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夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
旅立ち
32/141

フィアント公国の城にて 2

「賢者レクスドールの小屋にはいなかったですわ。もう逃がした後だったのでしょう」


「…わざと逃がすまで待っていた訳ではないだろうな?」


キートン王子が疑いの言葉を口にする。


「もう疑われるのは慣れたけど…それはないわ。ちゃんと真っ直ぐ小屋に向かったのは、そこの副官殿が証明してくれます」


そう言ってリスターを見る。


「リスター、どうだ?」


キートン王子の問いに


「認めるのは癪ではありますが、ヴィヴィアンは真っ直ぐ小屋に向かっていました。途中何度も道を間違った方向に誘導されそうになりましたが、その度にヴィヴィアンの道案内によって早く小屋に到着出来たと思われます」


リスターの報告に


「そうか…」


と答えてから


「それで、賢者レクスドールはどうした?連れては来てないようだが?」


「賢者レクスドールは、シンフォニアの言葉にしか従わない…そうです」


「ほう…それで、おめおめと戻ってきたのか?」


「いえ、ですが、殿下がシンフォニアに認められたら、殿下に使える事を約束させました」


リスターの報告に、キートン王子は背凭れに凭れ掛かり


「私が、シンフォニアに選ばれる…ねぇ」


「殿下ならば可能かと」


リスターを言葉に、フッと笑い


「まぁ、姫を連れ戻せば、シンフォニアに認めさせる事は可能やもしれんな」


そう言ってから


「ヴィヴィアン、探索魔法は使ったのか?」


ヴィヴィアンを見据えて聞くと


「あの森で探索は無理です。魔法が阻害されておりますから。森を出てすぐに探索魔法を使いましたが、姫の魔法の波動は掴めませんでした」


「姫が魔法を使ってないという事か?」


「…いえ、魔法がないと、あの姫は生き延びる事は出来ないでしょう。必ず魔法を使うはずです」


「そうか。近くにはいなかったという事だな。そこで聞きたい。姫はどこにいると思われる?」


キートン王子の問いに、ヴィヴィアンは、パっと魔法で地図を広げる。


フィアント公国の部分を拡大してから


「まずは、恐らくどこかの街等で補給をするかと思われます。賢者の森の四方には、それぞれ街があります。東にコルダ、西にゲルム、北にボイテイ、南にスルノイ。このいずれかの街で補給をするでしょう」


「では、この4つの街のいずれかに姫がいるという事だな?」


「3つです」


「3つ?」


「コルダの街は、この首都の近くです。私の探索魔法の範囲ですので、それに引っ掛からなかったので除外してもよいでしょう。…殿下が私を信用していただけるのであれば…の話ですが」


沈黙がその場を覆った。


それを破ったのはキートン王子。


「とりあえず、そなたを信じよう。で?姫はこの3つのどこにいると思うか?」


そう聞くと、ヴィヴィアンは、森の北の方を指さして


「ボイテイが一番かと」


「なぜ?」


「単純な理由です。この城から一番遠いから」


そう言ってから、地図に手を翳す。


地図に城が立体的に現れた。


「ここが首都フィニスです。そして…」


地図に4つの点が表示される。


「これが、それぞれの街の位置。位置的に一番遠いのがボイテイの街になります。もし、賢者レクスドールが彼らを逃がしたのであれば、一番遠い場所にするのが自然でしょう」


キートン王子は、地図をジッと見てから


「リスターどう思う?」


と、リスターに意見を求めた。


「…この娘の考えに賛同するのは癪ですが、私も似たような考えです。一番遠い街で装備等を整えてから、行動するかと思われます」


その答えに、フーっと息を吐いたキートン王子は


「なるほど…行動か。協力者の話では、封印を解くためにはアイテムが必要だと聞いている。それを取りに行くのかもしれないな」


と言ってから、立ち上がり


「急ぎ、ボイテイの街に出立せよ!」


と2人に命令をする。


「はっ!」


2人は返事してから立ち上がる。


踵を返して、その場から去ろうとしたが、ヴィヴィアンがふと足を止めた。


「キートン王子、1つお聞きしてもよろしいでしょうか?」


振り向いて聞く。


「構わん」


キートン王子が返事をすると


「その協力者とは一体どなたなのです?」


ヴィヴィアンの問いに


「おい!お前!」


リスターが制しようとするが、キートン王子は、それを手で制して


「構わん。疑問に思うのが当たり前だ」


「では…」


「それは答えられない」


切り捨てるように言う。


「答えられない?」


「そなたは、まだ信用に値しない。それが理由だ」


キートン王子の言葉に


「それが当然ですわね」


ヴィヴィアンはそう言ってから


「では、姫を連れ戻してきて、信用を得る事にいたしますわ」


そう言ってから王の間から出ていく。


「…リスター」


キートン王子がリスターに声をかける。


「分かっております。あやつの監視は、怠りません」


「分かっているならよい」


「失礼いたします」


一礼してからリスターは、王の間を後にした。


「さて…姫は、どこにいるのやら」


キートン王子は呟いた


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