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夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
ミヒデ村
108/121

ミヒデ村ーシンフォニアの祝福

その後に女の子2人が台所から、男の子1人が部屋から出てくる。


台所からイーナが出て来てから席に座る。


「こんな貧乏な村では大したモノは出せないけど食べておくれよ」


イーナがそう言うと


「いや、上手い飯にありつけるだけでもありがたい」


バッカがそう言ってから葵を見て


「家庭料理に勝るものはないな」


そう言うと葵は頷いて


「そうだな。それに頑張って作ってもらえた料理にケチ付けるなんて罰当たりもいい所だ。ありがたくいただくよ」


そう言うとイーナは満足そうに頷いて


「そう言ってくれるとありがたいよ。あ、そうそう」


そう言って思い出したように


「紹介するよ。うちの旦那のイオ。それに上の娘のマーネ。下の娘のルーナに、下の息子のゼオ。一番上の息子のコクリは、オリンズで兵士の学校に入っていてね」


そこで困った顔になる。


なぜ困った表情をしているか分からない葵達に


「サラガのような戦士になりたいと言ってな」


イオが理由を説明する。


「挨拶が遅くなってすまない、イオだ。今回はありがとうな。イラガとネーゼの事は、俺もイーナも考えていたが、どうしたらいいのか分からなくてな。この子達の進むべき道を示してもらえて助かる」


イオが頭を下げる。


イーナも慌てて頭を下げた。


バッカは


「顔を上げてくれ」


と言ってから


「俺は、ここにたまたまいただけだ。ただの偶然でな。ここに滞在する事に協力してくれたアオイ達にも言ってくれ」


そう言ってから葵達の方を見る。


「そうだな。お前達もありがとう」


イオとイーナがそう言って頭を下げると、葵は慌てて


「顔を上げてくれ。俺達は、この子達がシンフォニアの祝福を受けていると信じているから協力したまでだ」


と、言った。


「お前もこの子達がシンフォニアの祝福だと信じているのか?」


イオの問いかけに葵は頷き


「まぁな。シンフォニアは、生きとし生ける者すべてを守護する存在だ。この土地に生きる者たちへの祝福なのだろうと俺は信じている」


そう言うと、イーナは涙ぐんでから


「ネーナも同じ事を言っていたよ。そう信じて子供達を守っていた。…そういや、不思議な事があったね」


何かを思い出したようだ。


「不思議な事?」


葵の問いかけに


「そうだよ。この子達の力が爆発しそうになるとネーナが歌を歌うと落ち着いたんだよ」


イーナの話に、葵は思い当たる節があったが何も言わない。


それは諸刃の剣になりかねない。


魔力を持つ者なら、すぐに分かる事だが、葵の設定では魔力は全くない設定だ。


だから、何も言わない。


だが…


「おそらく…」


バッカが口を開く。


「ネーナも魔力持ちだったんじゃないのか?」


そう言うと、イオとイーナは顔を見合わせる。


「魔力持ちが何を媒体に力を使うかは、人それぞれ違う。杖を使う者もいれば、踊りに魔力を乗せる者もいる。これは想像に過ぎないが、ネーナは歌を媒体にして魔力を使い、こいつらを落ち着かせていたんじゃないか?」


バッカの言葉にイーナは少し考えて


「そういや、ネーナは昔から子供をあやすのが上手だったんだよ。どんなに泣いている子もネーナが歌ってあやせば、すぐに泣き止んで眠ったり、仲違いしている者達がいても、ネーナが仲介に入れば仲違いが無くなったりしていたわ」


思い出したように言う。


バッカは頷いて


「おそらくそうなんだろうな。それもシンフォニアの祝福に違いないだろう。すごいな、お前達のは母親は」


そう言って、イラガとネーゼを見る。


イラガとネーゼは嬉しそうに笑い


「「うん!」」


と言った。


「そうか…この子達だけじゃなかったのか…シンフォニアの祝福を受けていたのは」


イオが呟き


「お前達のお陰で、シンフォニアにこの村が見捨てられてない事が分かってよかったよ。この村は助かるんだな…」


しみじみというと


「そうだな。この2人はシンフォニアに与えられた祝福だ。だから、扱い一つを間違えばシンフォニアの祝福は消えてしまう。その事を村の連中にも周知させてくれ。村の大地を潤わせる事が出来るのは、祝福を受けたこいつらだ。魔力持ちはこの世界には、ごまんといる。だが、こんな小さな村に長い期間力を貸してくれる魔力持ちは簡単には見つからないからな」


バッカの言葉に


「そんなにこの村は…」


イオが言うと、バッカは頷いて


「結界柱を見てきたが、かなり弱体化が進んでいる。魔力を注がれなければ、あと少しで折れていただろうな。少し魔力を注いでみたが、そんなに持たないだろうよ」


そう答える。


「…そうか。重ね重ねすまない。感謝する」


イオが頭を下げると


「頭を上げてくれ。俺は、今ここでこの村を見捨てたら目覚めが悪いと思っているからやるだけだ」


そう言ってから


「飯がさめちまう。さっさと食おうぜ」


バッカの言葉に


「そうだね。せっかくのご飯が冷めちまう」


イーナがそう言ってから


「さ、食べようか」


イーナの言葉に、ゼオとルーナがご飯を勢いよく食べだす。


それに反してイラガとネーゼは躊躇しているようだ。


「食べないのか?」


バッカの言葉に


「…食べていいのか?」


イラガが言うと


「食べていいんだよ!」


ゼオが言う。


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