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夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
旅立ち
22/141

初めての魔物退治

「剣でのみ戦うと?」


カイトの問いに


「ええ。今は、少しでも剣の腕を磨かないと…」


答える葵をジッと見てから


「…いざという時は、私が倒そう。私から離れるな」


そう言うと


「すみません。でも出来るだけ、お手を煩わせないようにします」


「あと、討伐前に少し剣の稽古をしよう」


「はい」


そう言ってから、森の奥へと入っていく。


「ここなら大丈夫そうだ」


安全そうな場所を見つけてから


「まずは、構えからだな」


そう言ってから


「お前の動きには、隙が多すぎる。構えてみろ」


カイトに言われて、剣を持って構える葵に


「それではダメだ」


と、姿勢などを直させる。


「この姿勢をまず保つようにしろ。これなら、大概の攻撃に対応できる。あと剣だが、今は両手で構わない。とりあえず前に出て切りつけ、素早く次の動きに移る。これを意識しろ」


「はい」


指導を受けながら


「とりあえず私の動きを真似して動きをマスターしろ」


そう言うカイトに


「分かりました」


と頷く葵。


カイトは、剣を抜き、それを振るう。


隙のない動き。


キレイな剣の捌き方。


どれも一流の剣士のモノだ。


少しの間見惚れていたが


(いけない。見惚れている場合じゃない。この動きをマスターしないと)


そう言って、カイトの真似をして動く。


それを見ていたカイトは


(…動きは、まだ稚拙だが飲み込みは、やはり早いな)


感心しながらも、内心は複雑だ。


目の前にいるのは、レイラ姫なのにレイラ姫ではない。


それが現実だと頭では分かってはいるが、感情等はついてはいかない。


そこに何やら気配がした。


「どうやら、イーゲンドックが来たようだ。アオイ、構えろ。とりあえず1匹ずつ確実に仕留めろ。あと、牙は証明部位になるから気をつけるように」


そう言って剣を構える。


葵も緊張しながら剣を構えた。


《グゴッワッ!》


声を発して、イーゲンドックが襲ってきた。


討伐は5匹だが7匹いるようだ。


少し動揺する葵に


「動じるな!1匹ずつ仕留める事だけに集中しろ!」


カイトが言うと、頷き襲ってきたイーゲンドックの攻撃を躱して胴に一撃を入れる。


肉を断つ音。


ギュッと剣を握りしめて、次のイーゲンドックの攻撃を躱す。


今度は首を落とした。


その間にカイトは5匹のイーゲンドックにとどめを刺していた。


ホッと安堵する葵に


「まだ動きが甘いな。イーゲンドックだから躱せたが、これより強い魔物となると、危ない」


厳しい言葉をかけるカイトに


「…そうですね。厳しかったと思います」


素直にそれを認めた。


(こういう所は、姫に似ているな)


カイトは、そう思っていた。


素直で優しく、いつも微笑みの絶えなかったレイラ姫。


あの幸せそうな笑顔を思い出すと胸が痛む。


自分が油断をしなければ、姫を危険に晒す事も、ましてや禁忌魔法が発動する事もなく、別人になる事もなかったのだ。


それは後悔として、カイトの胸に突き刺さっていた。


それは、葵にも伝わっている。


カイトの後悔に、葵もまた胸を締め付けられていた。


それは、自分の中にいるかもしれないレイラ姫かもしれない。


だが、今はそれを気にしている場合ではない。


先に進まないといけないのだ。


元の世界に戻る為の手掛かりは、シンフォニアにしか分からない。


ならば、強くなり、封印を解くしかないのだ。


だが、怖い気持ちもある。


不安もある。


いきなり異世界に飛ばされた上に、旅を強いられているのだから、仕方ないのかもしれない。


葵は、自身の不安を振り払うように首を振り


「…証明部位の牙を取りましょうか」


とカイトに言う。


「そうだな。やり方は…分からないか」


そう言ってから、ナイフを取り出し、イーゲンドックから牙を切り取る。


「牙の根元は硬い。その少し上の部分から切り取るのがいいだろう」


そう言ってから、次の作業に移る。


葵も短剣を取り出して牙を切り取りだした。


「2匹余分ですけど…」


葵が、疑問を口に出す。


「それは、ギルドで買い取ってくれるから安心しろ」


カイトは答えた。


そして、小さめの麻袋を出して


「これに牙を入れておけ。後はギルドに帰って依頼を完了させよう」


そう言ってから、残りの牙を切り取り出した。


葵もそれに続く。


牙を切り取り終わると


「これは…どうしたらいいですか?」


と、イーゲンドックの死体を指さす。


「ほかの魔物の餌になるだろう。この森には肉食が多いからな」


と答えてから


「さ、街に戻るぞ」


と、葵を促す。


「はい」


素直に応じてから、二人は森から街へと向かった。




『意外とやりますね』


『我々の出番はなかったようですね』


『己の力で依頼達成出来ないと、違反になるからな。俺達は手を出さない方がいい』


首領(ボス)、本当にこのままで?』


『そうだ。我々の仕事はあくまで隠密活動だ。陰ながらサポートする』


『なるほど』


『そんな事より、帝国の動きはどうだ?』


『まだこちらにはたどり着いてないみたいです。でも、それも時間の問題かと』


『ヴィヴィアン嬢か?』


『姫が魔法を使わないようにはしているみたいですけど。探索の方法は魔法の波動だけではありませんからね』


『そうか。では引き続き情報を集めろ。危険が迫ったら、何とかして姫達に伝えよう』


『了解。首領(ボス)


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