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夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
ミヒデ村
125/132

ミヒデ村で葵は戸惑い続ける

葵が驚くとカイトの方でも驚いてしまう。


「な、なんだ?」


カイトが目を丸くしていると


「す、すみません。考え事をしてました」


葵は素直に謝る。


「いや、自分もいきなり話しかけて悪かった」


カイトが謝罪の言葉を出す。


「いえ、ちょっとぼーっと考え事をしていたのが悪いんです。常に周りを気にしていないとならない状況なのに」


葵が反省の言葉を出す。


「何か悩んでいるのか?」


カイトの問いに


「…大した事ではないのですが、今の戦闘能力とかバッカがいる事での恩恵を受ける事と危険な部分でしょうか」


葵は、そこは素直に答える。


カイトは眉間に皺を寄せてから


「そうだな。奴が旅に同行する事は、危険ではあるが助かる部分はある」


認めたくないのを隠す気配はない。


葵は苦笑してから


「戦闘力のない私が言っても説得力ないですが、彼がいる事で戦闘が楽になるのは事実です。ですが、いろいろと都合が悪いという部分があります」


そう言ってから、顔を引き締めて


「ですが、絶対に私達がビルガ帝国によって指名手配をされている2人だと気付かれないようにしないといけません。気付かれてしまえば、ビルガ帝国に知らせるかもしれません。彼は盗賊…お金になる話には飛びつくかもしれません。今まで旅を共にしてきて、そういう部分は見受けられませんでしたが、実際にどうなのかはわかりませんからね」


と言うと、カイトも頷き


「ヤツに警戒する考えには同意だ。何を考えているか分からない。自分達と旅を共にしているのも本当の事を言っているのか分からない。分からない事だらけだからな。警戒をしていて損はないだろう」


その言葉に葵は頷いた。


カイトは続けて


「それはそれとして、アオイ、お前はもう一度休むといい」


と葵に言う。


「へ?」


葵が驚いていると


「まだ体力が回復していないだろう」


カイトの言葉に


「え…と…」


葵が言葉に詰まっていると


「元々が戦闘向けの体力はついていない。レイラ姫は、そういう鍛錬はされていなかった。中身は葵として体はレイラ姫の物だ。体力がないのに旅を続けていた。それは自分も感心している。だから、休める時にはきちんと休んで体力をつける事を考えろ」


カイトにそう言われ


「分かり…ました…」


葵は、素直にその言葉に従う。


確かに体が思うようについていかないのは分かっていた。


レイラ姫は戦闘をする必要がない。


姫君だからだ。


だから、カイトの言う通り、体力をつける鍛錬はしていない。


正直に言うと、戦闘についていけなそうになって、何度もカイトやバッカが合流してからはバッカにもだが、彼等に救われてきた部分も否めない。


筋力や体力をつける為に体を動かしているが、実際に効果が出るまでは時間がかかるだろうと思われる。


とにかく今は、休んで体力を作る事が大事だ。


葵は、布団に横になりながら


「何かあったら遠慮なく起こしてください」


とだけ言う。


「無論だ」


短くカイトが答えると、葵は安心して目を閉じる。


(今更、眠れと言われても眠れる訳がないけど、カイトさんの言う通りだと思うし、従っておこう)


そんな事を考えながら


(それにしても、本当にシンフォニアという存在は、偉大と言うかすごい存在だと言う事がわかるわ。イラガやネーゼの事だけでなく、この村にある歪みに対しても解決するように仕向けて、見事に解決に向かわせた)


その偉大な力に感心しながら


(これから私達が辿るであろう道や困難も、シンフォニアには分かっているのかしら?もし、そうだとするなら、私が元の世界に戻る事を望んでいる事もカイトさんがレイラ姫を取り戻そうとしている事も分かっているはず)


考えを巡らせる。


(私達は、私達の願いの為に旅を続けている…その願いすらシンフォニアは行きつく先が分かっている…そして、どういう風に辿り着くのかも…まるでシンフォニアの掌で踊らされているようね)


そう思う。


シンフォニアの偉大さは改めて思い知らされただけではない。


未来すら見通し、葵達だけではなくルスレニクスに住むすべての者達を導こうとしている。


それには戦慄すら覚える。


ただ、葵は思う。


(もし、シンフォニアがこの旅が辿り着く先が分かっていると言うなら…教えてほしい。私達の願いが叶うのか、これからどうなるかを…そして)


葵は、手をギュッと握りしめて


(今、私の中にある不思議な感情の正体を…教えてほしい)


自分の中に生まれてきている感情を何というのか…


こんなの体験した事がない。


表現が難しい。


何と称していいのか分からない。


そんな不思議な感情。


そんな感情に戸惑いながらも、決して悪い気分ではない。


だが、その正体不明の感情は葵を不安にする。


その正体が分かってしまったら、何かが崩れて失ってしまうような…


終わってしまうような…


そんな危なげな感情を抱いている今の自分を不思議だと思えてしまう。


今まで、そのような感情を抱く事はなかったから。


シンフォニアは分かっているのだろうか?


…おそらく分かっているのかもしれない。


その上で葵達に旅を続けさせている。


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