ちをする。
(…それなら辻褄が合うか。私達の動きが読まれているあたり)
相当な優秀な協力者がいると考えられる。
そして再び戻ってきたリスターに
「ここに姫達はいないかもしれないわ」
そう言う。
「どう言う事だ?」
と問うリスターに
「あのフードの被った連中は、囮の可能性が高いという事よ。そして、姫達には協力者がいる」
ヴィヴィアンは、自分の意見を述べた。
リスターは少し考えてから
「そうだな…それだと辻褄も合う。だが、誰が…」
「…分からないわ。だけど、フィアント公国に忠誠を誓う者達は多くいる。その者達が姫達に協力をしていてもおかしくはないわ」
《賢者レクスドール》の名は出さない。
やはり身内だからだろうか?
「とにかく、その連中を捕まえて背後関係を吐かせよう。我々は、街から出て探索をする」
リスターが次の行動を決めて、兵に命令していく。
「お前にも探索魔法を使ってもらうぞ」
というリスターに
「あまり、使えないわよ。あれ、魔力の消耗激しいんだから。範囲が広ければ広いほどね」
そう言った後、
「今日も何回も使っているから、少しは休憩が欲しいけど。仕方ないわ、報酬の為ですからね」
と、仕方ないとジェスチャーをする。
「分かっているならいい」
リスターは、兵に
「街の中を洗い出せ。フードを被った連中を捕まえ、背後関係を吐かせる。我々は、すぐに姫達を追う。兵に通達せよ」
と、そこにいた兵に命令を下す。
「はっ!」
返事をした兵は、素早く行動に移る。
「ここで終わると思っていたのに…残念」
「…そなたがあそこで止めなければ、確保出来ていたのかもしれんがな」
と嫌味を返すリスター。
ヴィヴィアンは、肩をすくめ
「まさか協力者がいるなんて思わなかったのよ。そうでないとここで捕まえていたわ。あの2人にそこまでの知恵はありませんからね」
少しは、申し訳ないように言うと
「まぁいい。過ぎてしまったモノは仕方ない。ところで、その協力者だが、賢者レクスドールは考えられないか?」
鋭い口調でヴィヴィアンに問うと
「考えらえるわね。でも、あの陰険祖父さんは、証拠がないと惚けるのがオチよ。今攪乱をしている連中を捕まえて証拠を握ってからじゃないと、それは認めないわね」
そう言ってから
「とりあえず、街を出てから探索魔法を使うわ」
「そうだな」
そうして、2人は大通りから門の方に向かう。
門を出る時に
「街の捜索が終了するまで、街への出入りは制限しろ。食料等に関しては、1つ1つ中をよく改めてから通せ。だが、人間は通すな」
リスターは、門番に命令してからヴィヴィアンに
「すぐに魔法を使え、もしかしたら引っ掛かるやもしれん」
そう言うと、
「はいはい」
返事をしてから、探索魔法の魔法陣を展開する。
(引っ掛からないか…波動すら感じない…でもこれ以上範囲を広げるのは無理。相当遠くに逃げてしまったのかしら。もしかして…馬?いえ、それはないわね)
この短期間で早馬を用意するなんぞ未来予測がない限り無理だ。
「見つからないわね。波動すら感じない。範囲が違うのかしら」
そう言ってから
今度は街の北側に範囲を変更する。
(波動は…あった!まだ新しい。これなら…)
魔法陣を解除してから
「街の北側を捜索しましょう」
「見つけたのか?」
「いえ、その痕跡を見つけただけよ。そんなに遠くには行ってないハズだから、馬ならすぐに追いつけるかもしれない」
「わかった。では、兵を割こう」
そう言ってから、そこにいた兵に街の北側の捜索を命じる。
(姫が魔法を使っていない…あの姫が…やはり確実にあの方の言う通りになっているみたいね)
ヴィヴィアンは、面白くなってきたとリスターに分からない様に笑みを浮かべた。
帝国の兵が2人を見つける事は出来なかった。
…その代わり、盗賊団との戦闘はいくつかあったらしいが…




