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夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
旅立ち
20/141

ギルドに登録してみよう

「今は、抑えてください」


葵が小さな声で言うと、カイトはギュッと唇を噛んでから


「…仕方あるまい」


そう言って、握りしめていた拳をほどく。


「それより、ギルドに登録しませんか?」


葵の言葉に、カイトは驚きながら


「アオイ…そんな必要は…金貨なら」


「持ってはいますが、何もせずに使えば、疑われるでしょう?ギルドで報酬を得れば、買い物をやりやすいです」


「だが、時間が…」


「時間は早い方がいいとは限りません。焦りは最大の負けの要因にもなるでしょう。それに私自身も剣の鍛錬などをやらなくてはなりません。魔物相手ならば、遠慮なく練習できるでしょう?」


ギュッと、腰に下げた剣を握りしめる。


それをジッと見ていたカイトは


「冷静だな。もっと焦るかと思った」


素直に感想を述べる。


葵は苦笑してから


「私だって、急ぎたい気持ちはありますよ。ですが、今のままではシンフォニアは認めてくれないだろうし、封印は解けません。…強くならないと。心も体も、そして技を磨かないと」


と、言った。


カイトは、感心しながら


「お前は、強いな。あの方とは違う」


と言う。


《姫》という言葉を使わないのは、周囲に人がいるからであろう。


「強くありませんよ。強くありたいとは思いますし、努力はするべきだと思いますが」


首を横に振りながら言う。


そして、周りを見渡し


「とりあえず、ギルド登録しましょう…場所は…」


と、案内図がないか探す。


そこに


「何かお困りかね」


老婆らしき声がした。


視界を少し下げると、杖を突いた老婆がいた。


「おばあさん、ギルドの場所知らない?あとアイテムとかの店も」


葵は、先ほどと同じく低い声で老婆に尋ねる。


「おやおや、若いのにギルド登録とは感心だね。…ギルドは、この道をまっすぐ行った突き当たりを右に曲がった先さ。アイテムを売っているのは、そこから裏通りに入ったところだね」


感心しながらも答えると


「ありがとう」


葵が言い、お礼を渡そうとするが収納魔法を使えないので渡せるものがない。


「礼はいらんよ。この街を魔物の脅威から守ってくれるなら御の字さ」


そう言ってから、老婆は去って行く。


「助かったな」


「ええ…」


カイトの言葉に頷きながらも、タイミングのよさに少し戸惑っている。


(タイミング…よすぎじゃない?なんか)


少し考えたが、考えても仕方ないので


「ギルド登録に会館に行きましょう」


とカイトを促す。


二人は、ギルド会館へと歩き出した。


それを見守っていた視線には気付かないまま。




その人物は、建物の陰に隠れていた。


そこには先ほどの老婆と若い男がいた。


『ご苦労』


『…ギルド登録など危なくありませんか?』


先ほどの声とは違う若い声。


『あの方にはあの方の考えがあるのであろう。我々は、それに従うのみだ』


『ですが…』


『どうした?何か、不服でもあるか?』


『不服などではありません。ただ、我々が共に行けばあの方の負担を軽く出来るのでは?』


『…それでは、ダメなのだよ。己の力のみで道を開けるようにならないと』


黙っている相手に


『お前の心配する気持ちも分かる。私も同じだからな。だが、これはベイト・ディインダと賢者レクスドールの意思だ。それはシンフォニアの意思でもあるのだろう』


『…そうですね』


『外にいる者や中にいる者にも連絡はしておけ。いくら強くなる為の魔物退治とはいえ、危なくなったら手を貸さぬ訳にはいかないからな』


『了解しました。首領(ボス)


『では行け』


『はい』


話していた者の気配が消えると


『本当に、あの方々の考える事は、我々凡人には思いつかぬよ』


と、小さくつぶやいた




ギルド会館に到着した二人は、まずは受付に向かう。


「すまない。ギルド登録をしたいのだが…」


とカウンター越しに声をかけると


「新規の方ですか?」


受付嬢は、にこやかに言う。


「はい、辺境の村から出てきたばかりなので、よく分からない部分があるが…」


低い声に慣れてきた葵。


「では、説明させていただきます」


受付嬢は、笑顔のまま説明を始める。


ギルドの作りは、Fランクから始まる。


最初は、原料採取や弱い魔物退治から始める。


討伐数・依頼数に応じてランクは上がり、Sランクまで存在する。


ギルドはギルド協会に加盟していれば、どこのギルドでも利用出来る。


ただ、犯罪行為や違法行為があれば、追放されるし二度とギルドには登録出来ない。


「Sランクの冒険者は、稀にしか存在しません。この国ではまずはいませんね。それだけの実力のある方々は、王に仕えていますからね。いてもAクラスが数名ぐらいでしょうか」


そう言ってから


「何か質問は?」


と問いかける。


葵は、素直に


「犯罪行為や違法行為って分かるものなのか?」


そう聞くと、案内状はギルドカードを出して


「このギルドカードには、魔法が付与されております。犯罪や違法行為があれば、真っ白になるのですよ。あと、持ち主以外が持つと白くなります」


そう言って、カードを葵に渡す。


確かに白くなった。


このカードは、受付嬢の物なのだろう。


「私達ギルド協会職員のカードは、身分証のようなモノなので討伐や採取などは出来ません。その理由としては、ギルドカードに登録したら依頼を数か月受けないままでいると、登録が抹消されるからです。依頼失敗が続くと同じように登録が取り消しとなり、二度と登録されなくなります」


受付嬢の説明に、ふと


「では、再登録は出来ないと?それはどうやってわかるのか?」


疑問を口に出す。


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