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夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
ミヒデ村
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ミヒデ村-子供達の覚悟と葵達の話し合い

言われた村人は、タジタジしながら


「そ、それでもフリューの気持ちも考えたら…」


そうイーナに言うが


「あんたは、フリューの奴と家が隣同時だし、仲もいいからフリューの肩を持つのは分かる。けどね、ネーナはサラガに嫁いで、イラガとネーゼを産んで幸せだった。それを否定するのは、ネーナの姉として許せない」


イーナは村人にキッパリと言い放つ。


話の流れからして、《フリュー》とは、見張りの男の名前だろう。


「だが…」


それでも何か言おうとする村人だったが


「もう止めい!客人の前ぞ!」


村長が一喝する。


そこで、葵達がいる事を思い出したのが、イーナも村人もバツが悪そうにしている。


村長は、ネーゼの頭を撫でて


「すまないな。イラガ、ネーゼ。その力はお前達のせいではないのに、辛い思いをさせていた。村を代表して謝罪させておくれ」


そう言うと、ネーゼはキュッと唇の結んでから


「…いいよ」


と、小さい声で言う。


「ん?どうした?」


村長が優しく問いかけると


「いいよ。兄ちゃんと一緒に村の為に私の力、使ってもいいよ」


小さな声でネーゼが言う。


「よいのか?」


村長が問いかけると、ネーゼはコクリと頷いて


「…村の為じゃない。イーナ伯母さんや従兄のコクリ兄ちゃんやマーネ姉ちゃん、それに優しくしてくれた人達の為に力を使う。それでいいなら」


そう答えた。


村長は、少し困ったような表情をしたが


「そうか。よく言ってくれた。村を代表して礼を言う。イラガ、ネーゼ、ありがとう」


そう言って2人の頭を撫でる。


2人は照れ臭そうに俯いていた。


村長は、バッカの方を向いて


「すまないが、2人の事を頼む」


と、バッカに向かって頭を下げる。


バッカは、厳しい表情を浮かべて


「俺達が旅立つまでに、出来るようになるには並大抵の努力じゃ済ませられない。それでもやるんだな?」


と、イラガとネーゼに向かって言う。


「…分かっている。それでもやる」


イラガが答え


「分かった。頑張る」


ネーゼが、そう答えた。


バッカは少し微笑んで


「分かった。じゃあ、早速、訓練だ。広場まで案内してくれ」


そう言うと


「うん、こっち」


と、イラガがバッカを案内するように、先導する。


バッカ達が広場の方に向かって行くと


「じゃあ、あんたたちも集会所に行こうか」


イーナが葵達に言う。


「そうだな。案内を頼む」


葵が言うと


「ついておいで」


イーナがそう言ってから歩き出す。


それに付いていく葵達。


「アオイ…」


カイトが小さい声で、葵に話しかける。


「話なら後で、ゆっくりしましょう」


小さい声で葵がそう答えると


「分かった」


カイトは、納得はしていないようだが、仕方なく矛を収める。


村の外れにある大きな建物に到着すると、イーナが扉を開けて


「ここが集会所さ」


そう言って中に入るように言う。


「広いな」


葵が言うと


「まぁね。何か問題が起こると、ここでいろんな話し合いをしているし、催し物もしているからね。村人の大半がここに入れるようにはしているのさ」


イーナが、そう説明してくれた。


「ここを俺達だけで使っていいのか?」


葵の問いに


「構わないさ。だが、男女一緒でも構わないのかい?」


イーナが質問をしてきた。


おそらく葵が女だと認識しているのだろう。


「俺は男だが」


葵が言うと


「あら、すまないね。顔立ちとかが女っぽいから、ついね」


イーナが、悪気がなさそうに言うと


「構わない。よく間違えられるからな」


葵は、背中に汗をダラダラと流す勢いを隠しながら言う。


(本当は、女なんだけどね)


そう思っていたのは内緒だ。


中に入ると、イーナは奥の方から敷物らしき布を出して


「寝る所はこれでいいかい?」


そう言って敷物を敷く。


「あぁ、構わない。ありがとう」


葵が礼を言ってから、敷物の端に荷物を下ろす。


「すまないね。こんなもんしかなくて」


イーナがそう言うと


「俺達は冒険者だ。雨と風が防げる所があるだけありがたい」


葵の言葉に


「そう言ってくれるとありがたいね。さて、私は夕食に準備をしてくるよ。出来たら声をかけるから、それまでゆっくりしておくれ」


イーナは、そう言ってから集会所から出ていく。


「アオイ…」


カイトが口を開く。


「何故、2日待つと言った?いつ追手が来るとは限らない。一刻も早くこの村を発った方がいいだろう」


不満げに言うカイトに


「…あの子達は、シンフォニアからの祝福を受けています。それを放置して先を急げば、シンフォニアからの加護を失うかもしれません」


葵はそう答えた。


「だが、追手に捕まれば…」


「カイトさんの言う事も分かります。ですが、私達の旅は、シンフォニアからの加護があって成り立っています。それを無視する事は出来ません」


葵が、キッパリと言うと


「それなら、バッカだけ残して…先に出発しよう」


カイトが言うと、葵は首を横に振り


「そうしたら、バッカはあの子達を放置して、私達の後を追うでしょう」


そう言うと


「しかし…」


「彼なら、そうするでしょう」


葵は、確信したように言う。


「シンフォニアの巫女として、そこにシンフォニアの意思があるのならば、それを汲まないとなりません。恐らくは、これもシンフォニアからの試練なのかもしれません」


葵は、そう言った後


「かと言って何もしない訳にはいきません。与えられた時間で少しでも剣の腕を磨きたいと思います。カイトさん、ご指導よろしくお願いします


そう言って頭を下げる葵。


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