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夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
お姫様となって旅立ちます。
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ベイト・ディインダからの言葉

時は、少し戻る。


フィアント公国の隣国ビルガ帝国が宣戦布告をして、フィアント公国に侵攻してきた。


フィアント公国の人々は、シンフォニアの加護を過信しすぎて油断をしていた。


その油断が、ビルガ帝国の侵攻を許してしまった。


フィアント公国は蹂躙され、ビルガ帝国の軍は首都フォニスに迫った。


ビルガ帝国の総司令である第一王子キートン・ゲオルクは、首都に入る前にシンフォニアの明け渡しと第一王女レイラ・クェントとの婚姻を迫る為、使者を立ててきた。


そして、最高魔導師ベイト・ディインダに自分の配下に下れ…とも。


ベイト・ディインダは、それを拒否しシンフォニアがビルガ帝国に悪用されぬように、自らの身を持ってシンフォニアを封印と結界を張った。


そして、レイラ姫は、婚約者であり守護騎士のカイト・バルテノスと城を脱出したが、フィアント公国を裏切った魔導師ヴィヴィアン・レクスドールによって発見されてしまった。


カイトの殺害を命じられていた兵は、毒矢をカイトに向けた。


しかし、カイトを庇いレイラ姫が毒矢を受けてしまった。


レイラ姫が、その場に倒れると同時に魔法陣が展開され、二人は消えてしまった。




セイトは、幻影であるベイト・ディインダを見据え


「それに君ともあろう者が、《リフォント》が発動する事も、見えていない事はないだろう。君ほどの魔導師が何故リフォント発動の阻止をしなかった?」


厳しい口調で問い質すように言うと


『…それは、シンフォニアの意思』


ベイト・ディインダは、ハッキリとした口調で答えた。


『レイラ姫では、シンフォニアの力が引き出せない。ルスレニクスの平穏の為には、姫には成長してもらわないとならなかった。強い心を持たなければならない』


更に付け加える。


「だが、それが《リフォント》発動とどう関係している?レイラ姫の成長を促すだけで、よいではないか?」


セイトは、更に追及すると


『レイラ姫には、強い心は決して持てない。心が脆すぎるのですよ。だがそのお嬢さんは、強い心を持ち合わせている。そう…レイラ姫に足りない部分を彼女は持ち合わせている』


そう言って葵を見て


『だから、シンフォニアに選ばれた。まぁ、運命のイタズラか、彼女の魂の危機が重なったから禁忌魔法リフォントは発動された訳ですが』


そう言ってから


『あなたをこのような争いに巻き込んだ事は謝罪する。だが、あなたの魂もまた消えゆく運命であった。《リフォント》発動で魂は何とか消えゆく運命は回避出来たが…』


と言うと、葵は


「私は、元の世界には戻れないのですか?」


もっともらしい事を聞いてみる。


ベイト・ディインダは、少し間を置いてから


『…その答えに私は答えられない。その答えはシンフォニアしか知らないのだ』


「では…シンフォニアに聞いていただけませんか?」


ベイト・ディインダは、首を横に振り


『シンフォニアは眠りについた。禁忌魔法発動の影響だろう。結界を存続させるのにすべての力を使っている為、意識までは存続させられなかった』


「それでは、私はこれからどうしろと…?」


途方にくれたように言う葵に


『強くなってもらう』


ベイト・ディインダは、ハッキリと答えた。


「え?強く…とは…?」


そう問う葵に、ベイト・ディインダは、スッと手を上げる。


目の前には、世界地図が映し出された。


『今のあなたでは、私が張った結界の中に入って来れない。シンフォニアに認められた者しか結界の中には入れないし、私が施した封印は解けない。それに封印を解く為には4つの解印石が必要になる』


世界地図の4カ所が微かに光る。


『この4つの場所に解印石が眠っているとされておる。解印石は、フィアント公国の選ばれた王家の者しか扱えない』


そう言ってから、手を広げると地図は小さくなり葵の中に消えた。


『これで、あなたが望む時に地図を見る事が出来る。現在地から解印石までの距離も分かるだろう。力を付けながら解印石を手に入れ、シンフォニアの元へ戻った時、シンフォニアは、あなたとレイラ姫の想いに答えてくれるだろう』


そう言うと幻影は、薄くなっていく。


「ニュート!」


セイトが、手を伸ばす。


『どうやら時間のようだ。最後に…』


そう言って手を上げると、魔法陣が展開されてスッとカイトが現れた。


「ベイト・ディインダ!」


驚くカイトに


『カイト・バルテノス。そなたは、レイラ姫の想いを叶える為、この者の旅を助けよ』


そう告げる。


「ベイト・ディインダ…姫は…」


『姫の想いは、彼女の中に息づいておる。精神(こころ)は消えても想いは残っておる』


そう言うが、カイトは納得出来てないようだ。


『時間が無い。もうすぐ、ヴィヴィアンに連れられたビルト帝国の兵がここに到達するだろう。すぐに旅立ちを…』


そう言ってから、手を翳す。


光が発し、あまりのまぶしさにその場にいた者は目を閉ざす。


『私に出来るのは、この森から転移させるくらい。カイト…姫を頼む。異世界から来た少女よ…姫とシンフォニアの想いを叶えてくれ』


そう言ってから、二人の姿が消えた。


同時にベイト・ディインダも。


残されたセイトは、その場で立ち尽くすだけだった。


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