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夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
ミヒデ村
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ミヒデ村ー襲撃…叫び

葵が寝入ってしばらくしてから、静寂の中カイトは入口の方を見る。


誰かが来る…1人じゃない複数だ。


襲撃…?カイトは悟った。


そして、


「アオイ、起きろ」


と、葵を起こす。


葵が目を擦りながら


「もう時間ですか?」


と呑気に言うと


「もしかしたら、襲撃かもしれない」


カイトの言葉に葵は緊張感で顔を強張らせる。


靴を履いて、木剣を持つ。


その直後、集会所のドアが開く。


フリューを先頭に村の青年が10人ほど中に入っている。


「寝込みを襲おうとするとは…」


カイトが呟くと


「いますぐこの村から出ていけ。そうしないと、今ここでお前達を処分する」


フリューが言う。


「何故だ?村長が俺達の滞在を許可してくれた。イラガとネーゼの鍛錬を約束してくれた。あの2人は村の為に有用じゃないのか?」


葵の問いに


「そんなわけがない!」


フリューは真っ向から否定した。


「あいつらが村を救うだと!冗談じゃない!そんな訳ないだろ!あの2人は死神だ!ネーナを殺した死神だ!」


フリューは叫んでから


「あいつらさえいなければ…サラガとなんか一緒にならなければ、俺と一緒になっていれば、ネーナは幸せになっていたんだ。」


そう言葉を紡ぐ。


「呪われた子供なんか産まないで済んだんだ。」


そう呟いて持っていた武器をしっかり握りしめて


「お前達を始末すれば、また、日常が戻る」


と、葵達を睨みつけた。


「あいつら2人は、ネーナを殺した罪を償わないといけない」


何かに取り憑かれたように言う。


「ネーナは、呪われた子供を産んでも笑っていた。本当は辛かったはずだ。なのに、子供達の力はシンフォニアからの祝福だと言っていた。そんな訳あるか!あの2人は呪われた子だ。村に災いをもたらす存在だ!」


フリューは、そう言い切った。


「森に捨ててこいと言ってもネーナは拒否した。この子達を森に置いてくれば、シンフォニアがせっかく贈ってくれた祝福を捨てる事になる。そんな事は出来ないと言って…」


そこで少し語気を緩めて


「拒否したんだ!」


フリューは叫んだ。


「ふざけるな!そんな訳あるか!」


続けて叫ぶ。


そして、


「サラガが死んで、やっと俺がネーナと一緒になれると思った。あいつら2人を森に捨てさせて、俺との間に子供を作って幸せな家庭を築けると思ったのに、あいつらが力を暴走させてせいでネーナは死んでしまった」


また弱弱しく言う。


「お前…わざとサラガが死ぬように…」


一緒に来ていた者の1人がそう呟くと


「違う!あれは事故だった!」


と、否定して


「だが、俺にとっては願ってもない機会だと思った。これでネーナを呪われた子から救い出せる。そう思っていたのに…ネーナは死んだ」


弱弱しく言ってから、グッと武器を握りしめて


「あいつらが殺した。受け入れられるか!ネーナを返せ!今度こそ俺が幸せにするんだ!」


フリューが叫んだ。


「さぁ選べ。ここから即刻出ていくか、俺達に殺されるか。選ぶんだ?」


フリューの目が常軌を逸している。


まるで何かに取り憑かれたようだ。


「…それは出来ない」


葵は答えた。


「俺達は俺達の理由で旅を続けている。今はココに残り、イラガとネーゼの力にならないといけない。あの子達はシンフォニアの祝福だ」


葵の言葉に


「…それならば」


フリューは武器を構える。


周囲にいた者達も同様に。


(10人か…カイトさんは大丈夫だろうけど、私は魔獣相手にしか剣を振るった事ないから、不安がある)


葵は、顔を強張らせていた。


「アオイ、奴らの相手は私がする。お前は向かってきた者だけを集中的に相手にしろ」


小さくカイトが葵に言う。


「すみません」


そう言いながら、木剣を構えて握りしめる。


フリュー達襲撃者が前に進み、葵達に近づいてくる。


フリューは剣を構えながら


「これで…いつもの日常を…ネーナの無念を…」


ブツブツと呟いていた。


その目は、何かに取り憑かれたように歩を進めていた。


葵達の前まで近づいて


「これで…」


と剣を振り上げる。


葵とカイトに緊張感が走る。


だが…


「止めんか!」


入口の方から声がする。


襲撃者全員の動きが止まる。


入口を見ると、村長の他数人が立っていた。


「…村長」


襲撃者の内の一人が呟く。


「お前達は何をしている?」


村長の問いに、襲撃者の者達は何も言わず黙っている。


村長と連れ立っていた者達が近づいてきた。


その中にイーナも入っている。


「この者達によって、イラガとネーゼの力を制御する方法を覚えさせて結界柱と大地を蘇らせる…そう決まったハズだ」


村長の声は、少し怒気がこもっている。


襲撃者達は何も言わない。


だが…


「そんな訳がない!」


フリューが叫んだ。


「フリュー、首謀者はお前か?」


村長の問いに


「そうだ!俺は、こいつらを追い出して、いつもの日常を取り戻すんだ。イラガとネーゼに力の制御を教えるなんてムダな事を止めさせる」


フリューの主張に


「お前達も同じ意見か?」


他の襲撃者達にも村長は問いかけた。


「あの2人が力を制御出来るわけがない。信じられるか。現に母親であるネーナを殺した。他に被害者が出る前に、あの2人は山の奥に捨ててくるべきだ」


1人がそう言うと


『そうだ、そうだ』


と、全員が口を揃えて言う。



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