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夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
ミヒデ村
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ミヒデ村ー不自然な設定

こういう時は、カイトのように年齢を詐称するのが得策だ。


馬鹿正直に答える必要はない。


だが、後悔しても遅い。


「へぇ…16か…もっと若いと思っていたぜ」


バッカの言葉に


「そうだねぇ、もっと幼いと思っていたよ」


イーナが同意する。


「そうか…?」


葵が不思議そうにしていると


「あぁ、普通はその位の年になるともう将来の事が決まっている。農家なら農業のイロハを叩き込まれているだろうし、猟師なら魔物をある程度まで狩れるようになっている。16という歳で、農家としても猟師としても生活の糧の技量がないのは、相当箱入りとしか思えねぇ」


バッカのその言葉で、葵は失敗を悟る。


どうにか誤魔化せないかと考えを巡らせていると


「親としては、子供の可能性を信じていたんだろう」


カイトがボソリと呟く。


その後に


「俺は親になった事はないから分からないが、生活の糧を得る為にいろいろな事を試したかったんじゃないか?」


カイトの言葉に


「…まぁ、そうだね。親としては可能性が少しでもあるなら、それに賭けてみたいと思うという気持ちは分からなくもないけどね」


イーナがそう言うと


「結果、農家としても猟師としても役に立たないから、村を出て別の可能性を模索する為に街に出された訳だ」


葵は自虐的に言う。


(とりあえず…誤魔化せた…?)


平静を装いながらも、心臓がバクバク言っている。


「でも、何で冒険者なんかになったんだよ?言っちゃ悪いが戦闘力は皆無だろうが」


バッカの疑問はもっともだ。


これについては、葵は考えてある。


「言ってなかったか?街に向かう途中で魔物に遭遇した所を運よくデュランに助けてもらってな。その時のデュランの剣捌きが見事だったから、もしかしたらデュラン指導してもらえば、冒険者としてやっていけるかもしれないと思ったんだよ」


そう答えてから


「まぁ、俺の力不足でデュランには迷惑をかけているがな…」


また、自虐的に笑みを浮かべる。


「おいおい、俺にもだろ」


バッカがそう言うと


「そうだな」


葵は笑みを浮かべて言う。


(勝手に付いてきているけどね)


心の中でツッコむのを忘れていない。


たぶん、これは口に出してはいけない事だろう。


追手に対して目くらましをする為には、2人連れより3人連れの方が誤魔化しもきく。


追手は2人連れを追っているはずなのだから。


少しの間でも時間稼ぎが出来るはずだ。


確信ではないが、これでよいと思っている。


「で?結局どうなんだい?冒険者としてはやっていけるのかい?」


イーナが、もっともらしい事を質問してくる。


葵は、少し迷っていたが


「戦闘力はまだまだだが、少しずつ上昇している。毎日の鍛錬と場数を踏めば、やっていけるだろう」


カイトがそう答える。


「そうだな」


バッカも同意してから


「アオイの戦闘力は、まだ単独での狩りは出来ないが、最初会った時より成長してると思うぞ」


その言葉に葵は、苦笑しながらも


「そうか?」


褒められた事が少ないので、どう反応していいか分からない。


「だが、まだまだだけどな」


バッカは落とすのを忘れてない。


そういう事はきちんと言っておかないと、命に係わる。


それは葵も理解出来ているが、上げた後すぐ落とさなくても…と思ってしまう。


「ま、毎日鍛錬を怠らなかったら、反応速度や剣捌きもついてくるだろうし。本当に村では何を学んでいたんだ?と思うぜ。こんなに成長速度は速いのに」


その疑問は、もっともだ。


本当に戦闘を学んでいたのかと思う位に、葵は戦闘力がない。


魔導師として鍛錬をしたのだから、剣術に関してはズブの素人なのである。


だが、魔導師としても魔法は学んでいたが、戦闘に関しては机上の空論に近い。


シミュレーションはした事あるが、実際の戦闘訓練をやった事はない。


フィアント公国の王女なのだから、戦闘など実際に行う事はない。


そもそもフィアント公国は神樹シンフォニアに守られている国。


戦争など起こるはずもない。


だからこそビルガ帝国に好きなように蹂躙されたのだ。


だが、ビルガ帝国とて無体な殺しは出来ない。


それは神樹シンフォニアが許していないのだから。


支配する事は可能であったが、生命を奪う行為はシンフォニアが防いでいる。


命が奪われる事はないが、ビルガ帝国の支配をシンフォニアは静観している。


シンフォニアが何を思ってそうしているのか分からない。


それがルスレニクスという世界の為になる…とシンフォニアが考えている、としか言えない。


それはそうとして、レイラ姫は戦闘経験が全くない。


あえて言うなら、追われていた際の戦闘がレイラ姫にとっては初めての戦闘になる。


公国の姫なのだから当然なのであるが、今はそんな事が言えるはずもない。


不自然さは出てくる。


答えに悩んでいると


「人には向き不向きとかあるからな。村での教え方がアオイに合っていなかったんだろう。そういう事もあるさ」


フォローを入れるようにカイトが言う。


「そういうもんかね?」


バッカが不思議そうに言うと


「実際にアオイは、戦闘のやり方を成長は遅いが覚えてきている。筋力もだ。アオイに合った方法でやれば成長は出来る。冒険者としてはまだまだだけどな」


カイトはそう言ってから


「とりあえず、明日も早い時間から鍛錬をしたい。アオイの体力からして、早めに休んだ方がいいだろう。バッカ、その2人もゆっくり休ませた方がいいんじゃないか?」


そう言って、イラガとネーゼを見る。


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