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夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
ミヒデ村
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ミヒデ村ー就寝…カイトが思う事

「そうなのか…?」


カイトは、首を傾げる。


実際に葵の言う通りなのかは分からない。


シンフォニアは人々を、世界を守る守護神のようなものだ。


常にルスレニクスという世界の事を考えている、と言われている。


ルスレニクスを発展する為には、レイラ姫の成長が必要と判断し、彼女に足りない分を葵から吸収するという意味で葵と融合させている、と葵は感じている。


それに冒険証の偽造もシンフォニアの意志でなされている。


シンフォニアの加護があるから、偽造が成功しているし、継続出来ている。


加護がなかったら、一発でアウトだっただろう。


そこまで加護をするなら、追手に追い付かせて、すべてをご破算するという事はしないはずだ。


その為に追手が追いかけるスピードをある程度、操作しているのかもしれない。


あくまで、葵達に緊張感をもたせる程度だろうが。


「おそらくは…ですが、それに胡坐をかいていたら、シンフォニアからの罰が下るでしょう。私達は追手に捕まると思います。だから、常に追手に追い付かれると緊張感をもって旅を続けなければなりません」


葵はそう言い切った。


「そうだな。自分達はシンフォニアの加護を受けて旅をしているが、それに胡坐をかいてはならないという事だな」


カイトは、そう言ってから


「そろそろ休もうと思うが、アオイ、休むのは交代制にしよう。今は建物の中にいるが、本来であれば野宿は当たり前だ。だから、それを見越して交代で休む事にしよう」


そう葵に提案する。


葵は頷いて


「そうですね」


と、答えた。


カイトの言う事は、もっともだと思う。


本来なら、野宿しないとならない。


それを建物の中で、布団の中で休めるのは僥倖だ。


それは、葵にも理解出来るし、野宿を想定して交代で休むというは大事だと思う。


「ではアオイ、お前が先に休め。2時間したら、起こしてやる」


カイトの言葉に


「え…でも…」


葵が戸惑っていると


「お前は何も言わないが、今日の鍛錬でお前は疲れているだろう。この間の昇格試験の事を気にしてないフリをしているが、本当は気にしているのだろう?だから、今日の鍛錬にも焦りが出ていた」


カイトの指摘に葵は驚いた。


葵も昇格出来なかったのは自分の力不足だと理解出来ている。


だが、心の奥底では出来なかった事による自責の念があった。


《悔しい》という気持ちがあった。


それが、今日の鍛錬の焦りにも繋がっていた。


それをカイトは見抜いていた。


(敵わないな…)


葵は、そう思った。


「分かりました。今日は先に休ませてもらいます」


素直に言う事に従う。


「じゃあ、早く寝るといい」


カイトがそう言うと


「はい」


葵は答えてから靴を脱いで布団に入る。


しばらくしてから葵の寝息が聞こえてきた。


「…姫」


カイトは小さく呟いた。


カイトにとって目の前にいるのはレイラ姫であってレイラ姫ではない。


その事は頭では理解出来ている。


だがしかし、感情ではまだ受け入れきれない部分もある。


葵は、一生懸命に旅を続けている。


強くなろうとしている。


レイラ姫は、フィアント公国の姫君だ。


守られる立場にある。


ベイトになれる程の魔力を秘めている事が分かったので、魔法を賢者レクスドールの元で鍛錬したが、本来であれば、その必要はない。


レイラ姫を守る為にカイトとヴィヴィアンが常に一緒にいた。


だから、戦闘をする必要がないのだ。


言ってしまえば戦闘する能力が皆無なのである。


その状態で戦闘を、得意の魔法を封じて行わないとならない。


剣のみで戦わないとならない。


葵自身が剣の嗜みが多少あったので、基礎中の基礎から教える必要はなかったが、


それでもその剣は戦闘向きではない。


剣は振るえるが、戦闘は全く出来ない。


その状態から弱い魔獣であれば狩れるようになった。


それは、葵の努力の賜物だ。


おそらくレイラ姫のままであったら出来なかったし、魔法を使い追手に察知されただろう。


こうなる事を予想して、葵を呼び寄せた。


シンフォニアの力にはカイトも驚いている。


ここまで見越している…その事に。


なぜ別の世界にいるはずの魂を呼び寄せられたのかは分からない。


それは、シンフォニアの奇跡なのだろう。


そして、数ある世界から剣の基本が出来ている葵を呼び寄せたのは奇跡と言える。


それをやってしまうシンフォニアという存在は、まさしく神である。


そういう事がカイトの頭に過りながらも、レイラ姫を想う。


あの方は、優しい微笑みを持つ人だった、と。


儚い方だった、と。


カイトは、息を吐く。


「そんな事を考えても、あの方は戻ってこない。分かっているさ」


小さく呟く。


カイトは分かっている。


自分がどんなに求めても、シンフォニアはレイラ姫を元には戻してはくれない。


試練を突破し、4つの封印石を集めてシンフォニアの前に立つまでは。


それまで姫は戻らない、と確信的に思っている。


それまでは、彼女の身を守る。


中身は別人だが、体はレイラ姫の物だ。


守らなければならない。


そうすればいつか、シンフォニアは自分の願い―レイラ姫を取り戻す事に答えてくれると信じて。


カイトは、そんな事を願いながら旅を続けると決意した。


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