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夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
旅立ち
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ボイテイの街へ

ボイテイの街に入る前に、葵は収納魔方陣から茶髪のカツラを取り出した。


「デュランさん、とりあえず、これを被って行動してください。手配書くらいは回っているでしょうから、その髪型と色では、いろいろとマズいですし」


そう言って、カイトに差し出す。


それを受け取り


「そうだな。にしても用意がいいな」


カイトが感心していると


「ベイト・ディインダが持たせてくれたのですよ。本当に至れり尽くせりですね」


葵はそう言ってから、見えてきた城壁を指さし


「あれが、ボイテイの街ですか?」


とカイトに聞く。


カイトは頷いて


「そうだ。だがフィアント公国は守護樹シンフォニアからの守りがある。魔物討伐などがあるから、ある程度のアイテムは揃っているとは思うが、期待しない方がいいぞ」


そう釘を刺すように言う。


「なるほど、あまり期待出来ないのですね。ならば、せめて国内の情報でも入手できればいいですけどね」


そう言いながら門に近づく。


「…やはりか」


門の方を見ながらカイトが言う。


門には、ビルガ帝国の兵らしき者が検閲をしていた。


「ここにも、もうビルガの手が回っている、という事ですな。中に入るには身分証なり何か必要になるが…」


困ったように言うと


「身分証というのは、何か形式が決まっているのですか?」


と問う。


カイトは懐から自分の身分証を取り出す。


「門を使う必要のある人間は、だいたいこれを持っている」


そう答えると、葵は成形の魔方陣を展開させて、身分証を作り出した。


形式は、カイトが持っていたのと似ているが、使っている用紙などは少し劣る材質にしてある。


「これで誤魔化せるかもしれませんね」


そう言って作り出した身分証を差し出す。


「こんな事も出来るのか…」


「出来るみたいですね。さ、カツラを被ってください。イチかバチか行ってみましょう」


と言い、偽造した身分証を懐になおし


「くれぐれも本物出さないでくださいね」


そう言うと


「そんな真似はせん」


ムッとしたようにカイトが言い、カツラを被る。


長髪が邪魔そうにしていたので、麻製の紐を葵が渡すと、それで後ろに髪を束ねた。


「では、行くか」


カイトが言うと、二人は門の方へ歩き出した。


門には、そんなに長くはないが行列が出来ていた。


身分証のない人間は、中に入れないようだ。


(身分証を作っておいてよかった)


と、安心していると葵達の順番になる。


門番の兵は、二人をジッと見つめ


「お前ら…どこかで…」


と、疑いの目を向ける。


「お前、男か?」


と葵に問い質すように聞くと


「…俺が、女みたいな顔しているから、そんな事を言われるのか」


と、出来るだけ低い声で不機嫌そうに言う。


門番は、フンっと笑い


「出身は、ゲノベ村か…ここでの目的は?」


と、街に入る理由を尋ねる。


「仕事を探しに。田舎だと、畑仕事しかないからな。ここで一旗揚げたいってところかな?」


葵が答えると


「ふん、そのボロな装備でか?…まぁ入れ。そっちの男も連れか?」


そう言って顎で、カイトを指す。


「ああ、旅の途中で出会った奴だ。これでも無口でね。しゃべるのは俺の仕事さ」


そう言って、お手上げのポーズを取る。


「…何処かで見たような顔だと思うんだが」


と、疑惑の目を向けてくる。


背中に変な汗が流れているが、葵はそれを見せないようにして


「何だそれ?俺達、何もしてませんが。なぁ?」


そう言ってカイトを見る。


カイトは黙って頷いた。


門番は、しばらく二人を見ていたが


「早くしてくれる?」


と後ろの方から早く入りたいらしい人物の声がした。


門番は慌てて


「まぁいい。中に入れ。くれぐれも言っておくが、この国はビルガ帝国の管理下に置かれている。下手な真似はするなよ」


そう釘を刺してから、身分証を二人に返した。


門をくぐり、中に入ってからしばらく歩いてから、二人はホッと肩を撫でおろす。


「まずは、第一段階は突破出来ましたね」


葵が言うと


「とりあえず、最初の峠は越したな。では、アイテムの買い物に行くか」


カイトがアイテム屋を探す為に周囲を見渡していると、街の掲示板らしきモノを発見する。


近寄ると、やはり二人は手配されていたようだった。


もっとも髪形などが違うので、すぐに二人がバレるという事はないだろうが…


まさか、一国の姫が髪を切り少年兵の服装をしているなんて発想はないのであろう。


カイトも黒髪のままの手配書だし、前髪で目が隠れているから分かりづらいのはある。


「この国が侵攻されるなんてね…」


近くで住民が話をしている。


「シンフォニアは、私達を守ってくださらないのだろうかね」


「いや、ビルガ帝国の兵に襲われそうになった者達が返り討ちにあったときいたよ。その時、光が発したと。シンフォニアは民を見捨てていないさ」


「じゃあ、王族が何かやらかしたのかね」


「シンフォニアから見放される何かをやらかしたんだろうよ、まったく迷惑な話さ」


「シンフォニアは、ビルガ帝国が制し、姫はビルガ帝国の王子との婚姻を承諾したが婚約者と騙る者に誘拐された…ね。にわかに信じられないが、シンフォニアが沈黙をしていると事は事実なのかね」


「さてね、私ら一般民にはわからんよ」


「ああ、迷惑な話だよ」


住民の声に、怒りが爆発しそうになるカイトを葵は制する。


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