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夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
旅立ち
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ボイテイの街での捜索

門の閉鎖が終了すると、もう一度探索魔法を使ってみる。


波動の残像がいくつかの場所に残っている。


(いろいろとウロウロしていたみたいね。手配書が回っているはずなのに…ギルド会館?ギルドに登録したというの?…でも薄いわ…諦めたのかしら…でもまずは…)


と、探索魔法を解除してから


「そこの宿、行ってみましょう」


そう言って、1つの宿を指さした。


昨日、葵達が泊まった宿である。


「探索に引っ掛かったのか?」


リスターの問いに、首を横に振り


「残像のようなモノを感じただけよ」


そう答えると同時に


「バレンタ副指令!街の大通りにフードを被った怪しい男女がいるとの報告が…」


兵がリスターに報告してくる。


「わかった。そちらに向かう。ヴィヴィアン、お前は宿を調べろ。お前、一緒に行け」


別の兵に命令を下してから、リスターはその兵と共に消えていった。


(だから、そっち方面に波動は感じてないのだけど…)


内心ツッコミを入れながらも、宿に入って行く。


「いらっしゃい!お客さん、泊まりかい?」


愛想よく言う女将だったが、ビルド帝国の兵の姿を見て表情が変わる。


「ビルガ帝国の人かい」


そこで納得したように


「ええ。手配書が回っていると思うけど、その2人がここに宿泊してないか確認をしたくてね」


ヴィヴィアンがにこやかに言うと


「そんな人物いたら、すぐに通報してますよ」


女将は、ぶっきらぼうに答えた。


ヴィヴィアンは、付いて来ている兵に


「一応、宿帳を調べて。私は、話を聞いてくるわ」


「え…おい…」


困惑する兵に


「後で、きちんとバレンタ副官に報告するから」


そう言ってから、食堂の方に足を運んだ。


兵は仕方なく


「宿帳を改めさせてもらう」


と女将に言った。


女将はムッとしながらも


「…どうぞ」


と、宿帳を出した。


ヴィヴィアンは、食堂に行き、朝食を取っている冒険者たちに


「ねぇ、手配書の人物、見なかったかしら?」


と、たずねる。


冒険者たちは、顔を顰めて


「あんた、ビルガ帝国の人かい?」


「…今はね」


ヴィヴィアンが答えると


「ああ、噂に聞いた裏切り者か」


冒険者たちは嫌悪感を露わにする。


それにも慣れているヴィヴィアンは


「で、手配書の男女を見なかった?」


と、もう一度訪ねる。


「…姫様に似た奴がいたが、男だったぜ」


冒険者は答える。


「男?変装しているのではなくて?」


ヴィヴィアンが眉を顰めるが


「男だよ。ギルドカードがあったからな。あんたも知っていると思うが、あれは虚偽の情報は登録出来ねぇ。シンフォニアがそれを許さないからな。そのギルドカードが男で登録されていた。間違いなく奴は男さ。よく女に間違えられるって言っていたけどよ」


冒険者の答えに、一応は納得する。


ギルドに登録するには、シンフォニアの加護があるというクリスタルで登録を行わないとならない。


そしてそれは、虚偽の経歴や名前も犯罪歴も暴いてしまうのだ。


(なるほど…ギルドのクリスタルが《男》だと証明している訳ね)


そう言ってから


「じゃあ、誰か連れがいなかった?」


そう問うと、冒険者は


「いたけど、髪の色が違ったし、長かったぜ」


ぶっきらぼうに答えた。


「髪の色?」


「ああ、手配書の男は黒だが、そいつは茶色の髪をしていた。髪型も違っていたしな」


そう答えた後に、ヴィヴィアンは、少し考える。


(…少年に、茶髪の男ねぇ)


そして懐から銀貨を出して


「ありがと」


と、チップを渡そうとするが


「帝国に施してもらうほど、落ちぶれちゃいねえよ」


冒険者は、それを受け取らなかった。


「あらま」


そう言ってから、ヴィヴィアンは、受付に戻る。


「何か怪しい人物は見つかった?」


ヴィヴィアンの問いに


「ああ、この2人だが…」


そう言って宿帳を指さす。


アオイ・シイナ、デュランと書いてある宿帳を見て


「この2人は?まだ宿にいるの?」


女将に尋ねると


「…ギルド会館に向かったよ。装備が古すぎて苦労するから新しい装備を買う為に依頼を受けるって言っていたね」


不機嫌そうに女将が答える。


「そう…」


そう言って、宿帳の字を見る。


明らかに姫の字ではない。


「姫は、もうちょっとキレイな字だわね。こんな丸っこい字ではないわ」


ヴィヴィアンの言葉に女将は


「その子は、男だよ。うちの旦那が確認している」


ぶっきらぼうに言う。


「確認しているのね」


呟いてから


(確認出来ているなら、男で間違いないけど…このアオイって子、覚えておいた方がいいわね)


そう言ってから兵に


「じゃ、これ以上長居したら怖いから行きましょう」


と言って、宿を後にしようとする。


『裏切り者』


小さく誰かが忌々しく呟いているのが聞こえた。


ヴィヴィアンは、それにはもう慣れている。


城の中でも、今やヴィヴィアンは、裏切り者として城に仕える者達から冷遇されている。


(…実際、裏切っているから、こういう扱いは仕方ないけど、さすがに疲れるわね)


慣れているとは、やはりいい気分ではないのだ。


宿を出てから、すぐにリスターと合流を図る。


探索魔法を使い、彼の位置を特定してそこに向かった。


大通りにいたリスターに


「捕まえられた?」


と問うと。リスターは首を横に振り


「フードを被った2人組を見つける事すら出来なかった」


悔しそうに答えた。


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