表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
ミヒデ村
122/132

ミヒデ村ー本来の彼

フリューは立ち上がった後


「イーナ姉さん、ありがとう」


そう言った後に


「みんなもすまない。俺の勝手な感情に付き合わせてしまって」


そう言って襲撃に加わった者達に頭を下げる。


「いいのか…?これで?」


1人がフリューに問いかける。


「…ああ、これでいい。俺はこれから、サラガとネーナの代わりにイラガとネーゼを守ろうと思う。俺を庇ったサラガと俺を大事に思ってくれていてネーナの代わりにな。イラガとネーゼからは憎まれていると思う。でも、俺はそうする事で自分のした事を贖罪していくつもりだ」


穏やかな表情で言うフリュー。


「だが、俺達もだが、村の中には、あの2人を認めないていう人間もいるぞ」


厳しい口調で言う言葉に、フリューは


「それは当たり前だ。見えない大きな力は、畏怖の存在になる。だが、ネーナはそれでも、2人が《シンフォニアの祝福》だと信じていた。恐れる事なく、大事に育ててきた。守ってきた。だから、俺はネーナを信じようと思う。だが、それを皆に強要するつもりはない。イラガとネーゼを否定するなら、それでもいいと思う。だが、俺はそんな連中からイラガとネーゼを守るつもりだ。それが俺のサラガとネーナ、それにイラガとネーゼに対する贖罪になるかは分からない。でも、そうしていこうと思う」


静かに告げた。


「お前がそう言うなら、俺達は何も言わない。お前がネーナの想いを信じると言うなら、俺達も一緒に信じてやるよ。な?」


男は、周囲にいる者達に同意を求める。


「まぁ、まだ割り切る事は出来ないが、フリューが信じると言うなら信じてやるよ」


男達は、そう言ってから頷き合う。


「ありがとう、みんな」


フリューはそう言って頭を下げる。


「お前達にも嫌な思いをさせた。すまない」


フリューは葵達にも頭を下げた。


葵とカイトは顔を見合わせてから


「別に構わない。俺達もフリューさんに理由や事情があって、こんな事になったと言うのが分かった。これから、イラガとネーゼを守っていくと言うのなら、俺達も安心だ。フリューさんの懸念通り、あの2人も最初はフリューさんの変化に戸惑うと思う。でも、これは俺の予想だが、ちゃんと受け入れてからやっていけると思う」


葵はそう言うと、カイトが大きく頷いた。


フリューは、安心したように少し笑みを浮かべて


「ありがとう」


とだけ言った。


その表情は、憑き物が落ちたようにスッキリとしている。


フリューという男の本質は、気の優しい男なのだろう。


それが、愛する人の結婚や出産、その後のその人の不遇をその目で見た事で、その本質が大きく歪んだのかもしれない。


(これって、もしかして…)


葵の脳裏に一つの可能性が浮かんだ。


(後で、カイトさんに話してみよう)


葵は、そう思い今、口に出すのを止める事にした。


葵が思ったのは、あくまで可能性の話なのだから。


「じゃあ、夜の更けて来ておる。自分の家に帰るとしようか」


長老の一言で、お開きの合図になる。


「今日は、すまなかった」


フリューを皆に頭を下げた。


「フリュー、みんな気にしてないよ」


イーナがそう言うと、フリューは首を横に振ってから


「イーナ姉さん、でも俺は謝らないといけないんだ」


と、言い


「長老にも手間をかけさせた」


そう言ってから頭を下げる。


長老は、フ…と笑い


「わしの事は気にするな。この村の…ミヒデ村の長老だからな。自分の役目を全うしただけの事。お前さんが気に病む必要はない」


とだけ告げた。


フリューは、苦笑しながら


「いつもだったら、もう寝ている時間だろ?こんな時間まで起きていていいのか?」


そう言ったフリューの問いに


「年寄り扱いするではない。わしはまだまだ若い」


ムッとしながらそう言った長老に


「いや、もう年寄りだろ」


誰かがツッコんだ。


そこで笑いが起こる。


(とりあえず、イラガとネーゼにとって、いい方向になったという事でいいのよね)


葵は、そう思っていると


「夜遅くに、本当にすまなかった」


フリューは、もう一度謝罪の言葉を口にして頭を下げた。


「何度も謝らなくてもいい。俺達は、これからのあの子達にとっていい方向になった、それだけでよかったと思っている」


葵はそう言って、カイトを見て


「デュランもそう思うよな?」


と、カイトに同意を求める。


カイトは頷いて


「あの子達もだが、フリューさん、あんたが溜め込んでいた事を吐き出して、本来のあんたに戻れてよかったと思う」


と、言った。


葵は、大いに同意だ。


「そうだな。フリューさんが本来の自分を取り戻せてよかったと思う」


と言うと


「そうか…ありがとう」


フリューはそう言ってから笑みを浮かべた。


長老が手を、パンっと叩き


「さ、解散じゃ」


と、言うと


「お前達も、ゆっくり休むと言い。夜中にすまなかったな」


そう言ってから、集会所を後にする。


ぞろぞろと他の者達も集会所を後にする。


残された葵達は顔を見合わせて


「いい形になってよかったですね」


葵が言うと


「そうだな」


カイトは同意してから


「さ、お前も休め」


と言った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ