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夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
ミヒデ村
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ミヒデ村ー夕食後の恋バナ

その質問は、カイトにとって虚をつく問いかけだった。


「お前みたいな強くて顔のいい男を村の女達が放っておく事はないだろ?」


バッカの言葉にカイトは、どう返答してよいか困っている。


「村に将来を約束した婚約者とかいないのかよ?」


さらに踏み込んでくるバッカの言葉に


「…それは関係ないだろ」


素っ気なく答えるカイト。


「気になるんだよ。浮いた話の一つぐらいあるだろ?な?アオイ?」


バッカから急に話を振られて葵は驚いたが


「…本人が話したくない事ぐらいあるだろ。一緒に旅をしていく上では、そういう事は聞かない配慮とかも必要だと思うが」


と答える。


バッカは


「つまんねぇな。一緒に旅を続けていく上で、そういう話も必要だと思うがな」


つまらなそうにバッカが言うと


「私は気になるね」


と、イーナが口を挟む。


「え?」


カイトが驚いていると


「あんた、何か鬼気迫る事情を抱えているように見えるからさ。気になるじゃないか」


イーナがそう言うと、カイトは困ったようにしていた。


葵は


「別に話したくない事もあるだろうし…」


とフォローを入れるような言葉を言うが…


「話した方が楽な事もあるよ」


イーナは言葉を繋げる。


カイトは、息をついてから


「将来の約束した人はいるが、その人はいなくなってしまった。その人を取り戻す為に旅をしている…これでいいか?」


少し諦め気味に言う。


バッカは一瞬目を丸くしたが


「そうなのか…そりゃあ大変だな」


と言ってから


「美人なのか?」


と、更に聞く。


カイトは、少し迷惑そうな表情をしてから


「…別に答える必要はない」


とだけ答える。


葵はチクリと胸が痛んだ。


カイトが求めるレイラ姫は目の前にいるようで、いないようなものだ。


レイラ姫の体だが、中身は葵なのだから。


融合がどのような影響があるのか葵には分からない。


旅が終わった時に、葵は自分がどうなるか分からない。


その答えを知るシンフォニアは眠りについていて沈黙を続けている。


理想は、葵とレイラ姫の融合を解いて、葵は元の世界に戻る事だが、元の世界では事故の影響で生き返るかは分からない。


葵が元の世界で戻れる可能性は低いと感じてはいる。


それでも、奇跡を信じて旅を続けている。


だが、この胸の痛みは、何か違う感じがする。


その正体が何なのか…アオイには分からない。


分からない事をそのままにしておくのは、葵の性格上ありえないが、今はそれを考える時期ではないと思っている。


逃げている…かもしれない。


その正体を知る事への恐怖はある。


知ってしまったら、今の状態で旅を続けるのがキツくなるかもしれない、と思っている。


だから、知るのが怖い。


それが正直な気持ちだ。


葵は一息ついてから


「…その人に会えるようになるといいな」


とだけ言う。


カイトは一瞬驚いたが、少し微笑んで


「そうだな」


短く答えた。


そこにバッカが


「アオイは気にならないのかよ?デュランの愛しの相手が」


と言ってきたが


「旅に関係ないからな。デュランが話したいならいいが、無理矢理聞き出すのは違うとおもうが」


至極まっとうな事を言う。


バッカはつまらなそうに


「えーアオイもお堅い事言うな。俺は気になるけどな。デュランの想い人が」


そう言ってから


「まぁいいや。アオイ…お前には村に好いた娘とかはいないのかよ?」


矛先を葵に変えてきた。


葵は、ふうっと息をついてから


「俺にはいねぇよ。俺は生きていく事に必死だったせいか、恋愛とかには無縁だったからな」


とだけ言う。


「それでも、気になる娘とかはいたんだろ?」


バッカが食いついてくる。


葵は、そんなバッカを冷ややかに見てから


「だから、恋愛とかそんな暇がなかったよ。…そういうならバッカ、お前はどうなんだよ?気になる娘とか恋人はいなかったのかよ?」


ちょっとした反撃に出た。


バッカは、少し考えてから


「気になる子はいたけどな。でも、恋愛までには発展はしなかったな」


あっけらかんに答える。


その後に


「俺も生きていくだけで精一杯な所あったからな」


そう言ってから


「ま、そのうちいい感じの子に出会えるだろ」


と、お気楽そうに言う。


イーナはそのやり取りをみて


「そういうのは分かるよ。生きていくのに精一杯で、恋愛に発展しないだよね」


と言う。


「母ちゃんは父ちゃんとどうだったの?」


ゼオが何気なく問いかかる。


ブホッとイオがむせる。


イーナが、ウーンとうなり


「父ちゃんとはねぇ…子供の頃から一緒にいて、近くにいたから気付かなかった部分があったのよね」


思い出すように言う。


「なんで意識しだしたの?」


マーネの問いに、イーナは思い出すように唸って


「そうねぇ…あれは…」


と話そうとすると


「別にいいだろ」


必死に止めようとするイオ。


マーネは笑みを浮かべて


「だって、気になるじゃん。お父さんとお母さんの馴れ初めとか」


と言うと


「そんなん、恥ずかしいわ!」


イオが言うと


「お父さん焦ってるー」


ルーナが無邪気に言う。


「ね!ね!お母さん、お父さんとの馴れ初め教えてよ」


マーネが身を乗り出すように聞いてきた。


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