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夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
ミヒデ村
102/132

練習用の武器を探そう…そして、フォローする者達

「やっていますね」


囁くような声で葵が言うと


「そうだな。ところで…」


ふとカインが立ち止まる。


それに気付いた葵は、足を止めて振り向く。


「なんでしょう?」


葵の問いに


「魔法制御というのは、簡単に覚えられるモノなのか?」


疑問で返すカイト。


葵は、少し考えてから


「そうですね。私の…いえ、彼女の記憶によれば、普通ならばかなりかかりますね」


と言った後に


「個人によりますけど」


と、付け加える。


「個人による?」


カイトが怪訝そうにしていると


「はい。まず内にある魔力を体全体に巡らせる事から始めます。コツをつかめば簡単ですが、それまで時間が掛かる場合があります。魔力を循環しているうちに余剰の魔力をゆっくりと外に向けて放出したりしていきます。あの2人の場合は、この余剰の魔力を畑や結界柱に注ぎ込むという形になると思います」


葵はそう答える。


「ただ魔力を畑や結界柱に注ぎ込むというだけじゃいけないのか?」


その問いかけに、葵は少し困ったように笑い


「それも出来ると言えば出来ますが、そうしたらあの子達の成長を妨げますし、一歩間違えれば、本人の命ばかりか周囲にも甚大な被害が出る場合があります。将来、あの子達がどのような道を歩むかは分かりませんが、魔導師として生きるという選択もありますから、魔法制御を覚えて損はないと思います」


と答えてから、倉庫の前に立ち


「では、倉庫の鍵をあけますね」


そう言ってから、鍵穴に鍵を入れる。


カチカチッ…ガチャリと音が鳴り鍵の開く音がする。


横開きの扉を開けて


「結構、暗いですね」


葵が呟く。


「もう日も暮れてきたからな。早く練習用の武器を見つけよう」


そう言ってからカイトは、倉庫の中に入る。


葵も続けて入っていく。


倉庫の中には、催し物に使う道具や農具、武器等が整頓されてある。


武器は奥の方に置いてあるようだ。


奥まで進み、武器の中から、何本かある木刀を手に取る。


太さや長さ、形に疎らもあるが使い込まれているのが分かる。


カイトは、何本かを手に取りながら、感触を確かめる。


葵も木刀を手に取ろうとしたが


「アオイ、素人のお前には分からないと思う。選別は任せてもらおう」


カイトの言葉に


「分かりました」


と、手を引っ込める。


少しすると、2本の木刀を手に取り


「これがいいだろう」


そう言ってから、1本を葵に渡す。


「材質が頑丈で軽い木材を使っているようだ。この長さなら振り回されずに扱える」


受け取った葵は


「ありがとうございます」


と言いながら頭を下げる。


「夕食まであまり時間がない。早く鍵を返して鍛錬に移ろう」


そう言ってカイトは出口に向かって歩き出す。


葵も慌てて、それに続く。


倉庫を出て鍵をかける。


少し先に行くカイトを追いかけながら


(バッカを待つと言ったけど、この判断が正しいのかは分からない。その間に追手に追いつかれたら、そこでお終い。情報が欲しい。追手の情報があればそれに対しての行動が出来るのに)


そう考えたが、首を横に振る。


(駄目ね。ないものねだりだわ。この情報のない状況もシンフォニアからの試練…何とか追手を捲きながら先に進んで試練を乗り越えないと)


木刀を、グッと握り締めて


(まずは、剣を使いこなさないと)


改めて気合を入れた。




『やられましたね』


副官がつぶやく。


彼らがいるのはミヒデ村の外。


だが、村の中で起こった事は、副官の隠密魔法で筒抜けになっている。


首領(ボス)と呼ばれている男は何も言わない。


『これで2日…いえ3日くらい、追手の足を止めないとならなくなりました。どうしましょうか?』


副官の問いに、首領(ボス)は何も答えない。


沈黙が続く。


『これもシンフォニアからの試練、という事になるのだろうな』


ボソリと首領(ボス)が呟く。


『え?』


副官が不思議そうにしていると


『あの子供達は、シンフォニアからの祝福を受けている。だからこそ、巫女として彼らの力にならないといけない。だが今、姫は魔法が一切使えない状況だ。魔力制御なんてもってのほか。()()()()()()()()()()()()()()()()と呼ぶべきか…』


呟くように言う首領(ボス)


『そうですね。彼が合流した事は幸運と言えるかもしれません』


副官が、そう言うと


『そうだな。幸運と呼ぶべきか。これであの子供達を見捨てたりしたら、シンフォニアからの加護を失うやもしれない。この姫の判断に間違いはないだろう。だがしかし…』


首領(ボス)が少し考えるそぶりを見せる。


『問題は追手…ですね』


副官が言うと


『そうだ。追手は今オリンズに入っている。そこで姫達の痕跡を見つけたら一気に追手をかける可能性がある。だが、我々によってバラバラにされている軍を全員呼び寄せて体制を整えるか、今の人員のみで追手をかけるかはまだ分からない。さらに攪乱をかける必要がある』


首領(ボス)は、そう言ってから


『副官、今動かせる部隊はどれだけある?』


副官に問いかける。


『6班から8班です。1班から5班は、まだオリンズで攪乱行動をしています』


副官が答えると


『1班から3班は、オリンズの様子を見ながら攪乱を続けるように。3班から8班は、バーズの森から国境の南までの範囲で姫達に変装をして冒険者に目撃させろ。9班と10班は引き続き、追手の情報採取を続けるように』


首領(ボス)と指示を与える。


『了解。首領(ボス)


副官は返事をしてから、すぐに魔法での通信を始めた。


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