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夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
旅立ち
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買い物を終えて

「こちらに両替とかする施設はありますか?」


とカイトに聞く。


「リョウガエ?なんだ?」


「いえ、デュランさんの銀貨を崩すか明日また依頼を受けて報酬を得る以外に、食料を買う道がないから、とりあえず前者の方を確かめたくて」


葵の問いにカイトは、周囲を見渡してから


「銀貨を銅貨に変えるという事か…それならば、あそこだな」


そう言って指さした建物には《金品交換所》と書いてある。


(こちらには、《両替》という言葉はないのね)


レイラ姫と自分の知識がごちゃ混ぜになっているせいなのか、その事に気付かなかった。


(言葉には気を付けないとね。…でも田舎から出てきた設定にしているし、何とか誤魔化せるかもしれないかも)


結構楽天的である。


「銀貨を交換するのはいいが、やはり疑われてないか?」


心配そうに言うカイトに


「…ですよね」


やはり明日、ギルドで依頼をクリアして報酬を得るしかないようだ。


「とりあえず、傷薬だけ買ってから宿に戻りましょう。明日に備えて休まないと」


そう言ってから、傷薬の露店を探す。


この街では、傷薬が不足しているらしく、これには苦労した。


住民の話を聞いてみたら、原因は分からないが魔物が活性化しているらしく、怪我人が増えているそうだ。


ただでさえ、不足しているのにビルガ帝国による徴収でさらに数を減らしている。


そのせいか、傷薬は高く、5cmの貝に入って1個で銅貨3枚もした。


「3個しか買えなかったですね」


そう言って残った銅貨一枚を見る。


「そうだな」


「明日は出来るだけ高い報酬の依頼を受けてみるしかないですね」


「いざという時は、魔法で…と、これはダメだな。ヴィヴィアンに気付かれる」


その言葉に頷く葵。


「宿に戻りましょう。夕食も出来ている頃でしょうし」


そう言ってから二人は宿に戻る。


2人が帰ると女将が


「お客さん、おかえり。ちょうど、夕食が出来ているよ」


にこやかに2人を迎える。


「ありがとう」


低い声を作って女将に答えると


「あっちが食事場だよ」


と、指さした先にはテーブルが多く並んだ部屋が見える。


「おう、お客さん!タイミングいいね!出来立てだよ」


コックらしき男性が厨房から出てくる。


その手には、料理が乗っている。


「おっちゃん!料理早く!」


待っているらしき客が待てないらしく、急かす様に言うと


「落ち着けよ。今、持って行くからよ」


そう言って男性は、その客の前に料理を置く。


そこに


「あんたぁ、新しいお客さんの料理を出しておくれよ」


女将の声がする。


どうやら、男性は女将の旦那さんらしい。


という事は店主という訳だ。


(夫婦で宿を切り盛りしている訳ね。どこの世界でもあるものね。こういうのは)


そう思いながら席に着く。


「ちょっと待ってな。すぐに持ってくるからよ」


店主は、そう言って厨房に入って行った。


少しすると、再び料理を手に出てくる。


「お待ち!」


そう言って、二人の前に料理が並ぶ。


2人の前に並んだのは、野菜スープと何かの肉と野菜の炒め物にパンである。


「お、飲み物忘れていたな。…お前ら子供みたいだから酒はダメだな。水でも持ってくるよ」


店主は、そう言ってからまた厨房に入る。


だが、すぐに木で出来たジョッキに水を入れて持ってきた。


「お待ち!」


そう言ってからジョッキをテーブルに置く。


「では、食べようか」


葵が言うと


「ああ」


ボロを出さないように短い返事をするカイト。


「兄ちゃん、無愛想だな」


店主がニカっと笑いながら言うと


「こいつ、口下手なんですよ」


葵は苦笑しながら言う。


「いるよな。愛想悪いヤツは」


そう言って、バンバンとカイトを叩く。


「ちったぁ愛想よくしてねぇと女に好かれねぇぞ」


豪快に笑いながら言う。


「…ああ」


カイトは短く答える。


しゃべり方一つで正体が疑われる可能性があるので、慎重だ。


「愛想ねぇな」


店主は言ってから


「ま、いいや、俺の料理食ってくれや」


と、手を振りながら厨房に戻っていく。


ホッと肩を撫でおろす。


「とにかくいただこう」


そう言ってから、スプーンを手に取りスープを口にする。


(お、野菜がいい感じの食感。出汁には、動物の骨でも使っているのかしら?体があったまる感じ)


次に手を出したのは肉野菜炒め。


何の肉か分からないから、ちょっとビクビクだったが、味は美味い。


(野菜がシャキシャキしているし、肉の弾力もいい。スパイスが効いていてなかなか美味い)


次はパンだ。


少し硬いパンであるが、スープと共に口にするといい感じになる。


(この宿は当たりだね)


2人は黙って食事を進めた。


黙っているのは、ボロを出さない為だったが…


「必死に食べるなんぞ、相当腹減っていたんだな」


周囲の客が、勝手に勘違いしてくれた。


「…まぁな。こんな美味いもんは初めてだ」


葵が言うと


「だろう?ここの店主の料理は絶品だぜ。兄ちゃん達は冒険者かい?」


客の一人から聞かれる。


「ああ。田舎の方から出てきたんだ。一旗揚げたくてな」


葵が答えると


「まぁ、冒険者は腕が良ければ儲かるからな。…でもな」


そこで、その客の表情が暗くなる。


「どうした?」


葵が問うと


「この国は、もうダメかもしれねぇ…何でかシンフォニアの加護が働かなくなっちまって、ビルガの連中に好き放題されてる。王族や城の連中は何をしてんだか!」


そう言ってその客は怒りからか、バンっとテーブルを叩いた。


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