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夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
ミヒデ村
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ミヒデ村ー就寝前の会話

そこからは、終始無言で集会所に歩く。


(何か話した方がいいのかしら…)


葵はそう思ったが、何を話していいのか分からないし、下手な事を言って誰かに聞かれてしまえば都合が悪い。


無言のまま集会所に入る。


集会所の中には、もう布団が敷いてあった。


ありがたい事に誰かが敷いてくれていたのだろう。


村全体に拒絶されている訳でないと分かり、ひとまず安心する。


寝る準備を進めていると


「あの2人はシンフォニアの祝福だと言っているが、本当に祝福だと思うのか」


カイトが葵に聞くように口を開く。


葵は頷き


「はい、あの2人の力はシンフォニアの祝福だと思います」


と、答えた。


「なぜ?」


そう問いかけるカイトに


「この村の結界柱と大地は枯れかけています。たぶん、あと10年は持たないでしょう。結界柱を見た感じでは、僅かに結界柱としての機能が何とか働いている状態です。それももうもたないでしょう。だけどこの時機にあの子達が、大きな魔力を持った子供が産まれた。それは、この村を救おうとするシンフォニアの意志だと思います。力を失いかけている結界柱と枯れかけている大地を蘇らせ、この村の発展を促す。そういうシンフォニアの意志だと思います」


葵は、澱むことなく答える。


「そうであれば、自分達がこの村に来たのも…」


そこでカイトは口を言い澱む。


「おそらくは、シンフォニアの意志かもしれません。私達の足がこちらに向くようにシンフォニアが導いてくれたのかもしれません。ただ…」


そこで葵は、言葉を詰まらせる。


「ただ?」


そうカイトが問うと


「バッカの事は、シンフォニアの意志なのかは未だに分かりません。バッカのお陰でこの村をあの子達を救う事になりました。それもシンフォニアの意志かもしれません。だから、バッカが私達と出会ったのも、もしかしたら、シンフォニアの導きなのかもしれないと思っていますが、まだ確定だとは言い切れません」


自信なさげに葵が言う。


「ならば、明日の朝、バッカを置いて、こっそりとこの村を旅立つのは…」


カイトには、その考えがあったのだろう、そう言いかけると


「止めた方がいいと思います。シンフォニアの導きに従わない場合、シンフォニアの加護を失うでしょう。私達の冒険者証は、シンフォニアの加護により偽りの証明書になっています。もし、ここであの子達を放置して旅立てば、次に冒険者証を提示した時に偽造が明るみに出て、捕まると思います。最悪、追手に引き渡される可能性もあるでしょう」


葵は、そう言い切った。


「だが、追手がどこまで伸びているか分からない。もしかしたら、すぐそこまで迫っているかもしれないんだぞ」


カイトの懸念を口にする。


それは葵にも分かっている。


ヴィヴィアンは優秀だ。


葵達…レイラ姫とカイトの気配を察する事が出来る。


彼女の検索魔法は、誰よりも優秀だ。


もし、オリンズに到達していたら、2人のいた気配を察知して、すぐに周辺の洗い出しにかかるだろう。

ビルガ帝国の兵力を使えば、あっという間に探し出される可能性もある。


その可能性が高い。


だが…


「それは私も理解出来ています。だけども、あの子達やこの村を見捨てれば、さっきも言った通りにシンフォニアの加護を失う可能性が大です」


葵はキッパリと言う。


その言葉通りだと葵は理解している。


葵の中にいるであろうレイラ姫の影響なのかもしれない。


葵はシンフォニアの加護について、よく分かっていないがレイラ姫は理解出来ている。


だから、この村を、イラガとネーゼを見捨てれば、加護を失うのだと理解出来ている。


「このまま村に留まり、あの2人が魔力制御を出来るように待つのを待つしか出来ないという事か…」


カイトが眉間に皺を寄せながら言う。


追手がどこまで迫っているかは分からない。


もしかしたら、すぐそこまで迫っている可能性が高い。


3日後に出発…その時間だけ追手に時間を与える事になる。


それは、自分達にとって不利に働くは2人とも理解出来ている。


だが葵は


「ですが、もしかしたら私達にシンフォニアの加護があるのであれば、追手に追い付かれないかもしれませんし、3日後までにあの子達が魔法制御を出来るようになるかもしれません。あくまで可能性ですが」


そう口にする。


そう自分達に都合よく事は進まない事は、葵にだって理解は出来る。


現実は甘くない。


分かっている。


だが、それでも自分達にシンフォニアの加護があるならば、この危機的状況に近い状況も打破出来ると思っている。


「可能性か…もし、追手に追い付かれるのであれば…」


カイトが眉間に皺を寄せながら言い淀む。


「それもシンフォニアの意志…なのかもしれません。私はレイラ姫の知識としか認識してませんが、シンフォニアは人の運命をも操る力を持っていると思われます。だから、追手の手も私達に届かないようにシンフォニアが追手を操作してくれるかもしれません」


葵は、この状況もシンフォニアの試練なのだと考えてはいるが、シンフォニアは葵達を守護している。


だから、追手達のスピードをも操作しているのではないかと思っている。


あくまで可能性だが…


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