表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢の中の異邦国  作者: 如月まりあ
お姫様となって旅立ちます。
1/132

これは…夢?

連載を始めます。

更新は不定期になりますが、よろしくおねがいします。

少女-“私”-は走っていた。


誰かの手を握り締めて。


敷き詰められた石で出来た長い、長い廊下。


窓らしきものから、微かに明かりが差し込んでいる。


【カッッ!カッッ!】


足に履いているヒールの音が石に響く。


『探せ!』


遠くから。誰かの声がする。


「急ぎましょう」


“私”の手を引いている者は、切羽詰った様子で、“私”に告げる。


「わかりました」


“私”はは頷くと、再び走り出す。


石の廊下は何処までも長い。


繋いだ手を見ながら、


(このような争いに…)


“私”の心は、悲しみに溢れていた。


自分と手を繋いでいる青年の後ろ姿をみながら


(あぁ、すみません、“……”、あなたをこのような争いに巻き込んでしまった)


やがて、二人は塔の中に入り小さな隠し部屋に身を隠す。


『まだ遠くには逃げてないハズだ!必ず探し出せ!』


また遠くで声がする。


繋いでいる手に力が入った。


「大丈夫です“…”、あなたは、必ず私がお守りします」


その言葉に、安心感を覚えながらも不安に駆られる。


もし、自分が一人でここから出て行けば、“彼”の命は助かる可能性がある。


いや、そうするべきなのかもしれない。


だが…


「ここからは、慎重に動きましょう。早くここから抜け出して“……”の元へ向かえば何か策が講じれるかもしれません。そこから一気に攻勢をかけましょう」


“彼”の言葉に、頷く“私”。


『まだ見つからぬのか!?あの方にどう申し開けば…』


大勢の兵が二人の近くを行き来する。


息を潜めて、彼らが通り過ぎるのを待つ。


見つかれば、命はない。


自分では無く“彼”の方が。


彼らの目的は、生きたまま自分を連れて行く事。


彼らの上官に彼女を連れて行く事。


だから、“彼”は見つかれば必ず処刑されるだろう。


表面上は、自分を誘拐した罪で。


それだけは、避けたい。


だから、息を潜めて、彼らが去るのを待つ。


足音が収まった。


少し安堵する。


「大丈夫ですか“…”」


“彼”が心配そうに“私”にたずねる。


“私”は首を縦に振り


「大丈夫です“……”。あなたこそ大丈夫ですか?」


「大丈夫です。さ、この塔の隠し通路から外に出ましょう。森へ出れば、奴らの目を欺けましょう」


そう言ってから、立ち上がる。


“私”は、少し躊躇った。


「どうされましたか?」


“彼”の問いに


「申し訳ありません。このような争いに…」


「いえ、お気になさらないでください。これは私の使命です。“…”をお守りする事こそが私の…」


そう言ってから、口を噤む。


塔に誰かが入ってきた気配がしたからだ。


『くまなく探せ!』


その言葉に、一気に体を強ばらせる。


『ここで間違いないだろうな?』


誰かの問いに


『たぶんね』


答えた者の声に、二人は驚く。


(なぜ…?なぜ彼女が…?まさか、裏切った?)


“私”に動揺が走る。


ガタガタ!と物をどかす音が響き、二人が隠れている部屋にも迫ってきた。


『隊長!見つかりません!』


兵の報告に隊長と呼ばれた男は


『おい!ここに隠し部屋があると聞いたが!』


と、彼女に詰め寄る。


『詳しい場所は知らなーい。私は、噂程度で聞いただけだもん』


ふざけているような口調は、彼女のデフォルトだが


『お前!ふざけているのか?』


『知らなーい。それよりさ、探索魔法使う方が早いから、魔方陣の間に行っていいかしら?』


『…チッ仕方ない。おい!全員引き上げだ!…だが、ここに逃げ込む可能性もある。入り口にお前!残っていろ』


隊長と呼ばれている男は、兵に向かって言ってからから塔を出た。


二人は、安堵の溜息をついてから


「とりあえず、過ぎ去りましたね」


“彼”の安堵した言葉だが、“私”の心は重い。


「…まさか、彼女が裏切るとは」


“彼”の言葉に胸が締め付けられる。


親友…と思っていた…


だが、それは思わぬ形で裏切られる事になる。


「“……”の事は、後で考えましょう。とりあえず、今はここからの脱出を」


そう言ってから、そっと隠し部屋から通じる隠し通路のボタンを押す。


慎重に、ゆっくり、音を立てないように石扉を開ける。


二人は、その扉をくぐると、長い螺旋階段が続いていた。


そこでも、ゆっくり慎重に音を立てないように進む。


一応、石扉閉めておいた。


螺旋階段を降りると、今度は長い廊下が続く。


「ここを抜ければ、大丈夫です」


“彼”の言葉に安堵しながらも、不安にかられる。


さっき、探索魔法を使うと言っていた。


自分達が見つかるのは、時間の問題だろう。


…だが、奥の手がない訳では無い。


魔法の腕は、彼女より自分が上。


それに…守護がある。


胸から下げたクリスタルのペンダントをグッと握りしめる。


(絶対に“彼”を守ってみせる)


慎重に向かった二人は出口らしき扉に近づいた。


「“…”この扉の向こうには何があるか分かっておりません。ですから、私から離れないでください」


「分かっております。私も魔法で援護します」


「そんな!」


「何があるか分からないのです。二人で乗り切らないと…」


“私”の切羽詰まったような言葉に


「分かりました。ですが、無理をなさらないでください


“彼”はそう言ってから、扉に手をかける。


ゆっくり扉は開き、二人は外へ出た。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ