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夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
お姫様となって旅立ちます。
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2人の対立

森の外に転移させられた二人。


まず、二人は装備が調えられている事に驚く。


カイトは、愛用の甲冑を。


レイラ-葵は、ドレスと魔法のローブ。


武器も手にしていた。


「ここは…」


葵は、手を翳してから地図を出す。


地図に現在地を表す点が表示される。


「ベイトの森の北西に出たようですね」


地図を読み解きながら言う。


カイトは驚いて


「地図が読めるのか?」


と問うと


「はい…レイラ姫の記憶や知識がありますから」


葵は、地図を見ながら答える。


(ここからだと、北の解印石が1番近い)


北に記された緑の点と現在地を交互に見ていると


「姫の…記憶や知識…本当に姫は、消えてしまわれたのだな…」


カイトは、悔しそうに顔を歪ませている。


「そうですね…」


葵は、答えながら自分の中にあるであろう知識を巡らせる。


(まずは、装備やアイテムを揃えないと…)


そう思い、自分の中にある収納魔法を手の上に展開。


感覚を研ぎ澄まし、中身を確認する。


(回復薬…傷薬…原料の薬草…魔法の杖…食料は無いか…後は金貨だけど、これはフィアント公国の金貨だから、他の国では使えないし、金貨を使えば足が出る)


自分の中にある知識と、自分が持つ解析力を駆使して、これからの行動を考える。


「…冷静なのだな…姫を消しておいて…」


苦々しい口調でカイトがトゲのある言葉を言うと、葵は息をついて


「恋人が消えてショックなのは分かりますが、私だってそちら側の…そうその姫とシンフォニアの都合で、こっちの世界に転移させられたんですがね」


と、強い口調で返す。


《売られたケンカは買う》


これは、葵の主義。


眉を寄せて不機嫌そうになるカイトに


「私だって、元の世界でやりたい事あったんですよ。家族もいたし、友達もいた。仲間もいました。それが一瞬でなくなったんです。大切なモノを失ったのは、あなただけじゃない」


彼を見据えながら言う葵に


「姫の姿で、姫の声で、そのような事を言うな!姫は、そのような冷たい事は口に出さない!」


カイトが叫ぶと、葵はもう一度息をついてから


「確かに…レイラ姫ならば、言わないでしょうね。でも、私はレイラ姫ではありません。いい加減理解してください」


カイトは、剣を抜いて


「言わせておけば!姫の体を乗っ取ったくせに!偉そうな事を言うな!」


剣を葵に向ける。


だが、見た目はレイラ姫なのだ。


躊躇いが見える。


「切りたければ、どうぞご自由に。私とて、ここに好きでいる訳でも、ましてやレイラ姫の体を乗っ取ったつもりはありません」


葵は、カイトを見据えながら言う。


その気迫に押される。


「…お前に分かるか?姫を失った私の悲しみが…姫は私を庇い、毒矢に射られた。私の責任だ。その痛みが分かるか?」


カイトの悲痛の叫びに


「分かりませんね」


キッパリと言い捨てる葵。


「逆に聞きますが、いきなり『お前の魂は消滅しかけていた』とか言われ、勝手にレイラ姫と魂を融合されるとか、挙げ句のはてにルスレニクスを救う為に旅に出よ、強くなりシンフォニアの元に戻れ、と言われた私の気持ちは?分かりますか?」


逆にカイトに問う。


カイトは、困惑顔を浮かべていると


「私には、成すべき事があります。私が元の世界に戻る為の方法は、シンフォニアにしか答えを知らない。それに、レイラ姫からこのルスレニクスの救済を託されました。だから、私は強くなり、成すべき事を成し、私とレイラ姫の願いを叶えないとならない」


そう言ってから、葵はカイトの前に指を二つ立てて


「あなたには、二つ選択があります。一つは、ここで私を別れ、自分の出来る方法でビルガ帝国からフィアント公国を解放する方法を探す事。そして、もう一つは、私と旅をして、シンフォニアに辿り着く解印石を探す事です」


と、言い


「あなたは、レイラ姫の恋人。いくらベイト・ディインダからの言葉からとはいえ、私と旅をするのは抵抗があるでしょう?だから、あなたは、ここで私と別れて自分が納得できる旅をする権利があります。私と旅をする事は、義務ではありません」


葵の言葉に


(この者は、何を言っているのだ?一人で旅をすると言うのか?姫は、16年首都から出た事がない。何も知らない無知の状態で、一人で旅をしようなんて…)


カイトは、困惑していた。


葵とて、一人旅がしたい訳では無い。


レイラ姫は、城から出た事が無い世間知らず。


加えて自分は、この世界に来たばかりの異邦者。


一人で旅が出来るはずも無い。


だが、自分に対して敵意を向けている人間と旅が出来るほど、人間は出来てない。


そういう所は、子供なのだろうが…


「お前は、一人でも平気だというのか?姫の知識は、首都フォニスのみ。そこから外に出た事はあるが、あくまで騎士達に守られての移動。一人で何が出来るというのだ?」


カイトが、困惑気味に問うてきたが


「一人でも旅が出来ないなんて、誰が決めたのですか?むしろ、これはシンフォニアからの試練なのでしょう。己の力のみで道を切り開く…それが試練というなら受けなければいけないのでしょう?私は」


葵は、冷静に答えた。


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