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夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
ミヒデ村
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ミヒデ村-鍛錬の前

カイトは、一息をついてから


「お前が…そう言うのなら、俺はそれに従おう。だが…」


そう言った後、少し考えて


「お前は、バッカを信用しているのか?」


疑問を口にする。


葵は、首を横に振って


「信用…している訳ではありません。彼は油断のならない人物です。ですが、利用出来る部分はあります。それを使えるのならば使うのが一番よいと考えています」


そう答えてから


「さ、私達も夕食まで鍛錬しましょう」


そう言ってから、収納魔法から木刀を取り出そうとするが


「おっといけない。魔法を使えるのをバッカに知られてはならなかったわ」


と、魔法の発動を停止する。


「村の方に、木刀がないか聞いてみましょう」


そう言ってから、すぐに入口の方に向かって歩き出す。


「まて!」


カイトが葵を引き留める。


振り向いた葵に


「いつ誰に絡まれるか分からない。油断は禁物だ。私も一緒に行こう」


と、自分の荷物を寝床に置く。


「え…?でも…」


葵が戸惑っていると


「この村にも、私達に好意的な者ばかりではない。あの子供達にそうであるように否定的に考えている者もいるだろう。万が一襲撃されて、性別が知られると後々都合が悪い。あまり私の傍を離れない方がいい」


カイトの言葉に、葵は頷くしかない。


今は、自分の身を守れるかどうかも怪しいのは事実。


カイトの傍を離れない方が賢明だろう。


「それでは行きましょうか」


葵の言葉に


「そうだな」


カイトは短く答えて、集会所から出る。


時間が時間だけあって、村の中をうろついているのはまばらだ。


その中の一人を捕まえて


「剣術の練習をしたいのだが、木刀のような剣はあるだろうか?」


と尋ねる。


村人は怪訝そうな表情を浮かべるが


「それなら集会所の隣の倉庫にある。だが、カギは村長が持っているから、村長の家にまず行くといい」


と、答えてくれた。


どうやら、この村人は葵達に攻撃的ではないようだ。


少しだけ安心したが


「おい!勝手に村をウロウロするな!」


別の村人に声を掛けられる。


今度は攻撃的な村人のようだ。


「剣の鍛錬をするだけだ。村長には許可を貰っているはずだが」


葵が、そう答えると村人は舌打ちをして


「この村では勝手な事をするな!」


そう言ってから、くってかかろうとしたが


「止めろ!客人だぞ」


他の村人によって制止させられる。


くってかかろうとした村人は、振り上げた拳を下げて


「早く出ていけ」


それだけ言って去っていく。


「すまないな。アイツは村以外の人間には排他的でな。フリューの奴ともよくつるんでいるから、お前さん達が気に入らないのだろう」


村人の説明に、とりあえず納得はしたが


「分かってはいたが、歓迎はされていないんだな」


葵が呟くと


「誤解されたら困るが、あんなのはほんの一部だ。俺達は、あんた達が来てくれて助かっている。イラガとネーゼの力を村に活用出来るという事は、あの子達の為にも村の為にもなる。排他的な奴とか昔ネーナに振られて引き摺っている奴とかは、よくは思ってないだろうが、そんな奴ばかりではないと分かってほしい」


村人の言葉に


「…そうだな。あんたのような人もいる。この村も捨てたもんじゃないな」


葵がそう言うと


「そう思ってくれると嬉しい」


村人はそう言ってから


「練習用の武器については、さっきも言った通り、集会所の隣にある倉庫にある。その鍵は村長が持っているので、村長の家を訪ねるといい」


先程の説明をもう一度してくれた。


「ありがとう」


葵は礼を言ってから、


「デュラン、行こうか」


と、カイトに声をかけてから村長の家に向かって歩き出す。


カイトも葵の後を追うように歩き出した。


村長の家に行く途中、何人かの村人とすれ違う。


会釈する村人もいれば、睨みつける村人もいた。(圧倒的に会釈する村人が多かったが)


村長の家の前に立つと、ドアをノックする。


「はい」


と、中から女性の声がしてドアを開ける。


年は村長よりかなり年下。


村長の娘と言われてもおかしくない。


「すまないが、戦闘の練習をしたので、練習用の武器を貸してほしい。村の者に聞いたところ、倉庫の鍵は村長が持っていると聞いた。それを貸してほしい」


葵が言うと


「あぁ。倉庫の鍵ね」


と、女性は、ポンッと手を叩き


「お義父さん、お客人が倉庫の鍵を貸してほしいそうよ」


と、奥に向かって声をかける。


少しすると村長が、鍵を手に近付いてきて


「練習用の武器か…お前さん達は剣を使うんじゃったな」


と言って鍵を差し出す。


「別に大した物を置いている訳ではないが、倉庫の中をかき回す事だけはさけておくれ」


村長の言葉に


「分かった」


と短く答えて、鍵を受け取る。


「あと、鍵はちゃんとかけておくれ。武器はここにいる間は貸してもよい。それと鍵はすぐに返してもらえるとありがたい。この鍵は予備がないものでな」


村長の説明に頷いて


「分かった」


葵は短く答えてから


「すぐに戻そう」


と言ってカイトを連れて、村長宅を去る。


そのまま、倉庫に向かって歩く。


倉庫は集会場を挟んで、広場の逆にあるようだ。


遠目に広場で、バッカがイラガとネーゼに魔法制御を教えている様子が窺える。


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